角田裕毅が見せた驚異の成長曲線。その“柔軟な姿勢”がF1昇格の要因に
周囲が驚くようなスピードでステップアップを続け、F1へとたどり着いた角田裕毅。成長のためには自らのアプローチを変えてみせるその柔軟性が、彼をここまで押し上げたのかもしれない。
2021年にアルファタウリからF1デビューを果たす角田裕毅。2018年までF4を戦っていた彼の驚異的な成長スピードには目を見張るものがある。そしてそこには、必要と感じた時には外部からの意見を取り入れることも厭わない彼の姿勢が関係していることは確かだろう。
角田は昨年FIA F2へとステップアップした。ただ2019年はFIA F3とユーロフォーミュラ・オープンで光る速さを見せていたもののタイトル争いには絡んでおらず、特筆して目立った存在とは言い難かった。
しかし2020年シーズンのF2で角田は1年目ながらタイトルを争う活躍を見せ、最終的にランキング3位を獲得。文句なしの成績でF1昇格を手繰り寄せたのだ。
関係者を驚かせる急成長を遂げた角田は、2020年が仕事への取り組み方という点で大きく進歩したシーズンだったと振り返った。
「昨年は僕にとって、あらゆる面で大きく成長できたシーズンでした」
「ドライビングに関してもそうですが、精神的、心理的に、どのようにレースにアプローチしていくかという点でもです。F2の間に大きく改善されたと思います。とてもうまくいったシーズンでしたし、僕のキャリアの中でも最高の1年になりました」
「シーズン序盤から既に速さがあって、強力なライバルたちと競い合うことができていました。しかしシーズン中盤まで安定性が欠けていました。だから序盤のレースで多くのポイントを獲得できなかったんです」
「それからは、メンタルトレーナーと一緒にレースについて色々なことを話し合いました。レースに向けての準備の仕方だとか、レースに挑む姿勢などです。その結果、メンタル面でもかなり改善されました」
「シーズンの終盤を迎える頃には、まだ自分の望んだ位置にはいませんでした。しかしシーズン序盤よりはかなり良くなっていましたし、コース上で残す成績も良くなり続けていました」
角田は自分が最初から何でも知っている人間だと思い込むことなく、他人の意見に耳を傾けるドライバーであることがよく分かる。
そんな角田がシーズン終盤に他のライバルと比べて秀でていたのは、タイヤマネジメントである。多くのドライバーがレースが進むにつれてタイヤの摩耗に苦しみペースを落としていく中、角田はそんなライバルを尻目にオーバーテイクショーを開演するという場面が多く見られた。しかし彼曰く、当初はタイヤマネジメントの点でチームメイトのユアン・ダルバラよりも劣っていたという。
「昨年の初め、例えばルーキーテストの時は、チームメイトと比べてタイヤマネジメントに苦戦していました」と角田。
「しかし僕はチームと過去のレースを見て研究し、より良いタイヤマネジメントの方法を学びました。その努力が実を結び、シーズン終了後にピレリの賞をいただくことができました。これはいかに自分が進歩できたかということを示していると思います」
一方、角田がキャリア初期から武器として持ち合わせているものがある。それはブレーキング。これにはカート時代の父のアドバイスが活きていると語る。
「父は僕が14歳から15歳くらいの時まで僕のメカニックをしてくれていました。父のおかげでここまで来られましたし、より良いドライバーとなることができたので、感謝したいです」
「父が特に教えてくれたのはブレーキングです。いつ、どのくらいブレーキをかけるかという点です。父はブレーキングが非常に重要だということ、それによってマシンを旋回させられることを教えてくれました」
「マシンをうまく旋回させられれば、誰よりも早くスロットルを開けることができます。カート時代にそういったことをたくさん練習しました。今ではブレーキに自信がありますし、あの時の教えが今も生きています」
そう語った角田だが、彼にも周りに何を言われようとアプローチを変えられないものがある。それがシムレースへの関心だ。
「『Apex Legends』や『Call of Duty』などのシューティングゲームが好きですね。嫌いな人を想像して撃つと……うまくいきます。力になるんですよね!」と角田はジョークを飛ばす。
「レースもゲームも僕の心をリセットしてくれますし、リフレッシュできます。でもレースゲームは好きではないですね。リアルさを感じられないので」
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