F1の将来のカタチはどんなモノに? 過去の事例から学ぶべきこと「メーカーに過度に依存してはいけないが、メーカーの存在は重要」
F1のステファノ・ドメニカリCEOは、今後もF1は自動車メーカーにとって魅力的なモノであり続けなければなければいけないと考えているが、メーカーの優先順位が変わった時に、大きな影響を受けないようにしなければいけないと主張する。
Charles Leclerc, Ferrari, Oscar Piastri, McLaren
写真:: Andy Hone/ LAT Images via Getty Images
中東情勢の悪化により、F1のバーレーンGPとサウジアラビアGPの開催が中止となった。この期間を使い、今季から導入されたレギュレーションの変更・調整案について議論が行なわれている。
シーズン中にレギュレーションが調整されるのは珍しいことではない。今回のレギュレーション変更に関しては特に、電動パワーを大幅に引き上げることは試行錯誤の連続であり、いずれ微調整が必要になるだろうという点については概ね合意がなされていた。
しかし確かなことは、新しい技術パッケージに対する反応は、予想以上に二極化しているということだ。関係者の多くは、新レギュレーションについては概ね好意的に受け止められていると感じているものの、一方で一部のファンは新レギュレーションに大いに批判的であり、不満を声高に叫んでいる。
問題の根源は、エンジンと電気モーターの出力比を均等にするという変更にある。これは2022年の8月にFIA世界モータースポーツ評議会で合意されたものであり、同時に持続可能燃料の使用義務化と、MGU-Hの廃止も決定された。
このレギュレーション案が承認された際、F1の関係者は自動車業界の方向性に追随することでパワーユニット(PU)メーカーとの関係を維持し、ひいては新規参入メーカーを獲得することを目指そうとしていた。
当時の自動車業界は、エンジン搭載車の販売を近々中止し、全ての市販車ラインアップを完全電動車とする方向性へと舵を切りつつあった。エンジン車の販売禁止を法的に決定する国も実際にいくつかあった。
しかし新レギュレーションの原則が合意された後、主な自動車メーカーの理想論は現実の壁にぶち当たることになり、方向転換を余儀なくされた。完全電動車の普及が、予想以上に困難だったのだ。
電動車に給電するためのインフラ整備もそうだし、電動車そのものを作るためには多くのレアメタルが必要だったり、環境負荷が高いことも明るみに出てきた。そもそも、全ての自動車を電気で走らせるための電力を賄うのも大変だ。先進国では実現可能な部分もあるかもしれないが、発展途上国も同じような歩みを求めるのは不可能である。
「我々は今、モビリティとレースを混同する必要のない、他に類を見ない特別な時代にいると思う」
F1のドメニカリCEOは、motorsport.comの独占インタビューにそう語った。
「もちろん、レースはチームとメーカーによって運営されている。そして『ディーゼルゲート』以降、メーカーが置かれている状況がどれほど急速に変化したか、それを見ると驚かされる。当時私は、アウディのCEOを務めていたんだ」
ディーゼルゲートとは、2015年に発覚した、フォルクスワーゲン・グループが排ガス検査を不正に操作する装置を装着していたことが明るみに出た事件である。
「本来は切り離して考えるべきこのふたつの要素を結びつけて考えるべきだ。当時は全てのメーカーが、『我々は電動化に進まなければいけない。さもなければ、自動車メーカーはもはやF1には興味を持たないだろう』という明確な意思表示があったのは事実だ」
「もっとハッキリ言ってもいいだろう。もし独立したエンジンメーカーが存在していたら、『F1/FIA公認のホワイトラベルのエンジンを、レースに出たいチームに提供しよう』と言うこともできたはずだ」
「ただそうはならなかった。当時はエンジンを供給できる独立系のメーカーは存在しなかったのだ」
「それが5年前の状況だ。しかし今では、電動化よりもハイブリッド化の方が主流になっているのは明らかだ。そして持続可能な燃料が適切な価格で十分な量供給されるようになれば、排ガス規制にも現実的に対応できる道になることは、誰もが理解している」
Renault has owned 'Team Enstone' twice and is now understood to be entertaining potential buyers
Photo by: Sam Bagnall / Sutton Images via Getty Images
F1はその歴史の大部分において、自動車メーカーの存在に依存してきた、なぜなら競争力のあるエンジンを開発できる技術力を資金力を持つ独立系のエンジンメーカーなど、ほとんどないからだ。確かにコスワースDFVが席巻した時代もあったが、そのDFVエンジンでさえ、フォードからの資金提供がなければ開発されなかっただろう、
1990年代から2000年代にかけては、F1の開発コストが高騰し、タバコスポンサーの規制が入ったため、自動車メーカーの影響力はさらに増した。チームを取得し、F1の方向性に関する意思決定への発言権を得たメーカーも少なくない。たとえばハイブリッドパワーがF1に導入されたのは、ルノーが参戦継続の条件として、ある程度の電動化を要求したことがきっかけだった。
そのルノーは2025年限りでF1用PUの開発を終了し、今季は傘下のブランド名を背負う”アルピーヌ”がメルセデス製PUを搭載している。
2008年、マックス・モズレーがFIAの会長を務めていた当時、コスワース社が開発したV8エンジンとエックストラック社製ギヤボックスを、低コストの統一パワートレインとして発表した。これは全チームに使用を義務付けるというモノではなかったが、新規参入のハードルを下げる意味合いがあった。しかしこの試みは、モズレーがFIA会長を退任したことで頓挫してしまった。
この試みは、メーカー依存から脱却するためのものだった。ここから得られた教訓は、FIAやF1の首脳陣は、自動車メーカーとの関係性を維持しつつも、過大な影響力を持たせないように、繊細な外交的舵取りを行わねばならないということだった。
Race start
Photo by: Andrew Caballero-Reynolds / AFP via Getty Images
「モータースポーツ界が学んだことは、まず第一に、メーカーに過度に依存するような状況に陥ってはならないということだ」
そうドメニカリCEOは語った。
「自動車メーカーの存在は、我々の活動にとっては必要不可欠だ。彼らの存在なくしては、何も成し遂げられない。我々は日々感謝の念を抱いている」
「しかしメーカーがモータースポーツの基礎を決定できるような状況はもう許されない。それは我々が学んだ教訓であり、統括団体であるFIAと共に、メーカーとモータースポーツが共存できるような最適な枠組みを見つけるための糧となるだろう。なぜなら、我々はメーカーの参加を心から望んでいる」
「しかし『受け入れるか、諦めるか』という選択を迫られるような状況に陥ってはならない。今後数年間で、まさにこの点に取り組む必要がある」
「我々が避けなければいけないのは、無防備な状態や不意打ちを受けるような状況に陥ることだけだ。そのためにはメーカーが尊重され、参戦できるような規制の枠組みを設けることが唯一の方法だと考えている」
「しかし、もしメーカーがモータースポーツ自体とは関係のない他の痴遊で、このプラットフォームがもはや魅力的ではないと判断した場合には、我々は対応策を講じて、チームがパフォーマンスを発揮し、ビジネスが現在と同じように力強くあり続けるようにする必要がある」
「もちろん、将来を見据えた持続可能燃料、そして強力な内燃機関(エンジン)とのバランスを考慮した、将来的な電動化の可能性など、様々な提案を行なうのはFIAの役割だ」
「それがモータースポーツだ。これによって大幅な軽量化が可能になり、より軽量で小型のクルマで、思い切り攻めることができる……純粋なレースを実現することができるだろう」
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