タイヤを理解するためのカギ? F1テストに登場した秘密兵器”銃”の正体
バーレーンで行なわれたF1プレシーズンテストで、複数のチームがタイヤをより深く理解するために、イタリア製の革新的なツール”VESevo”を使用していることが確認された。
写真:: Giorgio Piola
F1に限らず、モータースポーツにおいてタイヤは非常に重要だ。予選においても決勝においても、唯一路面に接しているパーツであるタイヤをいかに適切に使うかで、マシンのパフォーマンスは大きく左右される。だからこそ、チームはテストやフリー走行で、タイヤの温度や耐久性を詳しくチェックしているのだ。
F1のタイヤはピレリが独占供給している。その2021年シーズンのタイヤはコンパウンド(ゴムの配合)こそ昨年と変わらないが、内部構造が強化されている。このタイヤを使いこなせるかどうかが、チームにとって重要となってくる。
バーレーンで行なわれたプレシーズンテストは、開幕前に新車でデータを集める唯一の機会だったが、一部の技術者がマシンから外したタイヤに”謎のツール”を使っているところが目撃された。
銃のような形をしているこのミステリアスなツールは、タイヤのゴムに打撃を与えているように見えたが、使用している技術者たちはそれが何なのかを明かさなかった。
この”銃”は、イタリアの新興企業MegaRide社が製造している『VESevo』と呼ばれるツールだ。VESは、粘弾性評価システムの英略語。フェデリコ2世・ナポリ大学のビークルダイナミクス・シミュレーショングループの研究プロジェクトから生まれたモノだそうだ。
このツールは、タイヤのトレッドに関する情報を収集し、走行中にタイヤがどのように反応し、どのような挙動を示したかを把握することができるという。
VESevoは使用時にタイヤに対して、ハンマーのような動きをして粘弾性特性を測定するが、非破壊検査ツールでありタイヤにはダメージを与えない。
独自の後処理アルゴリズムを使用しており、タイヤの内部温度やコンパウンドの剛性、タイヤの摩耗、減衰特性のより詳細な分析が可能。タイヤの物理的な特性をより完全に理解することができる。
これらの情報をグラフ化することで、タイヤの温度や路面が、コンパウンドの性能や耐久性にどんな影響を与えているのか、理解するためのツールとして活用できるのだ。タイヤがどんな挙動を示し、タイヤを最大限に活用する方法を予測するための大きな武器となる。
ピレリはすでに、タイヤを適切に使用できる温度領域など、広範なデータをチームに提供しているが、それでもドライバーがエンジニアに「その領域でタイヤが完璧に機能しない」「劣化が予想以上にひどい」など不満を漏らすことはよくある。
いくつのF1チームがVESevoガンを使用しているかは不明だが、複数のMegaRide社の技術者がコンピュータに情報をダウンロードしている様子を見ると、すでに数チームが契約しており、ライバルの動向を見てさらに契約するチームが増えてくる可能性がある。
VESevoは、トライデントがすでにF2やF3で使用している他、フォーミュラEやDTM、MotoGPでも使われている。しかし、F1のピットレーンで使用されたのはバーレーンのテストが初めてだという。
VESevo
Photo by: MegaRide
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