【F1メカ解説】メルセデス、”超低速”モナコにサスペンションアップデートを実施。より曲がりやすく?
F1モナコGPで大敗喫したメルセデス。ただ同チームは、そんなコースでも最大限のパフォーマンスを発揮するべく、様々なアップデートパーツをモナコに持ち込んでいた。
第4戦スペインGPが終わった時点で、コンストラクターズランキング首位に立っていたメルセデス。しかしモナコGPは一転、大苦戦のレースとなった。
メルセデスは伝統的に、ホイールベースの長いマシンを走らせてきた。ホイールベースの長いマシンは、モナコのような狭く曲がりくねったようなコースには不向きと言われることが多いが、それでもメルセデスは2013年からモナコ4連覇。そして2019年にも勝利を収めている。
ただ、モナコへの指標とも言われるカタルニア・サーキットのセクター3の速さは、今年に限ってはレッドブルの後塵を拝していた。
そんな状況でメルセデスは、モナコに向けて数々のアップデートパーツを投入。その効果は発揮されなかったのか、ルイス・ハミルトンが7位、バルテリ・ボッタスがリタイアと、前述の通り大苦戦のレースとなってしまった。
結果が伴わなかったとはいえ、メルセデスが行なったアップデートは、マシンとタイヤからペースを引き出すための最良の方法だったはずだ。
抜本的な変更
メルセデスのシーズン序盤戦での進歩は、機械面であれ空力面であれ、適切なセットアップを理解することに端を発する。その結果、シーズン開幕前にはリヤエンドが不安定だったが、小さなアップデートにより、これが解消された。
しかし新しいステアリング、サスペンション、ブレーキアッセンブリーなど、モナコに全チーム中最大とも言えるアップデートパーツを導入した。
MERCEDES W12 comparison
Photo by: Uncredited
モンテカルロ市街地コースは、冒頭でも述べた通り超低速。他に類を見ないコース特性であり、全チームがこれへの対処を要することになる。
長いホイールベースのメルセデスW12は、ヘアピンを効率的にクリアするためには、他のチーム以上に工夫することが必要だろう。
上の写真を見れば、そのためのチームの努力は一目瞭然だ。
スペインGPの仕様と比較すると、ロワウイッシュボーンとステアリングロッドはより前方に配置されている。特に黄色の点線で示されているステアリングロッドは、スペイン仕様に比べて幅が広くなり、さらにホイール側の端では、さらに前方に向けて曲げられている。また、ロワウイッシュボーンの前とステリングロッドの間のスペースも広がっている。
この変更は、W12の低速における操縦性を引き上げるために行なわれたもの。ただそれだけではなく、ブレーキダクトの設計変更にも影響を及ぼした。
Mercedes W12 front brake duct comparison
Photo by: Uncredited
ステアリングロッドとウイッシュボーンのレイアウトを変更したことにより、ブレーキダクトにも大きな変更が必要だった。ステアリングロッドを前方に移したことにより、写真の黄色で塗りつぶされた部分には、ダクトを配置することができなくなった。その結果、青色で塗られた部分でこれまで同様の気流を取り入れるためには、ダクト内の分割を変更する必要があった。
このブレーキダクトから取り入れられる気流は、通常ならばブレーキの冷却のみならず、空力効果を向上させるためにも使われる。しかし今回サスペンションのレイアウトが変更されたことにより、ダクトの分割に制限が加わることになった。結局冷却性能を確保することが優先され、空力性能は後回しにされることになった。
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