6月に各チームのF1空力開発制限値がリセット。勝者と敗者……新時代2026年のマシン開発にどんな影響が及ぶのか
F1シーズン途中でのコンストラクターズポイント獲得数に応じて、空力開発制限の再設定が行なわれた。今回の再設定は特に重要で、2026年に向けた開発に大きな影響を及ぼす可能性がある。
Mercedes wind tunnel
写真:: Mercedes AMG
現時点でコンストラクターズランキング最下位に沈んでいるアルピーヌは、ここ数年で最悪とも言えるシーズン前半戦の結果を悔やんでいるかもしれない。しかし、空力開発制限の再設定が行なわれたことで、来季のF1に向けて彼らにも追い風が吹くかもしれない。
各チーム間のパフォーマンス差を縮めるため、F1はコンストラクターズランキングの順位に応じて、各チームが稼働できる風洞やCFD(数値流体力学)の時間や回数に差を設けている。空力開発ハンデとも言えるルールだ。この制限値は年に2回再設定され、そのうちの1回が”6月22日”である。今回、一部のチームは空力開発量が減らされる一方で、昨年からランキングを下げたチームは、許される空力開発の量が増える。
ランキング首位のチームは、基準値(ランキング7番手)よりも空力開発量は30%削減される一方で、ランキング最下位のチームは基準よりも15%多く空力開発を行なうことができる。
今回の再設定値は、特に重要なモノとなる可能性がある。これからの6ヵ月は、レギュレーション変更によりまったく新しいマシンが登場する2026年に向け、重要な6ヵ月となるからだ。
ではこの再設定時期によって、有利になるチームと不利になるチームはどんな構図になるのであろうか? 答えは「勝者と敗者」である。
敗者:ウイリアムズ
Carlos Sainz, Williams
Photo by: Sam Bloxham / LAT Images via Getty Images
ウイリアムズは2024年シーズンを、僅か18ポイント獲得のランキング9位で終えた。そのため、今季前半はかなりの空力開発量を確保することができた。
しかし今季のウイリアムズは好調であり、オーストリアGPまでに55ポイントを獲得し、コンストラクターズランキングは5番手。同時に、シーズン後半の空力開発量が大幅に削減されることになる。
風洞実験の回数で見れば、シーズン前半にウイリアムズは352回の稼働が許されていたものの、後半は288回に減らされる。これは全チーム中最大の削減幅である。
勝者:アルピーヌ
アルピーヌはオーストリアGPの前の時点で、コンストラクターズランキング最下位に沈んでいた。昨年はランキング6位で終えていた彼らにとっては、大不振と言えるが、今後半年の空力開発量は大きく増えるばかりか、全チーム中最も多くの空力開発を確保できるというわけだ。
問題はこの増えた空力開発量を、アルピーヌが2026年用マシンの開発に全て使うのか、あるいは今季の不振から脱却するために活かすのか……という点である。
敗者:メルセデス
Andrea Kimi Antonelli, Mercedes
Photo by: Erik Junius
グラウンド・エフェクト時代に入ってから苦戦が続いていたメルセデス。昨年はランキング4位だった。そのせいもあって多くの空力開発が許され、今季はそれを活かしてランキング2番手に浮上した。
しかしメルセデスのランキングが浮上したことで、今季残りの空力開発量には大きな打撃を与えている。風洞実験を行なえる時間は、シーズン前半よりも8時間減少。この削減されることになる時間を最大限に活用する方法を、彼らは考えねばならない。
勝者:アストンマーティン
アストンマーティンも、今後数ヵ月で不振の代償を享受することができるチームだ。彼らはオーストリアGP前のランキングは8番手。昨年ランキング5位で終えたチームは、3つポジションを下げた。
これによりアストンマーティンは、シーズン前半は基準から90%しか許されなかった空力開発が105%に上昇。時間で言えば、風洞実験の時間は72時間から84時間に、風洞試験の回数も336回許されることになる。
しかもアストンマーティンは、新しい風洞が稼働し始め、しかもその開発を率いるのはエイドリアン・ニューウェイ。最も大きな恩恵と言えるかもしれない。
勝者でも敗者でもない者たち
Lando Norris, McLaren, Oscar Piastri, McLaren
Photo by: Sam Bagnall / Sutton Images via Getty Images
他のチームにとっては、空力開発量の増減はそれほど大きくない。
マクラーレンは、2024年に引き続き、現時点でもランキング首位を維持。つまり基準値の70%のままである。レッドブルとフェラーリは、ともにランキングをひとつずつ下げたが、それぞれシーズン前半に比べて風洞実験が16回、CFDが100回増えることになる。
レーシングブルズとザウバーは、昨年よりもひとつずつ順位を上げたため、風洞実験量が僅かに削減されることになる。
新規参入のキャデラックはどうなる?
2026年からは、キャデラックが新チームとしてF1に参入することになる。新チームが加わるのは、2016年のハース以来ということになる。
キャデラックは2026年にはカスタマーチームとして参戦するが、2029年からはパワーユニットも自前で用意し、本格的なコンストラクターとなる。
しかしキャデラックも、まったく経験のないチームだからといって、空力開発を青天井で行なえるわけではない。彼らは、ランキング最下位のチームと同じ、基準値の115%しか空力開発を行なえないことになっている。
これを痛手と見るか、あるいは恩恵と見るか?
The race start
Photo by: Kym Illman / Getty Images
F1空力開発制限
| ランキング | チーム | 開発量 | 風洞稼働回数 (#) | 風洞稼働時間 (Hrs) | 風洞施設占有時間 (Hrs) | ジオメトリ値 (#) | CFD 試験量 (MAuh) |
| 1 | マクラーレン | 70% | 224 | 56 | 280 | 1400 | 4.2 |
| 2 | メルセデス | 75% | 240 | 60 | 300 | 1500 | 4.5 |
| 3 | フェラーリ | 80% | 256 | 64 | 320 | 1600 | 4.8 |
| 4 | レッドブル | 85% | 272 | 68 | 340 | 1700 | 5.1 |
| 5 | ウイリアムズ | 90% | 288 | 72 | 360 | 1800 | 5.4 |
| 6 | ハース | 95% | 304 | 76 | 380 | 1900 | 5.7 |
| 7 | レーシングブルズ | 100% | 320 | 80 | 400 | 2000 | 6.0 |
| 8 | アストンマーティン | 105% | 336 | 84 | 420 | 2100 | 6.3 |
| 9 | ザウバー | 110% | 352 | 88 | 440 | 2200 | 6.6 |
| 10 | アルピーヌ | 115% | 368 | 92 | 460 | 2400 | 6.9 |
| キャデラック | 115% | 368 | 92 | 460 | 2300 | 6.9 |
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