重大な問題だ……トラブルでマシンが動けなくなったレーシングブルズ。550万円という高額罰金が科された理由とは?
FIAのスチュワードは、レーシングブルズに対して約550万円の罰金を科した。クラッチ解除システムが正しく作動しなかったからだ。
F1カナダGPのフリー走行1回目序盤、レーシングブルズのリアム・ローソンのマシンがコース脇にストップし、赤旗中断になった。各マシンにはトラブルでストップした際にクラッチが解除されるCDSと呼ばれるシステムが搭載されているが、今回レーシングブルズのマシンはCDSが正しく作動しなかったためマシンを回収できず、赤旗中断とするしかなかった。
このことについてFIAのスチュワードは、3万ユーロ(約550万円)の罰金をレーシングブルズに科し、公式発表文書でもその理由が細かく説明された。
ローソンのマシンは、カナダGPのFP1開始10分にも満たない段階で油圧系のトラブルに見舞われ、コース脇に停まった。クラッシュしたわけではないため、本来ならVSC(バーチャル・セーフティカー)が宣言され、その間にマシンがコース外に運び出されるはずだ。しかしクラッチが解除されず、マーシャルの力だけではマシンを排除することができなかった。
そのため赤旗中断とされ、作業車をコース上に入れてレーシングブルズのマシンを排除することになった。
クラッチを切り、マーシャルが押してマシンを排除できるようにするためのシステムが、CDS(クラッチ解除システム)である。このシステムは油圧系や電気系に故障が生じた場合にも、適切に作動しなければならない。しかし今回のレーシングブルズのマシンはこれが正常に働かなかった。
FIAのレーススチュワードは、この件はF1のテクニカルレギュレーションのC9.3条への違反だとして、レーシングブルズに罰金を科した。うち2万ユーロは12ヵ月の執行猶予とされた。
レーシングブルズにこれだけ厳しい裁定がくだったのには、ある理由がある。それは、同チームのCDSが、以前から警告の対象となっていたからだ。
同チームのCDSは、クラッチを解除するだけではなく、車両のアンチストール・システムの制御も行なうように設計されていた。このことは実に異例である。
テクニカルレギュレーション(C9.3条)には、以下のように記されている。
「全ての車両は、エンジンが停止した状態で車両が停止した場合でも、最低15分間クラッチを切り離すことができる装置を備えていなければいけない。このシステムは、車両の主要な油圧、空気圧、電気システムが故障した場合でも、競技期間中を通じて正常に作動できるようになっていなければならない」
CDSを作動させるために、コクピットの前方にはボタンが取り付けられている。今回はこのボタンを押しても、CDSが作動しなかった。そして前述のように二重の機能が設けられていたことで、レーシングブルズは以前から警告を受けていた。
「この車両のシステムは、ふたつの役割を担っていることが確認された」
スチュワードはそう声明の中で述べた。
「本来の目的である、車両が停止してエンジンも停止している際にクラッチを解除する機能と、アンチストールシステムに関連する機能のふたつだ。今回のケースでは、ジョイントの破損より、油圧漏れが発生し、車両が停止した」
「マーシャルがCDSを作動させても、クラッシュは解除されず、車両を動かすことができなかった。これは重大なも問題だ。その結果、セッションは赤旗中断となった」
「システムが規定通り機能していれば、VSCによって迅速に対応できたはずだ」
「スチュワードは、この車両に搭載されているCDSの二重の用途について、FIAの技術代表が懸念を表明していたことを承知している。技術代表は、チームが2025年に、この車両のCDSのシステム設計について、警告を受けていたことを伝えた」
ひとつの部品に複数の役割をもたせることは、確かに工学的には原則とも言える。レギュレーションの文言では、CDSを複数の用途に使うことを禁止してはいない。しかしFIAの技術代表は、構造が複雑化することによって故障のリスクが高まることを懸念していたようだ。
さて今後はチームがどう対応するかという問題になる。問題が発生しにくいCDSに変更するのか、あるいは高額な罰金を科され、叱責を受けることを覚悟して現行システムを使い続けるか……究極の判断を迫られることになる。
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