デ・フリーズの”やることリスト”が救いの一手に？　アルファタウリF1、経験豊富な新人の文句が「チームの目を覚まさせた」

　2023年にアルファタウリから初のF1フル参戦を果たすニック・デ・フリーズ。グリッドに並ぶF1ルーキーのひとりではあるものの、”遅咲き”が故にチームにもたらす変化も大きいようだ。

　2017年のFIA F2王者であり、2020-21年のフォーミュラEの王者にも輝いた経験を持つデ・フリーズは、これまでメルセデスF1のリザーブドライバーを務め、昨年はメルセデス製パワーユニットを積む3チーム（メルセデス、アストンマーチン、ウイリアムズ）からフリー走行に出走。病欠となったアレクサンダー・アルボンの代わりにウイリアムズから代役出走を果たしたイタリアGPでは、突然のF1デビューながらも9位入賞をもぎ取った。

　アルファタウリのチーム代表であるフランツ・トストは、2022年11月にアブダビ行なわれたポストシーズンテストで2022年型マシン『AT03』を試したデ・フリーズから、リザーブドライバーとして収集した知識と他カテゴリーで得たノウハウを通じたフィードバックが出され、事実上AT03の”欠点”をチームに知らしめたと語っている。

「ニック・デ・フリーズは本当に良い仕事をしてくれている」とトストは言う。

「28歳でありながら彼はとても経験豊富で、多くのレース優勝とチャンピオンを獲得している理由がよく分かる」

「彼はすぐにF1へ適応することができると思う。最初の予選から良いパフォーマンスを見せてくれるだろう」

「もちろん、新しいドライバーが来る時に下位カテゴリーから来た若者でない場合は、常に何らかのインプットや技術的なアイデアを持ち込んでくれる。我々は幸運にも、ニックが昨年多くのチーム、多くのマシンに触れていた」

「我々のエンジニアは、彼から良い技術的なフィードバックが得られたと思う。特にアブダビで何周も走った後、ありがたいことに彼はマシンについて沢山文句を言ったのだ。ありがたいと思うのは、これがエンジニアにとって目覚めの一撃になったからだ」

「彼が好むような方向でパフォーマンスを発揮するマシンを提供できることを願っている」

Nyck de Vries, AlphaTauri AT04

Photo by: Red Bull Content Pool

　アブダビでのテスト後にデ・フリーズがチームにもたらしたモノについて詳しく訊いてみると、トストは次のように答えた。

「長い”やることリスト”だ。私は気に入っているよ！」

「エンジニアたちは『我々のソリューションが優れている』と主張していたが、私はいつも彼らに『コンストラクターズランキングで我々がどの順位か見てみろ』と言っているのだ。面白いことだよ」

　またトストは、デ・フリーズの仕事ぶりには関心していると語った。

「彼のプロフェッショナルな姿勢、規律正しさ、そしてシミュレータにおけるフィードバックや作業方法を変えるためのアイデアにも関心している。この（プレシーズン）テストの後にも、彼の側から多くの意見が出ることを期待している」

「彼をルーキーのように捉えてはいけない。先程も言った通り、ニックはとても経験豊富だからね。彼は参戦した全てのカテゴリーで勝ち、チャンピオンシップを獲得している。彼は我々にとって本当に良い財産だ」

　アルファタウリでテクニカルディレクターを務めるジョディ・エギントンも、デ・フリーズ加入による恩恵が既に得られているということに同意している。

「ニックはF1レースという点では比較的経験が浅いが、他の選手権では非常に多くの経験を持ち成功を収め、ライバルチームのクルマにも触れてきた人物だ」

「だから、彼は多くの知識と情報を持っているのだ。エンジニアは可能な限り彼と話をして、彼の考えを理解し、いわば彼の経験を全てダウンロードする機会を作ってきた」

「ただ通常の若いルーキードライバーの場合とは、全く異なるシナリオになる。我々にとっては素晴らしい機会だ」