メルセデス代表、レギュレーション調整に慎重な対応求める「我々はF1の守護者であるべき。必要なのはバットではなくメス」
メルセデスのトト・ウルフ代表は、レギュレーションの調整において他のチームが選手権の”守護者”として振る舞うことを期待している。
Toto Wolff, Mercedes
写真:: Sam Bloxham / LAT Images via Getty Images
メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは、F1とFIAの”建設的な”協議を経て、2026年のレギュレーション変更について慎重なアプローチを取り、短期的な将来に関して「場当たり的な」決定を避けることを期待している。
2026年に導入された新しい技術規則に対する反応は賛否両論だ。シャシーの変更については概ね好意的な評価である一方、パワーユニット(PU)に関する規則や電動化への依存度拡大については、反対意見と賛成意見が分かれている。
予選でのアタックが全開とは程遠いモノになっていることや、速度差の拡大に対する安全性の懸念、バッテリー残量の違いによって抜きつ抜かれつの展開となり、オーバーテイクの価値が下がっているといった数々の問題点について、FIAとF1、そして各チームとPUメーカーが話し合った結果、全会一致でマイアミGPまでにレギュレーションの一部に調整が加えられることになった。
チームのパフォーマンスが良いこともあってレギュレーション調整には積極的ではなかったメルセデスのウルフ代表は、行き過ぎた変更や問題の悪化を避けるため、慎重に変更に取り組むよう求めた。
「ドライバーグループ、FIA、F1、そしてチームの間で行なわれてきた議論は、本当に建設的なものだったと言わざるを得ない」と、ウルフは一部メディアとのラウンドテーブルで説明した。
「我々全員が同じ目標を共有している。プロダクトをいかに改良し、純粋なレース仕様にするか、そして安全性の面で何を改善できるかを検討することだ。しかし”野球のバット”を使うのではなく、”メス”を使って慎重に行動すべきだ」
「我々は良い解決策にたどり着きつつあり、できれば今日中にそれを批准して、進化していきたいと思っている。まだ3レースしか終わっていない段階だしね。ある意味では過去から学ぶ必要がある。これまで時に場当たり的な判断が下され、その結果やり過ぎてしまい、結局うまくいかなかったということがあったからだ」
さらに、すべてのチームが自分たちの利益ではなくF1全体の利益のために動いているのかと問われると、ウルフは関係者全員が「F1の守護者」であるべきだと強調した。
「ドライバー、FIA、フォーミュラ1、そしてチーム――我々全員が、このスポーツの”守り手”としての責任を理解しなければならない。そして、このスポーツが与えてくれたものに敬意を払い、改善すべき点は建設的に改善し、守るべきものは守っていく必要がある」
Photo by: Andrew Caballero-Reynolds / AFP via Getty Images
また、意見の対立自体は正当なことだとしつつも、それを公の場で過度に発信することには慎重であるべきだとウルフは述べた。
「意見を持つこと自体は当然だが、それは主に関係者同士の中で議論されるべきだ。今のF1は素晴らしい状態にあり、多くのファンがこのスポーツを愛している」
「もちろん、すべてを好んでいるわけではない人もいる。しかし、この大きなチャンスを守るためにも、自分たちのスポーツを公の場で悪く言うべきではない。我々は過去にも駆け引きや立場を守るためにそうしてしまったことがあるが、それには注意が必要だ」
ウルフは、F1は幅広いファン層に訴求する必要があるとしつつ、「過去の美化」にも警鐘を鳴らした。
「2000年代を素晴らしかったと語る人もいるが、オーバーテイクが1度もないレースもあったことを忘れているかもしれない。ドライバーにとっては全開で走れる楽しい時代だったかもしれないが、観客にとって退屈なら意味がない」
「過去には批判を受けて、急いでルール変更を行ない、結果的に改善されなかったこともあった。だからこそ慎重に進める必要がある」
また、最も重要なのは安全であると彼は強調した。
「ドライバーの安全は最優先事項だ。これは絶対に守らなければならない」
ウルフは例として耐久レースを挙げ、ル・マン24時間レースではハイパーカーとGT3の速度差が30~40km/hにも及び、重大な事故のリスクがあると指摘した。
「世界には、我々レーサーが愛する素晴らしいレースが数多く存在する。私はル・マンが好きだ」
「夜通しタイミングモニターを見ていることもあるが、ハイパーカーはポルシェカーブをGT3カーよりも30〜40km/h速く通過する。その速度差は非常に大きい。これまでにも異なるふたつのクラスの間で重大な状況や大きな事故が起きているのを目にしてきた」
「だからこそ、先ほど挙げたふたつの優先事項に集中し、それをより良く、より安全なものにしていこう。F1は常に最も安全なスポーツであり続けるのか? それはおそらく違うだろう」
「重要なのは、これらのシステムがクルマにどのような影響を与えるのか、雨天時などの特定の状況でどのようにリスクを軽減できるのかを理解することだ。そして同時に、我々はこのスポーツの守り手であり、その責任を負っていること、このスポーツが我々全員に与えてくれた機会に対して責任があることを常に忘れてはならない。規則が変更されることによる個人的な有利・不利に目を向けるのではなくね」
Additional reporting by Stuart Codling.
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