F1 イタリアGP
劇的すぎる成長曲線……アントネッリの2年目は、メルセデス代表の長いキャリアの中でも最大の驚き「全てに戸惑っていた昨年とは違う!」
メルセデスのトト・ウルフ代表は、これまでF1の世界で長いキャリアを築いてきたが、そんな彼でさえ、今年のアンドレア・キミ・アントネッリの成長には驚かされたという。

Ronald Vording
編集: 2026/09/08 8:43
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現在F1のドライバーズランキング首位に立つアンドレア・キミ・アントネッリの成長に、メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは大変驚いている。
昨年F1にデビューしたアントネッリは、欧州でのレースで特に苦戦を強いられた。第7戦エミリア・ロマーニャGPから第16戦イタリアGPまでの10戦で獲得したのは18ポイント。うち15ポイントは第10戦カナダGPでのものだったから、欧州での9戦でわずか3ポイントしか獲得できない……そんな状況だったのだ。今年のアントネッリと同一人物とは思えない成績だ。
今から約1年前、ウルフ代表はオランダGPの際に行なわれた記者会見に出席した。その時彼は、アントネッリに対してこんなことを語っていた。
「時には驚嘆するような素晴らしい走りを見せてくれることもあれば、頭を抱えてしまうこともあった。しかし、それは全て予想通りだ」
パドックにいる多くの人たちは、2026年のアントネッリも、昨年とほぼ同じような展開になるものと予想していた。しかし現実は違った。アントネッリは才能に加え、安定性という点で飛躍的な進歩を遂げたのだった。
今季のアントネッリはバルセロナ-カタルニアGPとイギリスGPを除く全てのグランプリで表彰台を獲得し、後続に大差をつけてチャンピオンシップをリードしている。
この成長について、長いキャリアの中でも最大の驚きではないかと尋ねると、ウルフ代表はmotorsport.comに対してこう語った。
「間違いなくそうだ」
しかしウルフ曰く、ハミルトンやマックス・フェルスタッペン(レッドブル)らから、アントネッリの台頭を予言されていたとも明かす。
「偉大なドライバーたちは、才能を見抜く能力を持っているようだ」
そうウルフ代表は説明した。
「『類は友を呼ぶ』とよく言うが、昨年ルイスやマックスと話した時、彼らは既に、キミに才能があると言っていたんだ」
「カートやジュニアフォーミュラでの彼の過去の成績を見て、チームも同じように感じていたけどね。とはいえ、冬の休みが明け、ほぼ毎戦完璧な走りを見えてくれていることは、私のレースのキャリアにおける大きな驚きのひとつだ」
■”戸惑う鹿”のような状況からの脱却
Kimi Antonelli leads the F1 standings in 2026
Photo by: Alastair Staley / LAT Images via Getty Images
ウルフ代表は、今季のアントネッリの急激な成長について、自分なりの説明を持っている。確かに2026年型のF1マシンは、昨年までのようなグラウンド・エフェクトカーではなくなったため、アントネッリのドライビングスタイルに合っている可能性もある。しかしウルフ代表によれば、人間的な側面も大きく成長したのだという。
「ジュニアフォーミュラやカートの時に、なぜ彼があれほど高い評価を受けたのかを分析し自問自答してみると、彼の思考処理能力の高さが理由だったと気付く」
「彼は冬の間に、自分の成績を整理する時間が必要だったのだろう。何が良かったのか、何が悪かったのか……そして自分は何をすべきなのかということをね」
さらにウルフ代表は、チームの内部が安定していることも、大きな助けになったと考えている。アントネッリにとって、チームの内部の全てが、昨年以上に馴染み深いモノになったということだ。
「彼が、既に慣れ親しんだ環境に戻ってきたということも大きかった。メルボルンへどう行けばいいか、そしてホテルもセッティングも、全て分かっていた。サーキットに着けば、全てが昨年と同じだったんだ」
「つまり”ヘッドライトに照らされて動けなくなった鹿”のようになってしまったように『何が起きているんだ?』と戸惑っていた2025年とは異なり、ドライビングの技術と準備に尽くすことができるということなんだ。しかし、嬉しいサプライズだったね」
ウルフ代表は、2025年に苦戦した原因も同じ理由で説明できるという。
「昨年キミに起きたことは、まさに我々が予想していた通りだ」
そうウルフ代表は付け加えた。
「彼はF1にいきなり放り込まれたようなモノだった。当時18歳だった彼は、非常に成熟したレギュレーションの下で戦った。ほとんどのドライバーは長年その世代のマシンを走らせてきた経験があり、キミには知らないサーキットだってあった」
「そしてメディアからの取材依頼やプレッシャーが、雪崩のように押し寄せてきた。突然、彼の道のりに関わっていた誰もが、彼と一緒にいるか、あるいは彼の近くにいなければいけないと感じたんだ。求められるモノは途方も無いものだった」
■メルセデスからのデビューは早すぎ?
Kimi Antonelli's 2025 struggles were "what we predicted", the Mercedes boss said
Photo by: Jayce Illman / Getty Images
ウルフ代表は、アントネッリをデビューさせるのが早すぎるとして、批判も浴びたと語る。レッドブルのヘルムート・マルコが、11年前にマックス・フェルスタッペンをデビューさせた時と同じだ。
しかしウルフ代表は、アントネッリに特別な才能を見出し、リスクを冒す覚悟を決めたのだ。
「誰もが私に時期尚早だ、メルセデスに入れるべきではなかった……もっと小さな規模のチームからデビューさせるべきだったと言ってきた」
「スパ(ベルギーGP)はおそらく最悪の瞬間のひとつだった。でも私は彼を支持していた。なぜなら、これこそが我々が必要としていた年のひとつだと感じた」
「我々はデビュー2年目のシーズンが終わってから、評価を下すつもりだ。そして彼が今年これほど素晴らしいスタートを切ったことは、皆さんにとってはもちろん、私にとっても大きな驚きだった」
そしてアントネッリの明るさは、チーム全体に広がりつつあるとウルフ代表は言う。
「彼は誠実で、そしてオープンマインド。政治的な駆け引きは一切しない。そういうネガティブな要素は全く持ち合わせていないんだ。そして彼にとって大切なのは、コース上でのパフォーマンスだけなんだ」
「それに彼は、チームのイギリス人メカニック全員とハグするようにしたんだ。これも我々にとっては新鮮なことだった」
そのアントネッリは、イタリアGPで19番グリッドからのスタートながら優勝。イタリア人ドライバーとして、60年ぶりにイタリアGPを制した。当然ながらランキング首位を堅持している。
このままチャンピオン獲得まで駆け抜けることができるのだろうか?
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