レッドブル陣営の贅沢な悩み……2027年のレーシングブルズのシートを得るのは、ツォロフか? それともローソンか?
レッドブル陣営は、まさに贅沢な悩みを抱えている。FIA F2に参戦中のツォロフは活躍し、レーシングブルズのローソンは今季その才能をいかんなく発揮している。さて、どちらを選ぶのか?
ツォロフを抜擢するのか? それともローソン続投か? レッドブルとレーシングブルズは、2027年のドライバーラインアップに関して、難しい決断を迫られている。
現在FIA F2にカンポスから参戦しているニコラ・ツォロフは、レッドブル・ジュニアチームの中で来季F1昇格のチャンスを掴む最有力候補であると目されている。それが実現した時にシートを失う可能性が最も高いのはレーシングブルズのリアム・ローソンであると言われているが、そのローソンは今季ここまで好調な走りを見せているため、レッドブル陣営としては悩みの種となっている。
ツォロフは昨年FIA F3に参戦し、ランキング2番手となった。それを受けてレッドブルは、シーズン終盤戦からFIA F2に先行挑戦させることを決めた。
ステップアップしてすぐに好パフォーマンスを発揮するのは簡単なことではない。しかし初戦となったカタール戦ではフィーチャーレースで入賞し、アブダビでの最終戦ではスプリントレースで初の表彰台を獲得して見せ、人々を驚かせた。
今季もその勢いを維持し、ここまで6勝を挙げてランキング首位。シルバーストン戦ではスプリントレースとフィーチャーレースの両方を勝ち、完全制覇となった。
今季のFIA F2のラインアップは、近年と比べて特に高いレベルにあるとは言えないかもしれない。それでもツォロフの成長度は、目覚ましいモノがある。
レッドブル陣営が若いドライバーたちを見極める上で最も重要視しているのは、ステップアップした時に速いマシンにどれだけ早く適応できるかということだ。これは、ヘルムート・マルコが同陣営の指揮をとっていた頃から不変のモノである。
ツォロフは、お世辞にもF3マシンに素早く慣れたとは言い難い。しかしF2では、高い適応力を見せている。これは、F1に向けて良い兆候と言えるだろう。とはいえ、保証されていることは何もなく、F1にステップアップすることは、これまでになく大きな変化が求められる。
F1ドライバーともなれば、かかるプレッシャーは途方も無いレベルとなる。連日メディア対応を行ない、絶え間なく注目される。サーキットを走る意外にも、様々な義務が生じる。
現アルピーヌのフランコ・コラピントは、F2までとF1の違いについて「こういう義務的なモノは、ジュニアカテゴリー時代の100倍ほどの重荷となる」と語る。
「F1では、実際にドライブするのは、全体の仕事の約10%に過ぎないんだ」
■ツォロフ、F1テストに参加。ローソンは期待を上回る
Tsolov's adaptation to F2 has been rapid, but the bigger test is to come
Photo by: Dom Gibbons / Formula 1 via Getty Images
とはいえ、素晴らしいドライビングを見せることが、ツォロフがF1へとステップアップする上での第一歩である。実際に彼は、まだF1マシンをドライブしたことはないのだ。
そのため、まずはTPC(旧型マシンでのテスト)に参加し、少なくとも300kmを走行しなければいけない。レーシングブルズのピーター・バイエルCEOは、ツォロフが参加するTPCが秋にも予定されていることを明らかにした。そのあと、シーズン終盤に向けてフリー走行に参加し、アブダビで行なわれる予定のルーキーテストに参加することになろう。
ツォロフがF2で現在のペースを維持すれば、2027年のF1シート獲得の有力候補になるのは当然だ。もう決まっているという話もある。しかしレーシングブルズはこれを強く否定しており、バイエル代表もこれを改めて否定した。
「彼は素晴らしい仕事をしており、当然我々が注目している才能の持ち主である。しかしまだ7レースしか消化していないし、リアムとアービッドも同様に素晴らしい仕事をしている。だから、現時点では問題にはなっていない」
通常であれば、ツォロフの昇格は確実なはずだ。しかし想定外のことがあった。それは、ローソンが期待以上の活躍を見せていることだ。
ローソンは昨年、レッドブルのシートを手にした。しかしまったく成績が上がらず、僅か2戦のみでレーシングブルズに降格させられた。
ローソンはこのことについて、精神的に全く影響しなかったと公言してきた。
「レッドブルでは、自分の実力を証明する時間すら与えられなかった」
ローソンはそう語ったが、それでも降格した後、本来の調子を取り戻すまでにはしばらく時間がかかった。
しかし今年のローソンが違う。今季ここまでの8戦中、実の6戦でポイント獲得している。トップ4チームが抜け出していることを考えれば、この成績は目覚ましいモノと言えるだろう。現実的には、中団チームが入賞を狙える枠は、毎戦ふたつしかないからだ。
6月は特に素晴らしかった。モナコGPで6位になった後、バルセロナ-カタルニアGPでは8位、オーストリアGPで9位と、全く異なるタイプのサーキットでも好結果を残した。
ローソンはレーシングブルズとレッドブルが期待する活躍を見せており、しかもリンドブラッドは、ローソンの経験から多くのことを学んでいるという。
■レッドブルの哲学が決め手になる?
Lawson was under pressure coming into 2026, but has flourished back at Racing Bulls this year
Photo by: Andy Hone/ LAT Images via Getty Images
こういう状況を踏まえると、レーシングブルズとレッドブルは、2027年のドライバーラインアップを決定するのは、非常に困難な仕事ということになるだろう。そして最終的には、レーシングブルズが最終的にどんな存在を目指すのかという問題と密接に関わってくるはずだ。
レーシングブルズがレッドブルの育成チームであり続けるのであれば、ツォロフの昇格は理論的な選択だと言えるだろう。ローソンは既にトップチームのチェンスを与えられ、それを活かすことができなかった。少なくとも現時点では、再び昇格する可能性は低いと思われる。
そのことは、ローソンにとって非常に厳しい選択ということになるだろう。現実的に考えて、今年以上のパフォーマンスを発揮するのは難しかろう。そしてローソンとてまだ24歳。成長の余地は十分にあることも忘れてはならない。
レッドブルにとっては贅沢な悩みであり、非常に難しい選択だ。ただツォロフが今季のFIA F2のタイトルを取るようなことがあれば、来季もローソンがF1に残るのは、簡単ではない。
妥協案のひとつは、ツォロフを2027年にはリザーブドライバーとして起用することだ。F1に向けて十分な学習と準備期間を与えるわけだ。しかしそのことが正しいかどうかということについては、疑問符がつく。
フェリペ・ドルゴビッチは、圧倒的な強さでF2のタイトルを獲得したが、F1デビューのチャンスを得ることができなかった。彼の場合は、1年目でタイトルを獲得したというわけではないが。
また昨年のF2王者であるレオナルド・フォルナローリは、今季マクラーレンのリザーブドライバーを務めている。彼がドルゴビッチと同じ運命を辿らないことを願うばかりだ。
またアルピーヌも以前、オスカー・ピアストリがF2チャンピオンを獲った翌年にF1デビューのチャンスを与えなかった。その結果ピアストリはマクラーレンへの移籍を決断したが、これはドルゴビッチやフォルナローリの例とはまた別の話であるが。
レッドブルの強みは、じっくりと時間をかけられるということだ。ツォロフもローソンも他チームに移籍する可能性は少ないため、陣営としてはふたりのドライバーの成長を慎重に評価できる。もちろんこれには、ツォロフのTPCとフリー走行での走りを評価することも含まれる。
確かに、マックス・フェルスタッペンのような才能とまでは言い難いかもしれない。しかしそれでも、レッドブルとしては贅沢な悩みと言えるだろう。
レッドブルの伝統的な哲学を考えると、ツォロフを昇格させるのが最も理論的な選択肢であるように思える。しかし今年のローソンの活躍は、決断を極めて困難にしている。そして少なくとも決断を下すのを先延ばしするために、あらゆる手段を講じようとしているように思える。
【PR】2026年のF1™︎を見るならFOD。至極の体験『F1® TV』連携プランも!
記事をシェアもしくは保存
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。