パワーユニットはF1界の“嫌われ者”? その是非について改めて考える

2014年にF1で導入されて以降、音やコストなどの点で度々批判を浴びてきたパワーユニット。しかしF1の将来のことを考えれば、それは決して悪手ではなかったはずだ。

パワーユニットはF1界の“嫌われ者”? その是非について改めて考える

 2014年、V6ターボエンジンにハイブリッドシステムを搭載した“パワーユニット(PU)”が導入されたF1。しかしこのPUは様々な面で批判に晒されてきた。

 2018年からF1に導入された頭部保護デバイス“HALO”は、導入後に発生したいくつかの重大事故でその存在意義が注目を集め、その是非に関する議論は下火となった。しかしながらPUに関しては未だに非難の的となっているのが現状だ。

 まず槍玉に挙げられるのがその“音”。これまで採用されてきたエンジンと比べて音が静かすぎるというのがその理由だ。そして高すぎるコストや、あるいは「電気自動車に移行している時代において内燃機関を含むPUを続けることに意味はあるのか」といったことが議論されている。

 それではひとつ目の問題、音について考えてみる。確かに“先代”の2.4リッターV8エンジンの方が音が大きかったことは事実だが、それが聞いていて心地の良いものであったかどうかは疑問と言える。

 一方その前のV10時代、そしてV12も混走していた時代では素晴らしいエンジンサウンドが奏でられており、当時の方が感動できる音であったという点には同意できる。ただ、現在のマシンが静かすぎるということはない。現代F1のサウンドは1980年代のターボ時代と近いものがあるが、当時の音を批判するF1ファンはほとんどいないだろう。

 次はコストについてだ。2014年にF1がPUを導入した時、確かにコストは高騰した。しかし自動車産業が伝統的な内燃機関から脱却する方向に進んでいたため、F1もその方向に進まざるを得なかったのだろう。F1がその波に乗り遅れると、自動車メーカーの関心はさらに薄れ、最終的には環境問題などの観点からF1をやめるべきだという声も高まっていたかもしれない。

 そんな中、F1はPU開発などで生じる莫大なコストへの対策に、ようやく本腰を入れて取り組み始めた。それが今季から導入された予算制限や、2022年から始まるPU開発凍結だ。既に各メーカーはPUにかなりの額を投資してしまっているのは事実だが、今後はコストの問題が少しずつ是正されていくはずだ。

 そして3つ目は完全電動化の必要性についてだ。それに関しては、少なくとも短期的、中期的な視点で見れば、現在フォーミュラE(とエクストリームE)が完全電動マシンのカテゴリーとしての地位を担っているため、ひとつの解決策に固執するのは時期尚早だろう。水素エネルギーや、F1が現在検討している合成燃料なども、価値のある手段だと言える。

 先日、motorsport.comの姉妹誌である英国Autosportが主催したフォーラムの中で、リカルド社の元エンジニアであるスティーブ・サプスフォードが次のように語っていた。

「自動車が完全電動化するという話は、我々もよく耳にする。それは素晴らしいことであり、正しい方向に進んでいる。しかし、既に道路を走っている自動車のことは全く考慮されていない」

 彼は従来の内燃機関を搭載した自動車が英国だけでも3400万台走っていることを指摘し、こう付け加えた。

「再生可能で持続可能な燃料をあらゆるレースで適用することは、二酸化炭素の排出量を削減するだけでなく、電動化と並ぶ代替手段が存在することを世界に示す素晴らしい機会だ」

 競争力という点だけで言えば、PUの導入がチーム間の格差をさらに広げ、誰もメルセデスに太刀打ちできないような状況を作り出していたことは間違いない。しかし、2022年に導入予定の新レギュレーションはそれを解消する狙いがある。そして現在F1で使われている内燃機関は歴史上最も効率的で燃費が良く、F1が今後も生き残るためのチャンスを提供している。PUは果たして本当に悪いこと尽くしなのだろうか?

 

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シリーズ F1
執筆者 Kevin Turner