インタビュー

F1

誰も使ってくれない……F1用ウエットタイヤ開発の難しさ。排水性能とオーバーヒートのバランスをどう取るか?

最近のF1では、決勝レースでフルウエットタイヤが使われる機会が少ない。なぜそういう状況になったのか、そしてピレリは今後、どんなことを計画しているのだろうか?

Ronald Vording

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公開日時: 2025/07/29 2:58

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Oscar Piastri, McLaren, Max Verstappen, Red Bull Racing

写真:: Clive Rose / Getty Images

 近年のF1では、レースウィークエンドにフルウエットタイヤが使われることは非常に少ない。その主な理由は視界だ。イギリスGPで見舞われたような激しい雨の場合、マシンが巻き上げる水煙が、コース上の視界を著しく妨げる。

 続くベルギーGPも雨となったが、セーフティカー(SC)先導で各車がフォーメーションラップに出ていったものの、厳しいコースコンディションや大雨の接近を考慮して、赤旗が振られてスタート手順が一度中断。雨が止むまで1時間20分という長い赤旗中断を挟んだ後、SC先導で4周走り、ようやくグリーンフラッグが振られた。

 以前、FIAはF1マシンが巻き上げる水煙の低減を目指したが、進展はほとんどなかった。その解決には、タイヤを覆う形のフェアリングが用いられたが、効果はなかったのだ。それを考えれば、今後もすぐに問題が解決されることがないだろう。

 もうひとつの重要な問題はタイヤ自体にある。多くのドライバーは、たとえフルウエットタイヤが必要なコンディションとなっても、インターミディエイトタイヤを使い続けた方がいいと断言している。

 この問題に対処するためにピレリは、フルウエットタイヤとインターミディエイトタイヤのパフォーマンスが交わるポイントを改善することに取り組んでいる。ピレリは2025年にこのポイントを、ドライタイヤのラップタイムの115〜116%に設定することを目指した。しかしピレリのモータースポーツ責任者であるマリオ・イゾラによれば、実際にはこのクロスポイントは118%に近いという。

ドライバーからの苦情

 しかし水の量やクロスオーバーポイントだけが、フルウエットタイヤが使われない理由ではない。ピレリはmotorsport.comのインタビューに対し、近年のフルウエットタイヤにおける重要な案件について説明した。

「フルウエットタイヤの開発方針を少し変更した」

 そうイゾラは語った。

「近年はドライバーからの意見として、アクアプレーニングに注目していた。今ではそれらの意見が、実際に何を意味するのかをより深く分析している。そしてアクアプレーニングよりも、コーナリング時のグリップ低下に関係してしていることに気付いた」

「グリップ力の低下は、タイヤのトレッド面のブロックが動いてしまうことに関係している」

 これは、アクアプレーニング現象の発生を抑える対策と、相反するものである。

「アクアプレーニング現象への対策を主眼に置いて開発を進めるなら、トレッド面の溝をどんどん増やしていくことになる。しかしそうすると必然的にブロックが小さくなり、滑り始めてしまうことを意味する。そしてブロックが動きはじめると、オーバーヒートしやすくなるんだ。冗談のように聞こえるが、本当なんだ」

 イゾラは笑いながらも、そう説明した。

「そのオーバーヒートがグリップ力の低下を引き起こす。それがドライバーのコメントの根拠となるんだ」

2026年に向けては、大幅な調整が必要?

 これまでに得られた知見は、今季用のウエットタイヤに既にある程度反映されている。しかし、2026年にはさらに大きくステップアップする必要がある。

「この構造とコンパウンドがオーバーヒートの問題を軽減できるよう、トレッドパターンを若干変更した。これにより、フィオラノとポール・リカールのふたつのテストサーキットよりも負荷の大きなサーキットでは、効果をより発揮することができるはずだ」

「2026年には、この方向性をさらに押し進めた。全く異なるトレッドパターンを検討している」

 イゾラはそう語り、ウエットタイヤにおける対策について自信を見せた。

 なおF1のウエットタイヤに関する議論をする中で必ず取り上げられるテーマ……それは、テストの機会が圧倒的に不足しているということだ。チームやドライバーは、フルウエットタイヤに対して不満を漏らすが、ピレリは適切なタイヤの開発は依然として難しいを強調する。しかも、タイヤにかかる負荷の大きなサーキットでのテストは、今も実に難しい。

 バルセロナやヘレスなど、通常テストを行なうサーキットには、バックアップ用としてウエットタイヤが持ち込まれる。もし雨が降れば、ドライタイヤの使用を諦め、ウエットタイヤのテストに充てるということもできる。ただこれらのサーキットは、人工的にレインコンディションを生み出すためのスプリンクラーが用意されているわけではないので、それができるかそうかは天候次第……なのだ。

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