F1が目指すアメリカでの”2レース目”……それは目指す価値のあるものなのか?

F1のオーナー企業であるリバティ・メディアは、アメリカでのF1人気を高めようと躍起になっている。その一環として国内2レース目のF1を画策しているが、その現実味はどの程度あるのだろうか?

F1が目指すアメリカでの”2レース目”……それは目指す価値のあるものなのか?

 2017年、F1の新たなオーナー企業となったのは、アメリカのリバディ・メディアだった。同社は買収したF1のアメリカでの認知度を高めようと、これまで様々な活動を行なってきた。そして近い将来、アメリカ国内で年間2レースを開催したいとその希望を明らかにしている。

 チェイス・キャリーCEO時代、F1はそのための策を講じてきた。今年からはキャリーの後任として、元フェラーリのチーム代表であるステファノ・ドメニカリがF1の新CEOに就任。ただ、アメリカでのレースを増やすことは、ある意味では最優先事項のままだと言える。

Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W10

Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W10

Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images

「将来に向けた我々の戦略は、アメリカで複数のグランプリを開催することだ」

 今月初め、ドメニカリ新CEOはそう語っている。

 昨年は新型コロナウイルスの影響により開催が中止になってしまったものの、テキサス州オースティンにあるサーキット・オブ・ジ・アメリカズでは2012年からF1アメリカGPを開催してきている。その前にはインディアナポリス、またそれ以前にはフェニックスやデトロイトなどでアメリカGPを開催した。そしてもっと遡れば、年間2戦をアメリカ国内で開催したことがあるし、1982年にいたっては、アメリカ東GP、アメリカ西GP、ラスベガスGPと年間3レースがアメリカで行なわれた。

 では現時点で、アメリカでの2レース目となる可能性が高いのは、どの都市なのだろうか?

Miami track rendering

Miami track rendering

Photo by: Hard Rock Stadium

■マイアミGPの可能性

 リバティ・メディアがオーナーに就任した後、度々話題に上がっているのがマイアミでのグランプリ開催だ。キャリーはCEO時代、ベトナムのハノイと並んで、マイアミを”目的の都市”であると公言してきた。

 早ければ2019年にもマイアミの市街地コースでグランプリが開催される見込みだったが、地元住民などの反対もあり、サーキットレイアウトの変更を強いられ、計画自体も遅れることになった。

 このマイアミGPの計画は、NFL(アメリカンフットボール)のマイアミ・ドルフィンズのオーナー企業と協力し、進められているプロジェクト。コースはドルフィンズのホームグラウンドであるハードロックスタジアムの周りに設営されることが予定されている。

Miami Grand Prix revised track layout

Miami Grand Prix revised track layout

Photo by: Miami GP

 同グランプリは、23戦からなる2021年の開催カレンダーには入らなかったが、キャリーは昨年の時点で、プロジェクトはまだ活発に動いていると強調していた。ドメニカリ新CEOもその発言を引き継ぎ、マイアミは現時点でも最も進んだ新しいプロジェクトだとしている。

「ご存知の通り、マイアミは議論が最も進んでいるプロジェクトだ。秘密でもなんでもない」

 そうドメニカリCEOは語った。

「マイアミは可能性の面でも、最も進んだモノだ」

 新たなサーキット、そして新たなプロジェクトは、いついかなる時も、大きなハードルに直面することがある。最近ではベトナムがその良い例だ。本来ならば2020年に初開催される予定で準備が進み、施設も完成が近づいていた。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により2020年のレースは開催できず、さらに2021年の開催カレンダーにも入れられていない。今では、今後も同地でグランプリが開催できる見込みはないという。

 しかしマイアミのプロジェクトは強力であり、計画も整いつつあるという。ただリバティ・メディアは成果を急がず、より長く続けることができるプロジェクトを慎重に作り上げているようだ。

Lewis Hamilton, McLaren MP4-22

Lewis Hamilton, McLaren MP4-22

Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images

■インディアナポリスに戻る可能性はあるのか?

 かつてF1を開催したインディアナポリス・モータースピードウェイも、グランプリ復活に興味を持っている。

 2019年後半、ロジャー・ペンスキーはこのサーキットと、インディカー・シリーズを買収。それ以降彼は、F1開催についても関心を示している。

「将来性を追加したいと思う」

 ペンスキーは買収発表時にそう語った。

「このサーキットを何に使えるだろうか? ここで24時間レースを開催できるだろうか? ここでF1を走らせることはできるだろうか? 私たちにできることは何だろうか? とにかくこれは、素晴らしい資産なのだ」

 キャリー前CEOも、昨年の時点でインディアナポリスに戻ることへの関心を示していた。

「世界中でも、特に象徴的なサーキットだ」

 そうキャリー前CEOは語っていた。

「三冠レースのひとつが行なわれる場所なのだからね。モナコ、ル・マン、インディ……それは、そのサーキットが何を意味するのかということを物語っている。モータースポーツにおける、特別なコースなのだ」

The start of the race with only six cars

The start of the race with only six cars

Photo by: Steve Swope / Motorsport Images

 2005年、同地で行なわれたアメリカGPでは、安全性を理由にミシュランタイヤ装着マシン全車が、フォーメーションラップを走っただけでリタイアするという事件が発生した。決勝のスタートを切ったのは、フェラーリ、ジョーダン、ミナルディのブリヂストンタイヤユーザー6台のみ。サーキットに詰めかけたファンからは大ブーイングが起きたのだった。ただその傷跡は、今では大部分が癒されたようだ。

 そんな状況下で、インディアナポリスのように名の知られたコースと仕事をすることは、F1に多くのメリットをもたらすことになる。F1にはもう長いことアメリカ人ドライバーは参戦していない。2015年にマノーから5レースに参戦したアレクサンダー・ロッシが、最も直近でF1に出走したアメリカ人ドライバー。FIA F3で優勝した経験のあるローガン・サージェントが次なる有望株だが、F1にたどり着くまではまだ時間がかかりそうである上、資金持ち込みの面で苦労しているという。そんな中、インディアナポリスのようなサーキットでレースが開催されるのであれば、テレビ視聴数を改善することができるかもしれない。

 昨年は南北アメリカ大陸でのレースが、新型コロナウイルスの影響で1戦も行なうことができなかった。つまり、アメリカ国内で試聴しやすい時間にレースが行なわれることはなかった……ということだ。そんな状況にもかかわらず、アメリカでのテレビ視聴数は、前年と比較してあまり変わらなかったという。

 そして、もしインディアナポリスでのF1が復活することになれば、今年3回予定されている土曜日の”予選スプリントレース”のような新たな施策により、新たなファンを惹きつけることができるかもしれない。同地で行なわれるインディ500は、予測不可能なレースとして知られる……それをF1で見習うことができれば、傑出したイベントとすることができるだろう。

Gilles Villeneuve, Ferrari 126C2

Gilles Villeneuve, Ferrari 126C2

Photo by: Motorsport Images

■他のサーキットでのF1開催の可能性は?

 マイアミとインディアナポリスが、アメリカ国内での2戦目のF1レースを開催する有力候補であるのは間違いない。しかし、その他の場所でもF1が開催される可能性がゼロというわけではない。

 ロングビーチは、1976年から1983年にかけ、F1アメリカ西GPを開催。その後はインディカーのレースとなった。6年ほど前には、F1をロングビーチに戻すというアイデアが実際に浮上したこともあった。また昨年はムジェロやイモラなどの”クラシックコース”でF1のレースが開催され、高い評価を集めた。これを考えれば、ロードアメリカやミッドオハイオ、バーバーなどでF1を開催するという可能性もゼロではないかもしれない。

 ただその開催場所がどこになろうとも、今後数年のうちにアメリカでの2レース目を開催したいというF1の目標は明らかなものだ。新CEOのドメニカリは、アメリカGPの前1週間だけ、アメリカ国内でF1の人気が盛り上がるという状況に満足していない。F1の話題が定期的に取り上げられるような状況を作り上げたいと考えており、その問題に取り組むべく準備を進めている。

「アメリカで毎日F1のニュースが報じられるようにしたい」

 ドメニカリはそう語る。

「1週間だけそうなるというのは間違っている。オースティンでのレースの1週間前は、多くの話題が取り上げられる。そしてその後は沈黙となってしまうんだ」

「我々が準備しているのは、アメリカでの非常に強力なコミュニケーションの計画だ。我々は適切なチャンネルで、継続的に情報を発信していく必要がある。投資という面では、立ち上げるのに長い時間がかかる。しかし、その見返りは莫大だ」

 それが、F1のアメリカに対するアプローチだ。準備には時間がかかるだろうが、それは待つ価値のあるもののように聞こえる。

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シリーズ F1
執筆者 Luke Smith