初開催F1マイアミGPは、なぜレコードライン外のグリップが極端に低かったのか? 背景には意外な事情が
F1マイアミGPを初開催したマイアミ・インターナショナル・オートドロームは、その路面に不満があがっていた。他のサーキットと明らかに異なるグリップ感となってしまったことには、とある理由があった。
アメリカ・フロリダ州に新設されたマイアミ・インターナショナル・オートドロームで行なわれたF1マイアミGP。ドライバーたちは低速のシケインを除けばそのレイアウトに満足しているが、こと路面に関しては不満が噴出した。
路面はレコードラインの外が特に汚れており、オーバーテイクのリスクを冒すのが非常に難しくなっていた。そのため、レースが台無しになったと主張するドライバーもいた。
この問題は来季に向けて改善が目指されるのは間違いないだろうが、最終的にはドライバーが懸念していた“パレードラン”のようなレースにならなかったのも事実だ。
実際、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)はドライバーズパレードの段階でターン1のアウト側の路面が予想以上に綺麗であることを発見し、スタートではそのラインを通ってポジションを上げた。その他にも、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がシャルル・ルクレール(フェラーリ)から首位の座を奪ったシーンなど、オーバーテイクは各所で見られた。
メルセデスのトト・ウルフ代表は、マイアミの路面は観戦に適した路面だったと語る。
「例えばターン17のブレーキングでも、良い戦いが見られた。ターン17へのブレーキングは非常に難しいんだ」
「ラインを外せばポジションを失うことになる。ドライバーは『最適な路面ではない』と言うかもしれないが、レースとしてもエンターテインメントとしても素晴らしかった。まさにあるべき姿だと思う」
「エキサイティングなアクションを生み出すための仕掛けのようなものだ。全体として、初めてのイベントとしては10点満点中9点といったところだ」
他のサーキットとは“異なる”路面
例えばサウジアラビアのジェッダのように、他の新設サーキットでは路面に関する問題が噴出することはなかった。ただジェッダはナイトレースでの開催だったためコンディションも異なり、マイアミとの単純な比較には注意が必要ということも事実ではある。
また今回のレースウィークでは、路面の再舗装も何度か行なわれた。走行開始前に路面のアスファルトを剥がす際、機械の設定を誤って油圧油が落ちてしまっていたことにより、マシンが走行するとすぐに路面が損傷してしまうなど、踏んだり蹴ったりの状況だった。
再舗装されたターン17
Photo by: Adam Cooper
そういったハプニングもあり問題の本質が見えづらくなっていたが、実は今回のレースで使われた路面は、他のF1サーキットとは異なる素材が用いられていたのだ。
ではなぜ、他のサーキットと同じ素材を使わなかったのか? それには理由がある。マイアミは土地柄、フロリダ州の運輸局(FDOT)の厳しいガイドラインを遵守する必要があり、路面の材料には地元産のものを使用しなければいけなかったのだ。
マイアミのコース敷設に携わったF1トラックスペシャリスト、デビッド・ウッドワードはこう語る。
「我々は地元の素材、地元の骨材、地元のアスファルト会社を使う必要があった。地元のFDOTの要件を満たす中で仕事をしなければいけなかった」
「だからある意味難しい条件だった。というのも、一般的なF1サーキットとは少し異なる考え方をしなければいけなかったからだ」
「F1のサーキットで使われる骨材やアスファルトは種類も豊富なのだが、今回はFDOTが定める材料にこだわっていたし、その点ではよりチャレンジングだった」
最終的に彼らは、石灰岩にジョージア州で採れた花こう岩を60%混同したもので骨材を作り、F1に適した路面を作ろうとした。
通常、石灰岩はF1のサーキットではあまり使用されないものだ。というのも、石灰岩は分解されやすく研磨されやすいため、グリップを確保することが難しい。
しかしながらフロリダ産の石灰岩は、少し違った特性を持っている。シリカを多く含んでおり、ガラスの破片のような質感となっているため、車両が走行するとグリップを発揮するシリカが露出する。つまり、石灰岩の弱点をシリカが補うような特性となっているのだ。
そのため、全体的にはツルツルとした路面であるものの、走行ラインに限っては粗くグリップしやすい路面になっていたのだ。
ピレリのF1責任者であるマリオ・イゾラは次のように語る。
「このアスファルトは他とは異なっている。全体的には路面の粗さが極めて少ないものの、局地的にはF1の中でも最も高いレベルの粗さがあった」
「だからグリップレベルは最初から良く、もちろん路面もどんどん良くなっていった」
しかしながら、F1マシンが走行することで路面が削られていくと、小石の破片が飛んでいってしまうという現象も起きていた。ピレリはマイアミGPの週末を通して、タイヤに小石をつけてピットに戻ってくるマシンが多いことに気付いていた。
「マシンがアスファルトから小石を削り取っていたんだ。我々はタイヤに小石がついているのを見たが、それはつまり小石が削り取られていて、それがレコードラインの外にも落ちているということだった」
「だからラインから外れるとグリップを失うんだ」
ただレースウィークが進むにつれて状況は好転した。金曜に最初に小石が発見された時は厳しい状況だったが、清掃用の機械を使用したことで大きく改善されていた。
今考えるべきなのは、初開催のレースを終えて、次のレースが行なわれるまでの1年間で、風化によってコースがどう変化するのかという点だ。
小石が削り取られる現象は、路面が使われる度になくなっていき、自然と解決するのか? それとも路面自体を見直す必要があるのか? これには分析が必要となるだろうが、関係者が2023年のレースを最高のものとするため、必要なことは何でもすると宣言しているのは心強いと言えるだろう。
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