もっと頭を使え……レッドブルがフェルスタッペンのタイヤ戦略に慎重になっていた理由とは?
ピレリのマリオ・イゾラは、F1ベルギーGPでレッドブルがマックス・フェルスタッペンのタイヤ戦略について懸念を抱いていた理由を説明した。
F1ベルギーGPを圧倒的な強さで制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン。しかしそのレース中、タイヤ戦略をめぐって、担当エンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼと口論するシーンもあった。
これについてピレリのマリオ・イゾラは、各車ともスティント序盤に左フロントタイヤにグレイニングの兆候があったため、レッドブルもいつも以上にタイヤをマネジメントすることに注力していたはずだと語った。
フェルスタッペンはF1ベルギーGPの決勝レースで驚異的な走りを見せ、チームメイトのセルジオ・ペレスに22秒差をつけてフィニッシュ。まさに完勝だった。
フェルスタッペンはこのレース2回目のピットストップをこなしてコースに戻った直後、1分48秒922を記録。これは、レース終盤にルイス・ハミルトン(メルセデス)に塗り替えられるまで、最速タイムだった。ペレスのレース中の最速タイムが1分50秒308であったことを考えれば、このフェルスタッペンのペースがどれほど速かったかが分かるだろう。
ランビアーゼはフェルスタッペンが最速タイムを記録する前、次のように指示していた。
「最も重要なことは、このソフトタイヤをケアすることだ。妥当なスティントは14周だ」
しかしフェルスタッペンは前述の通り驚異的な最速タイムをマーク。するとランビアーゼは次のように語った。
「マックス、君はアウトラップでタイヤをたくさん使ったね。それが賢明だとは思えないよ」
「このタイヤは最初のスティントである程度のデグラデーションがあった。もう少し頭を使ってくれ」
フェルスタッペンはその後すぐにペースを落としたものの、後続との差を広げてもう1回ピットストップできるだけのマージンを築けばいいじゃないかと反論。そうすればメカニックにとって「ピットストップの練習になる」と訴えた。しかしランビアーゼは、「今回は必要ない」と即座にこの提案を拒否したのだった。
Max Verstappen, Red Bull Racing RB19, in the pits
Photo by: Steven Tee / Motorsport Images
しかしレッドブルは、なぜこれほどまでタイヤを痛めることに懸念を示したのか? ピレリのモータースポーツ責任者であるマリオ・イゾラは、これについて次のように語った。
「スティントの序盤に、履いたばかりの新しいタイヤでプッシュすると、ふたつのリスクがある」
そうイゾラは語る。
「ひとつはグレイニング(ささくれ摩耗)が始まってしまうことだ。タイヤはまだ冷えている……タイヤウォーマーに入っているから完全に冷えているわけではないが、タイヤはまだ完全に使う準備が整っていない」
今年のベルギーGPは気温が低く、さらにレース中に一時的に雨が降ったことで各ドライバーは減速を強いられることになった。それらの結果、ソフトタイヤがもっとも適したタイヤとなった。ただそのソフトタイヤでも、特にスティント序盤に無理をしてしまうとグレイニングが生じてしまい、フェルスタッペンが予定していた14周を走るのは、困難なモノになったはずだ。
実際それまでの2スティントでフェルスタッペンが履いていたタイヤには、グレイニングの兆候があったという。
「そしてこの気温では、コンパウンドの機械的抵抗によりそれが壊れ始め、グレイニングが生じるというリスクがある。そうなると、パフォーマンスを回復するために対処する必要がある」
「またタイヤが新品で、コンパウンドが厚いままだと、多くの熱が内部に溜まり、その熱による劣化が大きくなってしまう」
「そのためドライバーたちは、使い始めの段階で、うまくタイヤの温度を上げるためにタイヤをマネジメントする傾向にある」
ただイゾラ曰く、今季のレッドブルは圧倒的な速さを手にしているため、好きなように走れているとも語った。
「現時点でのレッドブルには、十分なマージンがある。そのため、基本的には彼らがやりたいことをやっている。マックスはペースをマネジメントしているが、プッシュすれば他よりも1秒以上速く走ることができる」
Max Verstappen, Red Bull Racing RB19
Photo by: Red Bull Content Pool
なおフェルスタッペン本人も、第1スティントでハミルトンらを追いかけた際には、タイヤの扱いに苦労したと語った。
「タイヤを少し痛めてしまった」
そうフェルスタッペンは語った。
「基本的に、ピットストップしてミディアムに履き替えると、クルマの状態ははるかに良くなり、より速く走れるようになったと感じた」
「ドライブするのが本当に楽しくなって、トップに立つこともできた」
「タイヤのマネジメントもうまくできた。でも、スティントの早いタイミングで雨が降り始めた」
「つまり場所によっては、かなりスピードを落とさなければいけなかった。それが解消された後で、ソフトタイヤを再び履いた。マシンのバランスは、かなり良くなったんだ」
「そのことは、トラフィックに巻き込まれなければ、タイヤの履き心地がどれだけ良くなるかを示している。素晴らしいレースだったよ」
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