ステークF1、扱い難い“プルロッド”を採用したのはなぜか? テクニカルディレクター「空力的に、この変更は絶対に正しい」と自信
ステークF1は、2024年型F1マシンC44のフロントサスペンションに、プルロッド式を採用した。整備性という面では非常に扱い難いものである一方、空力的なメリットが非常に大きいと、テクニカルディレクターのジェームス・キーは自信を持っている。
ザウバーのテクニカルディレクターであるジェームス・キーは、フロントサスペンションをプルロッド式式にしたことについて、機械面でのデメリットはあるものの、それを補うだけの空力的メリットが存在すると断言する。
ザウバーを母体とするステークF1の2024年型マシンC44は、昨年型マシンC43から大きく変更された。その最も興味深い部分は、フロントのサスペンションの方式が昨年のプッシュロッドからプルロッドに変更された点だろう。
近年のF1では、フロントにプルロッド式を採用するチームは稀だった。この方式は、サスペンションの車体側の機構を低い位置に搭載することができるという点で、重心を下げられるというメリットがある。しかしその一方で、ガレージでマシンのセッティングをする際などの整備性は、モノコックの上面に内部機構が置かれるプッシュロッド式と比較すると断然低くなってしまうため、敬遠されていたのだ。
しかし、2022年にテクニカルレギュレーションが大きく変更され、F1マシンがグラウンド・エフェクトカーになって以降は、プルロッド式にすることでの空力的メリットが明らかになり始めている。
ザウバーのテクニカルディレクターであるキーは、内部機構の整備性についてはプルロッド式は理想的な解決策ではないと認めつつも、空力面での向上がそのデメリットをはるかに上回ると主張する。
「空力学的に、これは絶対正しいことであり、プラスの効果があるのは間違いない」
キーはmotorsport.comにそう語った。
「重要なのは、フロントタイヤの後方気流を制御することだが、タイヤの周辺には生成したいと考える複雑な関数がたくさんあるんだ」
「フロントサスペンションは、フロントウイングとマシンのその他の部分との間にある、数少ないデバイスのひとつだ。だから、空力的に有効に活用したいと考える」
「もちろん、欠点は機械的な部分だ。そういう観点では、やりたいことではない。前後、そして上下が逆になっているようなモノだから、サスペンションの設計としてはあまり良いモノではないだろう」
プッシュロッド式を捨てるという決断は、簡単なモノではなかったとキーは言う。しかし今のチームには、どんな欠点も克服できるだけの能力があると説明する。
「空力的にうまく利用できるのなら、全ての機械的な妥協を克服しなければいけない。それが実際の課題だった」
そうキーは言う。
「歩むべきステップはいくつかあると思う。それを実現するのは、簡単なことではないからね。しかしザウバーがプルロッドを使うのは初めてにもかかわらず、チームは素晴らしい仕事をしてくれた」
なおキーによれば、プルロッド式を採用するという決断は、昨年9月にC44の設計が始められる前の段階で行なわれたという。また、昨年レッドブルとマクラーレンが、プルロッド式を採用したマシンで速さを見せたことからも、今季からプルロッド式に移行するチームが、ステーク以外にもあるはずだとキーは考えている。
「基本的にはそれは正しいことだから、他のチームもこれと同じことをしてくると考えている」
そうキーは語る。
「妥協しなければいけない部分があったとしても、総合的にみれば優れていると思う。この構成を使えば、さらに優れた効果が得られるんだ」
「リヤでは、プルロッドかプッシュロッドかという議論はあまり話題にならない。様々なパッケージングを考慮すれば、プッシュロッドを使用した方がマシンとして優れているんだ」
「しかしフロントにプルロッドを使うということに関しては話は別だ。だから他のチームも、我々と同様にそれを使ってくると思う」
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