F1 モナコGP

F1がF2より遅い? 超スローペースとなったF1モナコGP、現代F1との相性の悪さが浮き彫りに

F1モナコGPは、コース上でのアクションが十分でないことを示すかのように、一部のドライバーが意図的にF2に近いレベルまでペースを落とした。

Charles Leclerc, Ferrari SF-24, Oscar Piastri, McLaren MCL38, Carlos Sainz, Ferrari SF-24, Lando Norris, McLaren MCL38, George Russell, Mercedes F1 W15

 F1第8戦モナコGPは、大型化した現代F1マシンではオーバーテイクがこれまで以上に不可能な上、オープニングラップで発生した大クラッシュにより出された赤旗中断中に全車がタイヤ交換義務を果たしたために、基本的にはノンストップのタイヤマネジメントレースとなった。

 ただ後方との差が19秒まで広がれば、ポジションを落とすこと無くタイヤ交換することができるため、新しいタイヤを履いてギャップを一気に縮めるか、セーフティカーが出た際に有利な状況に持ち込むという戦略的要素が残っていた。

 駆け引きの最初のドミノを倒したのは、メルセデスのジョージ・ラッセルだった。5番手からハードタイヤでスタートしたラッセルは、赤旗でミディアムタイヤに交換して義務を消化。そのままレースを走り切るために、ペースを落としてタイヤを労わった。

 これで選択肢が生まれたのが4番手のランド・ノリス(マクラーレン)だった。ラッセルとのギャップが大きくなれば、ピットストップして新しいタイヤに履き替え、3番手のカルロス・サインツJr.(フェラーリ)にアタックすることができるようになる。しかしフェラーリもその危険性を理解しており、首位を走るシャルル・ルクレールにペースダウンを指示。有利なトラックポジションを活かして後続を抑え、隊列全体のペースを落とそうとしたのだ。

 これにより2番手オスカー・ピアストリ(マクラーレン)や3番手サインツJr.、4番手ノリスまでの差が詰まったものの、ノリスとラッセルの差も基本的に19秒以下にキープすることができた。ノリスには一度だけフリーストップのチャンスがあったものの、結局マクラーレンは危険を冒すことはなかった。

 ただこの作戦は、ルクレールにとっても複雑なモノだった。母国での初優勝を目指す彼にとって、F2レベルまでラップタイムを落とすことで自分のリズムを見失い、限界がどこにあるのか分からなくなったという。

 集中力がすべてを左右するモンテカルロ市街地コースで、かなり気が散ってしまっていたようだ。

「僕たちにはラッセルに対して目標としているギャップがあった。ラッセルとの差をあまり広げたくなかったんだ」

 そうルクレールは説明した。

「レース中盤はペースが遅かったから、プッシュし始めた時にどこでブレーキを踏めばいいのかわからなくなり、そこでミスが起こる可能性があった」

「だからリズムに乗って、もう少しプッシュしたかったんだ。でもチームからは『スローダウン、スローダウン、スローダウン』と言われていたんだ」

 2位でレースを終えたピアストリは、予選では1分10秒台前半だったラップタイムが1分20秒台に突入し、「F2より遅い」と悔しがった。

 実際、日曜日に行なわれたF2のフィーチャーレースでは、ファステストラップが1分22秒384。予選では1分21秒310が最速だったため、ほぼ同レベルのペースだったと言っていいだろう。

 ルクレールが実際にF2ペースで走ったのは最初の2、3周だけだったが、上位陣がいかに限界から遠いペースで走っていたかを物語っている。またピアストリはスタートでサインツJr.と接触して1周0.250秒のタイムロスに相当するダメージを負ったと推定されるが、このレースではそのダメージも関係ないほどペースが遅かった。

Yuki Tsunoda, RB F1 Team VCARB 01, Alex Albon, Williams FW46

Yuki Tsunoda, RB F1 Team VCARB 01, Alex Albon, Williams FW46

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 その後方でも、意図的にペースを落としたマシンがいた。8番手を走っていた角田裕毅(RB)だ。すぐ後ろ9番手を走っていたアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)にフリーストップされるのを避けるため、10番手のピエール・ガスリー(アルピーヌ)との間隔をコントロールすべく、極端に遅いペースで走ったのだ。

 ルクレール同様、角田も普段のペースを大幅に下回るドライビングに不満を訴えていたが、チームの指示に従った。

「チームが計画した戦略を常にリスペクトしなくてはいけません」

 そう角田は説明した。

「後続車がピットストップをしないように、あるいはアンダーカットができないように、ペースを落とさなければいけませんでした」

「ドライバーとしてはフラストレーションが溜まります。でもチームの言うことを守るしかありません。良い気分ではないですが、レース前に話し合ったことですし、実際自分がやったことには満足しています」

 アルボンは、角田のペースがいかに腹立たしいほど遅かったかを説明した。7番手のルイス・ハミルトン(メルセデス)に45秒以上も離されていたのだ。

「彼は(本来)すごくペースが良かったから苛立たしいね……僕もペースをマネジメントできてよかったけど、ここまで遅く走る必要はない」

 アルボンは苦笑いを浮かべながら首を振った。

「あんなにゆっくり走っていると、集中力を保つのが難しいんだ。限界に近づいていないんだから」

 角田がどれほどペースを抑えていたかを如実に表しているのが、RBが角田にレース終盤の数ラップ、自分のペースで走ることをチームが許可した後のラップタイムだ。

 それまで角田のラップタイムは1分18秒台から1分20秒台だったが、チームからお許しが出るといきなりペースが上がり、1分15秒4、1分14秒9、1分15秒2、1分14秒7と先頭に匹敵するタイムを刻んでいった。

 土曜日の予選はスリリングな戦いが繰り広げられ、日曜日のレースではルクレールがついに母国での優勝を果たした。過去2度ポールポジションを獲得しながら表彰台に上がることすらできなかったルクレールが、故郷で錦を飾ったのは感動的なストーリーだ。しかしその一方で、1周目の赤旗という演出により、モナコのコースレイアウトと巨大化したF1マシンの相性の悪さが浮き彫りとなった結果ともなった。

 2026年のレギュレーション変更で、F1マシンは小型軽量化される方針となっているが、それを待つこと無く何らかの変更を求める声が大きくなりそうだ。

 

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