なぜF1は“眠らない街”ラスベガスを目指すのか。土曜日に決勝レースを行なう理由やコースレイアウトは?
40年ぶりに、アメリカ・ラスベガスにF1が戻ってくる。レースはいつ開催されるのか、コースはどうなるのか、同国3ヵ所開催に至った理由などをまとめた。
F1は、2023年シーズンにアメリカ・ラスベガスで新たにグランプリを開催すると3月31日(木)に発表した。
ラスベガスGPの名が、近年開催数が増え続けているF1カレンダーに加わり、2023年シーズンはアメリカでグランプリを3回開催することになる。
開催日程やコース概要など、ラスベガスGPの最新情報をご紹介する。
ラスベガスGPの開催日程は?
ラスベガスGPは、2023年11月に開催される予定となっているが、具体的な日程は未定だ。
現在F1は、中東のアブダビで最終戦に向けた10月〜11月のシーズン終盤戦をアメリカ、メキシコ、ブラジルで行なっているが、ラスベガスGPもその北米・南米ラウンドに組み込まれるようだ。
「契約でまだ未確定の部分があり、それが決まり次第、実際の開催日程を発表する」とF1オーナーのリバティ・メディアのグレッグ・マフェイCEOは語っている。
Las Vegas track action
Photo by: Liberty Media
かつてのラスベガスでのレースでは何が起きた?
F1がラスベガスでグランプリを開催されるのは初めてのことではない。1980年代前半にも行なわれたが、たった2回と短命に終わっていた。
舞台となったラスベガス市街地サーキットは、シーザーズ・パレスホテルの駐車場を利用した仮設のモノ。そのためこのグランプリは、シーザーズ・パレスGPと呼ばれたこともある。
ただ、ヘアピンを連続させるという面白みに欠けるコースレイアウトがドライバーとファン双方から不評を買った。
ラスベガスGPが開催された1981年と1982年は、共にシーズン最終戦として開催され、タイトルの行方が決まった。1981年には、ネルソン・ピケ(ブラバム)がカルロス・ロイテマン(ウイリアムズ)を1ポイント差で上回り初のタイトルを手にした。しかしグラウンドエフェクト時代終盤という背景もあり、ピケは反時計回りのサーキットでのレースで背中を痛め、首にも大きな負担がかかり、昼のラスベガスの暑さからレース中盤には嘔吐してしまったという。
1982年のラスベガスGPでは、ケケ・ロズベルグ(ウイリアムズ)がシーズン1勝ながらも手堅くポイントを積み重ねていたことで、ドライバーズタイトルを獲得した。しかし、それ以降はラスベガスでF1が開催されることはなく、シーザーズ・パレスのコースはCART(後のチャンプカー)用に調整されることとなった。
なぜ再びラスベガスでグランプリを開くのか?
何年も前からF1はラスベガスGPの復活に関心を寄せており、ラスベガスを象徴する大通り“ラスベガス・ストリップ”をコースに組み込んだレース開催を目標としてきた。
そして近年アメリカでのF1人気が高まっていることもあり、F1とラスベガス関係当局との話し合いが加速した。
2021年にオースティンで開催されたアメリカGPでは3日間で述べ40万人がサーキットを訪れ、2022年5月にはマイアミGPが初開催される。
また、ラスベガスはF1開催都市としてリバティ・メディアが求める全ての要件を満たしている。2017年にF1を買収した際、F1の知名度を上げられるように、新しいグランプリが世界一華やかなモノとなるよう「憧れの地」を求めていると明らかにしていた。
ラスベガスには根強いスポーツ文化があり、ボクシングやUFCの主催試合が定期的に開催されているほか、NFLのラスベガス・レイダースが本拠地を構えている。F1は、象徴的なランドマークやネオンサインに加え、この波に乗りたいと考えているのだ。
Las Vegas track action
Photo by: Liberty Media
土曜日の夜に決勝を行なう理由とは?
2023年11月に開催予定のラスベガスGP決勝は、現地土曜日の夜に行なわれる。
決勝レースが土曜日に開催されるのは、1985年の南アフリカGP以来38年ぶりであり、それ以降は常に日曜日に決勝レースを行なってきた。
決勝スタートは現地時間22時。アメリカのファンにとってはゴールデンアワーの開催ということだけでなく、ヨーロッパのファンにとっては日曜日の早朝のレースとなる。
因みに日本からの視聴であれば、翌日曜日の15時スタートと夜ふかしや早起きをせずに北米・南米ラウンドのF1を楽しめることになる。
コースレイアウトはどうなる?
今回の発表では、コースに関する基本情報と、ストリップ地区を取り入れたコースの初期レイアウトが公開された。
全長6.13kmコースには14のコーナーと3つの長いストレートが配置され、最高速度は約340km/hに達するとされている。
新しいラスベガス市街地サーキットは、ベルギーのスパ・フランコルシャンやサウジアラビアのジェッダ市街地サーキットに続いて、F1カレンダーで3番目に長いコースとなり、決勝レースは50周で争われる。
Las Vegas track map
Photo by: Liberty Media
なぜF1はアメリカで3つのレースを開催するのか?
上記でも述べた通り、アメリカ市場でF1は急成長を遂げている。2007年の開催以降、アメリカでは2012年までひとつのグランプリも行なわれていなかったが、2023年からはオースティンとマイアミ、ラスベガスの3ヵ所がF1カレンダーに載ることが決まっている。
同国で3レースを開催することは、グランプリの希少性を損なうため逆効果に思えるかもしれない。しかしアメリカは広大であり、開催地それぞれがタイムゾーンの異なるエリアに分散している。マイアミは東部(EST)、オースティンが中部(CST)、ラスベガスは太平洋標準時(PST)が適用される西部だ。
サーキットの特性も異なり、開催時期もマイアミは5月、オースティンは10月、ラスベガスは11月となっている。
オースティンでのアメリカGPは2026年まで開催契約延長を今年2月に発表し、マイアミは初開催を前に10年の開催契約を結んでいる。大きな市場であるアメリカで、F1は重要な足場を組むことができた。
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