コラム
F1 イタリアGP
海外F1記者の視点|角田裕毅に向けられるF1界の愛と厳しい現実。崖っぷちの今、残された選択肢とは
苦しむレッドブルの角田裕毅は言い訳のできない領域に達しつつあり、F1キャリアが危機に瀕している。
Christian Nimmervoll
公開日時: 2025/09/10 2:31
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Yuki Tsunoda, Red Bull Racing
写真:: Andrea Diodato / NurPhoto via Getty Images
レッドブルに所属する角田裕毅の立場は厳しくなる一方だ。気さくな角田をみんなが好んでいるのは確かだが、数字は嘘をつかない。
姉妹チームからレッドブルに昇格して以来、角田が獲得できたのはわずか9ポイント。一方でチームメイトのマックス・フェルスタッペンは同じ期間中に3回のグランプリ優勝を含む194ポイントを獲得してきた。イタリア・ミラノ中のカンパリを飲み干しても、この差を洗い流すことはできない。
角田には少し同情せざるを得ない。厳しい現実を突きつけられる一方で、彼は2021年に後のレーシングブルズであるアルファタウリでF1デビューを果たして以来、グローバルなファンからカルト的人気を集めてきた。ハリウッド女優のクリステン・ベルも最近、角田のTシャツを着た自身の写真をInstagramに投稿したほどだ。
その理由は明白。愛嬌のある外見と、言葉の壁ゆえに時折見せるぎこちなさがコクピット内の激しく激昂する性格と融合する、ユニークな組み合わせが角田の魅力なのだ。
Yuki Tsunoda, Red Bull Racing
Photo by: Joe Portlock / LAT Images via Getty Images
言うまでもなく、調子の良い時の角田は極めて速いグランプリドライバーだ。
例えば2024年シーズンでは、まずフェルスタッペンの次期チームメイト候補と考えられていたダニエル・リカルドを引退に追い込んだ。その後リアム・ローソンとのポイント対決で勝利を収めた。
2025年シーズン開幕時にローソンがレッドブルへ昇格し、角田が先を越された主な理由は、当時のチーム代表クリスチャン・ホーナーが、レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコほど角田を高く評価していなかったから。ホーナー元代表は非公式の場で、角田に何を見出し、何を見出せなかったかを尋ねられた際、誰にでも率直に答えていた。
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こうしてローソンが先にレッドブルのチャンスを得たが、グリッド最前列のプレッシャーに耐えきれず、わずか2戦でレーシングブルズへ降格。角田がより高いレベルでどれだけ通用するのか試す時が来た。
Race Winner Yuki Tsunoda, Carlin celebrates in Parc Ferme
Photo by: Andy Hone / Motorsport Images
マルコは常に角田を信頼してきた。まだ角田がFIA F2に参戦していた2020年の夏にマルコのオフィスを訪れ、ドイツメディアの記者から当然のようにミック・シューマッハー起用の可能性を尋ねられた際、マルコは苛立ちを隠さなかった。そしてどうしてシューマッハーに固執するのか、角田がはるかに優れた才能を持つドライバーであることにどうして誰も気づかないのか、と問いかけた。
そのF2シーズンでは、シューマッハーがチャンピオン、角田がランキング3位となった。しかし角田はFIA F3とトヨタレーシングシリーズからステップアップしたばかりのルーキーであり、その成績は一層際立っていた。
アルファタウリで角田は浮き沈みの多いキャリアを過ごした。無線で感情を爆発させることで話題となった一方で、同時に好感の持てるドライバーだとしても知られるようになった。例えば2023年、イタリア・イモラが洪水に見舞われた時のこと。グランプリが中止になった後もビジネスクラスで帰国することなく、長靴を履いてファエンツァの住民が故郷を守る手助けをする様子が目撃された。
イタリア・ファエンツァが角田にとって第二の故郷となったのは、アルファタウリのフランツ・トスト元代表がイギリスからそこに送り込んだから。才能ある若手ドライバーだったが、英語は拙く、食生活も疑問符がつくものだった。記者会見やインタビューでパスタやピザの話題になると目を光らせる一方で、フィットネス・トレーニングは“得意分野”ではなかった。
Pierre Gasly and Yuki Tsunoda, AlphaTauri
Photo by: Red Bull Content Pool
そこでトスト元代表は養子のように角田を引き取り、早朝のジョギングに連れ出し、英語を話す管理職の妻に語学レッスンを手配した。チームメイトのピエール・ガスリー(現アルピーヌ)は角田と友情を育み、後輩が家に閉じこもってゲームとピザに溺れることなく社交的になるよう導いた。
角田はF1デビュー当初から大きく成長した。それでもなお、実力に見合った評価を十分に得られていないというのが現状だ。
ただひとり例外がいる。レッドブルの新チーム代表、ローレン・メキーズだ。レーシングブルズからレッドブルにメキーズ新代表が加入した時、角田としては雲間から差し込む太陽の日差しのように感じられたに違いない。
Yuki Tsunoda, Red Bull Racing, Laurent Mekies, Racing Bulls Team Principal
Photo by: Kym Illman / Getty Images
ホーナー元代表は角田の状態をほとんど気にかけず、最新パーツを割り当てる代わりにフェルスタッペンのスペアパーツとして取っておくことを選んだが、メキーズ新代表はその慣行に終止符を打った。レッドブルでの初仕事のひとつは、イギリス・ミルトンキーンズのファクトリーに放置されていた改良型フロアを角田に与えることだった。
小さなディテールが大きな違いを生むのがF1。角田が好調な走りでピットに戻ってくるたびに、メキーズ新代表は親しげな笑顔で迎える。そして決まって浮上する「姉妹チームで好調のアイザック・ハジャーが今年中にレッドブルにやってくる可能性は?」という質問に「2026年のドライバーラインアップについてまで議論をする理由すらない」と一蹴する。
しかし、ここに落とし穴がある。レッドブルが突然セカンドドライバーに対して血が通った対応を見せるということは、角田がすぐに結果を出せなければ、言い訳が通用しなくなるということを意味しているのだ。
かつてアレクサンダー・アルボン(現ウイリアムズ)はレッドブルのマシンについて、感度を最大に設定したPCのマウスカーソルのように神経質だと表現していた。一方で新人が集まるレーシングブルズのマシンは絶対的なスピードは出なくとも基本的にドライブが容易だ。比喩的に言えば、角田はまだカーソルをダブルクリックしたい場所に正確に移動させることがあまりできていないのだ。
角田は急速にそのやり方を掴む必要がある。レッドブル残留に十分な成果を挙げられなかった場合、F1キャリアが望みよりも早くに終わってしまうかもしれないのだ。
角田はレッドブルとホンダの支援を受けてF1までたどり着いた。しかし両者は2025年限りで袂を分かち、2026年にホンダはアストンマーティンにのみワークスパワーユニットを供給する。そのシートはフェルナンド・アロンソとチームオーナーの息子ランス・ストロールによって既に予約済みだ。
Race winner Arvid Lindblad, Campos Racing
Photo by: Formula Motorsport Ltd
レーシングブルズへ復帰の道も閉ざされているかも知れない。2026年は角田にとってF1参戦6年目となるが、姉妹チームの若手育成という存在意義には必ずしも適合しない。レッドブルはおそらく角田の実力を十分に見抜いているだろう。またマルコはチャンスを待つジュニアドライバーを他にもたくさん抱えている。
角田がレッドブルを去るとなった場合、ハジャーが後任を務める可能性が高い。F1デビューからわずか1年では時期尚早かもしれないが、今後のF1レギュレーション変更を考慮すれば理に適ったタイミングだ。ハジャーは考えすぎるタイプではない。行動派であり、あまり深く考えずにマシンに乗り込み結果を出すドライバーだ。フェルスタッペンのチームメイトを務める上で必要なメンタリティと言える。
レーシングブルズではジョセップ・マリア・マルティやアービッド・リンドブラッドがF1デビューのチャンスを掴む可能性がある。そのうちのひとりが、より経験豊富な基準点となるローソンとペアを組むことになるだろう。
Yuki Tsunoda, Red Bull Racing
Photo by: Steven Tee / LAT Images via Getty Images
2026年に向けて他陣営のシートは基本的に埋まっている。発表の有無はさておきマクラーレン、フェラーリ、メルセデスはドライバーラインアップを決めている。
メルセデスのトト・ウルフ代表が土壇場で秘蔵っ子アンドレア・キミ・アントネッリを差し置いて角田を起用するということは考えられない。ウイリアムズはアルボンとカルロス・サインツJr.を、アストンマーティンではストロールが突然テニスコーチに転身することを決めない限りはアロンソとコンビを組む。
新規参戦となるキャデラックはセルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスというベテランコンビを発表したばかり。アウディ(ザウバー)とハースにも空きはなく、アルピーヌはピエール・ガスリーと契約延長に合意した今、残り1席となっている。しかし実質的にチームの主導権を握るフラビオ・ブリアトーレが角田を求めるだろうか? その可能性は極めて低い。
角田は非常に厳しい状況に追い込まれるかもしれない。そうなれば非常に残念なことだ。彼はひとりのレーサーとしても、ひとりの人間としても、F1にとって真に貴重な財産だからだ。伸るか反るか……F1キャリアを左右するのは自身のパフォーマンスに他ならない。
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