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コラム

アルボンのF1でのキャリアは、なぜ潰えたのか? しかし今や”完璧”な立ち位置に

F1ドライバーとして成功するためには、”適切”なチームに所属すればいいというだけではない。”適切”なチームに、”適切”なタイミングで所属することが重要なのだ。そういう意味では、アレクサンダー・アルボンは、片方が欠けていたのかもしれない。

Alex Albon, Red Bull Racing

Charles Coates / Motorsport Images

 レッドブルのような一流チームのドライバーになることは、多くのドライバーにとっての夢であると言える。来季同チームに加入することが決まったセルジオ・ペレスは、2021年にどんなことを成し遂げることができるか、興奮に満ちているはずだ。しかし一方で、今季限りでレッドブルのレギュラーシートを失うことになったアレクサンダー・アルボンは、適切なチームには所属したものの、適切なタイミングではなかったと言えるだろう。

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 同チームで長期的に活躍するためには、アルボンはその能力をチームの首脳陣に見せつけなければならなかった。しかしレッドブルの2020年用マシン”RB16”は、高いパフォーマンスを持ちながらもドライビングが難しいマシンになってしまっていた。そして、新型コロナウイルスの影響によって開催カレンダーが圧縮されたことにより、アルボンがこの難しいマシンに慣れるのを妨げることになった。

 一方で混乱したシーズンの中で、レーシングポイントのペレスは安定した走りを見せ、ドライバーズランキング4位という好成績を挙げた。しかも、サクヒールGPでは優勝して見せた。これらの要素が全て重なったことで、レッドブルがペレスを無視するのは不可能だった。

 もしRB16がアルボンにとって扱いやすいマシンだったら、レーシングポイントがチーム史上最高のマシンを作っていなかったら、またセバスチャン・ベッテルの加入によりペレスがどのチームとも契約していない状態になっていなかったら……状況は大きく異なっていた可能性がある。

 F1では歴史的に見ても、何かひとつの要因が別の場所で予期しない結果をもたらすということが生じてきた。ただ、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーも語っている通り、ドライバーたちはその時に置かれた状況に対処し、才能を証明する必要がある。そこには、公平性などというモノは存在しない。

Alex Albon, Red Bull Racing RB16

Alex Albon, Red Bull Racing RB16

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

「彼は今F1にいる。そして、レッドブルのおかげでF1にデビューすることができた。そのことには感謝してくれているだろう。そしてまだ、彼はチームの一員だ」

 ホーナー代表はアルボンについて尋ねられた際、そう語った。

「今年のマシンは扱いにくいモノだった。しかし、シーズン後半3分の1のところでは、かなり改善されたと思う」

「ただアレックスとマックス(フェルスタッペン)の差は、(開幕戦だった)オーストリアからバーレーンでの2レース目(サクヒールGP)まで、ほぼ一緒だったと思う」

「アブダビでは良いレースをした。そしてそれ以外の全てのことで彼はよくやった。彼は素晴らしいレーサーだし、チーム内では紳士なんだ。彼は好青年だから、チーム内での人気もある。そしてそれが、決断を難しくしている理由だ」

「しかしデータを見て、感情とは真逆の”事実”を信じるならば、セルジオは理想的な選択肢だ」

 アルボンには、前任のドライバーたちよりも多くの猶予が与えられたという事実も確かにある。レッドブルは、ダニール・クビアト(2016年)とピエール・ガスリー(2019年)を、シーズン中にトロロッソ(現アルファタウリ)に降格させるという、冷酷な決断を下してきたという事実がある。

 アルボンがシーズンを通じてレッドブルで走ることができた理由、それはコンストラクターズランキング2位が”安泰”だったからだろう。メルセデスは圧倒的な強さでチャンピオンを疑いようのないモノとし、そしてフェラーリが失速したため、アルボンが活躍しようがしなかろうが、ランキング2位以外になる可能性はほぼなかったのだ。事実、フェルスタッペンが獲得した214ポイントだけでも、ランキング3位になったマクラーレンよりも多い獲得ポイントだった。

 レッドブルが急いで決断を下さなかったもうひとつの要因は、ドライバー市場をとりまく奇妙な状況だった。レッドブルが他の選択肢を検討し始めた際、魅力的な手札がまだまだ残っていたのだ。他チームの多くがすでにラインアップを決めていたにも関わらず、有力なドライバーが数多く市場に残っていた。ペレスもその中の一人であり、彼はもしF1でのシートを得られなかったならば、1年休養すると公言していた。そして現ドライバーのアルボンを他のチームに奪われる心配もなかったのだ……その結果、1年間を戦い切ることができたのだ。

Alex Albon, Red Bull Racing, and Max Verstappen, Red Bull Racing

Alex Albon, Red Bull Racing, and Max Verstappen, Red Bull Racing

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

 ただ最後までレッドブルのマシンを走らせたことは、アルボンにとって来季のシートを確保するための好機にはならなかった。最終戦アブダビでは見事な走りを見せ、メルセデスが戦略を自由に選択することを封じる活躍を見せたものの、レッドブルが望んでいたモノを満たすことはできなかった。一方でペレスは同時期に、レーシングポイントのマシンから”全て以上”のモノを引き出し、サクヒールGPでは勝利を収めた。それが、レッドブルの最終決定の引き金になったのは間違いないだろう。

 確かにペレスが2021年に、アルボンが悩まされたのと同じ”扱いにくい”というマシン特性に悩まされるかもしれないというリスクは存在する。しかし逆にアルボンを継続起用すれば、彼の進歩が”頭打ち”になってしまうというリスクもあっただろう。

 レッドブルはアルボンの能力を買っている。チームは彼の技術的なフィードバックには感銘を受けているため、速さを発揮できないということ以外には不満はなかったはずだ。しかし予選タイムを見れば、フェルスタッペンに0.5秒以上の差を平均でつけられてしまってきた。そうなってしまうと、フェルスタッペンとアルボンのグリッドポジションが大きく離れてしまうことに繋がり、チームとしてメルセデスに対抗するのを難しくしてしまったのだ。そういう意味でも、レッドブルとしては別のドライバーを探すしかなかった。

 しかし、来季レギュラーシートを失うことは、アルボンの将来にとって優位に働く可能性もある。アルボンはテスト兼リザーブドライバーを務め、2022年用マシンの開発に注力することになる。つまり彼は、シミュレータで2022年仕様のマシンを多く走らせるということを意味し、レギュレーションが大きく変わるシーズンのマシンの挙動を、誰よりも早く掴むことができるということになるのだ。そういう意味では、2021年マシンを走らせ、レースで好結果を得ることに集中するドライバーよりも、新シーズンに向けて有利なスタートを切ることができる可能性もある。何よりも、開発プロジェクトの中心にいられるということは、自分好みのマシンを生み出すという点でも、とても重要になる可能性がある。

Alex Albon, Red Bull Racing, 3rd position, on the podium

Alex Albon, Red Bull Racing, 3rd position, on the podium

Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images

 さらにレッドブル陣営のドライバーが欠場することになった場合には、その代役を務める最有力の存在ということになる。またペレスは単年契約であるため、2022年に再びチームのシートを奪い返すという可能性も低くはない。その上、姉妹チームのアルファタウリも選択肢に入ってくる。F1デビューを果たす角田裕毅は、2022年のシートも確保するためには、1年目から印象的な活躍を見せなければならないし、ガスリーについては、他(例えば母国フランスのチームであるアルピーヌ)からの魅力的なオファーがあれば、移籍を選択する可能性もゼロではない。

 アルボンにだって、どんな幸運が訪れるかは分からない。事実、ペレスはレーシングポイントで好結果を残していたにもかかわらず、チームを弾き出されてしまった。そんな中で、トップチームであるレッドブルとの契約を勝ち取るという、これ以上ない結果を手にしたのだ。

 シーズン終了直前、motorsport.comはアルボンにインタビューを行ない、コントロールが難しいRB16にどう対処したか、そして将来についての厳しい憶測がある中、自身をどう奮い立たせたのかということを尋ねた。

 そこから見えてきたモノ、それはアルボンが適切な状況を手にすることができれば、完璧な仕事をすることができるという強い決意と、自分自身の力に対する絶対的な信頼を持っているということだ。フェルスタッペンの走行データを見た際、自分にはできないと感じたことがあるかと尋ねると、アルボンは次のように語っていた。

「もしできないと感じるくらいなら、僕はここにはいなかっただろうし、それが可能だと思わなければ、今やっていることはやらなかっただろう」

「確かに、いろんなことが彼に集中していたり、状況が大きく変わっていると感じることがあった。そして彼は、何も恐れることなくシーズンを過ごしていた」

「でも同時に、僕にだってできるということは間違いない。マシンに慣れ、そしてそれを機能させるだけだ」

 彼の当面の課題は、2022年のF1シートを手にすることになるだろう。そして全てのF1チームは、2022年から始まる新たな時代に向けた準備を進めている……そういう意味では、アルボンは今、適切なタイミングで、完璧な場所にいると言うことができるだろう。

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