スプリント予選レースはソフトで先行逃げ切りが有利? 前回アロンソが成功させたギャンブルにライバルが注目するワケとは
スプリント予選レースが初導入された第10戦イギリスGPで、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は、大胆にもソフトタイヤで走り切るという賭けを成功させた。2度目のスプリント予選レースが開催される第14戦イタリアGPでも、マネをするドライバーが出てくるかもしれない
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は、スプリント予選レースが初導入された第10戦イギリスGPで、大胆にもソフトタイヤで走り切るという賭けを成功させた。スプリント予選レースの2度目の開催となる第14戦イタリアGPでは、アロンソを例に「思い切りやってみよう」と考えるドライバーも出てくるかもしれない。
イギリスGPの舞台であるシルバーストン・サーキットはタイヤに厳しく、皆がミディアムタイヤでスタートするだろうと見られていた。しかし、アロンソはソフトタイヤを選択し、高いグリップ力を活かし1周目で11番手から5番手にまでジャンプアップ。その後徐々にソフトタイヤのデグラデーション(性能劣化)に苦しみ始めたが、アロンソは7番手でチェッカーを受けた。つまり、日曜日の決勝グリッドを大きく押し上げたわけだ。
このギャンブル的な戦略はライバルからも注目を集め、今回のイタリアGPでも同じ作戦を真剣に検討するチームが出てくるはずだ。実際、スプリント予選レースを前に行なわれたFP2では、多くのマシンがソフトタイヤでの周回を重ねデータを収集していた。
イタリアGPが開催されるモンツァ・サーキットは、ストレート成分は多いものの通常通りオーバーテイクは難しいとされており、温まりが良くコーナーの立ち上がりで優位なソフトタイヤにはその点で大きなアドバンテージがある。
そのためピレリのF1部門責任者マリオ・イゾラは、スプリント予選レースでは他にも選択肢はあるもののソフトタイヤを使うのは有効だと考えている。
「F1チームの大半がミディアムタイヤでスタートすると予想しているが、後方のドライバーの誰かしらはソフトタイヤで挑むかもしれない」と金曜日に行なわれたノックアウト方式の予選後に彼は語った。
「天候も良好で温かく、路面コンディションも問題ない。これまでの経験から知られていることだが、ソフトコンパウンド、つまり昨年で言えばC4タイヤはトラクション、そしてリヤタイヤを管理する必要がある」
「モンツァは非常にトラクションが重要なサーキットだが、横方向(の入力)はさほど重要ではない。そのためスプリント予選レースでは、ミディアムタイヤとソフトタイヤ(を履くマシン)が入り乱れるだろう」
ソフトタイヤを履いた場合でも、18周で行なわれるスプリント予選レースを走り切ることは可能だとイゾラは言う。ちなみに昨年のイタリアGPでは、ソフトタイヤを履いたドライバーたちは20周前後で1回目のピットストップを行なっている。
「スプリント予選レースは18周で行なわれるが、18周というと30分にも満たない。たから、本当に速いレースで、プッシュして走る必要がある」
「だからこそ、ソフトタイヤにトライして序盤で優位に立ち、最後の数周は守りの走りをすることができると思うのだ」
「ソフトタイヤが力を発揮するのは、主に低速シケインからの立ち上がりだ。フロントのグリップが優れているから、ブレーキングでも多少優位かもしれない」
Qualifying 13th for F1's Saturday sprint, Fernando Alonso is a prime candidate to repeat his Silverstone soft tyre gamble in Monza.
Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images
仮にスプリント予選レース中にセーフティカーやバーチャル・セーフティカー(VSC)が導入されるとなればレース中全力で走る周回数は減り、ソフトタイヤでスタートしたドライバーにとってはますます有利に働く可能性がある。しかし、イゾラはそのような状況にならずともソフトタイヤを容易に温存できると考えている。
「レース中は、全体的に(タイヤライフは)ある程度管理されている」と彼は言う。
「しかしタイヤのみならず、パワーユニット(PU)も温存しなければならない。PUのハイブリッドシステムを、予選の時のようにフルパワーで使えるワケではない」
「だからこそ、レース中はブレーキやPUなどもある程度管理する必要があるのだ」
「リヤタイヤのトラクションを維持できれば、ライバルからシケインでアウト側からアグレッシブに回り込まれても抑えることができる。そしてソフトタイヤでも18周のレースを良いパフォーマンスを保ったまま終えることができる」
「(ソフトタイヤを履いた場合)序盤でアドバンテージを得た後は、そのポジションを少しでも守らなければならない。一方、ミディアムタイヤでスタートした他のマシンは、レース終盤に近づくにつれ、アグレッシブに攻めることができるようになる」
「もうひとつポイントとなるのが、スプリント予選レースでは燃料満タンでスタートしないことだ。日曜日の決勝レースに比べて、はるかに軽いマシンということになる。これもまた重要な要素のひとつで、リヤタイヤを守るには好都合だ」
では、誰がソフトタイヤでのスプリント予選レースに挑むのだろうか? 先述にもある通りイゾラは「後方のドライバー」と言っていたが、「上位勢」もやらない理由はない。
イギリスGPでジョーカーを演じて見せたアロンソも、13番手からのスタートということも相まってソフトタイヤを選択する候補のひとりだ。
その他に挙げられるのがセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)だ。ペレスは予選でチームメイトのマックス・フェルスタッペンにトウを与えるべくアタックを犠牲にしており、9番手に終わっている。
仮にペレスがソフトタイヤをスプリント予選レースで履き順位を上げるとなれば、日曜日の決勝レースをより良い順位で迎えることになる。トップに近づけば近づくほど、タイトル争いをするフェルスタッペンを戦略面でサポートできることになる。
またスプリント予選レースのフロントロウを独占しているメルセデス勢は、新品のソフトタイヤをそれぞれ2セットずつ残している。新品のソフトタイヤを持っているのは、Q3に進出したドライバーの中では彼らだけ……逆にここで使わない手はないようにも思える。もしそれが現実のものとなれば、スプリント予選レースでは3番手のフェルスタッペン以下を突き放すレースを展開する可能性も十分にある。
6番手からスプリント予選レースに出場するピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は、好スタートを切るためにはソフトタイヤを選択する必要があると示唆している。
「シルバーストンで僕らが学んだことは、実際のレース1周目までに3回スタートが切られたことだ」と彼はmotorsport.comに語った。
「スプリント予選レースのスタートから1回目のオープニングラップ。日曜日(の決勝レース)に2度目。1周したところで赤旗があったから、その後3度目のオープニングラップを走った」
「実際に(3度目の)オープニングラップを終えた時点では僕の順位はこうだ。予選順位から4つもポジションを落としたと思う。この点については、特にこのレースフォーマットでは、改善する必要があるとはっきり分かったんだ」
「スタートが得意なチームなら、順位を上げるチャンスが2度やってくることになる。だからこそ、いつも以上に集中して取り組まなくてはならない。フェルナンドはシルバーストンでソフトタイヤを履いてスタートして、何人かのドライバーを驚かせたよね」
「その週末の後には、いくつか学ぶべき点が明確にあったと思う」
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