角田裕毅にアルファタウリが”絶大なる”期待を寄せる理由……今季最も経験豊富なルーキー

角田裕毅は、FIA F3とFIA F2をそれぞれ1年ずつで卒業し、渡欧3年目という脅威的な速さでF1に辿り着いた。その角田に、所属チームであるアルファタウリが絶大な期待を寄せている。

角田裕毅にアルファタウリが”絶大なる”期待を寄せる理由……今季最も経験豊富なルーキー

 今季7年ぶりに日本人ドライバーとしてF1デビューを果たす角田裕毅。彼は2019年に渡欧してFIA F3を戦うと、翌2020年にはFIA F2に挑戦。ルーキーイヤーながらランキング3位に入り、F1参戦に必要なスーパーライセンスを取得することができた。

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 ただ角田はまだヨーロッパでのレースは2シーズンしか経験しておらず、シーズン中にフリー走行でF1マシンを走らせるような余裕はなかった。そのため、F1での最初のシーズンとなる今年、角田はコースやチームとの働き方など、学ばねばならないことがたくさんある。

 しかしアルファタウリの全員が、すでに角田から非常に強い印象を受けており、大きな信頼を寄せているという。

Yuki Tsunoda, Alpha Tauri

Yuki Tsunoda, Alpha Tauri

Photo by: AlphaTauri

「彼の年齢を考えれば、彼は自分のしていることにとても集中していると思う」

 そう語るのは、アルファタウリのチームマネージャーであるグラハム・ワトソンだ。

「彼は自分に大いに自信を持っている。それはいいことだ。最初に会った時には、小さな”男の子”だと思った。でも自信に溢れていたんだ。傲慢ではないけど、自分のことを十分に信じている」

「先日の取材の際、彼はあるジャーナリストから『2021年の目標は?』と尋ねられた時、『ガスリーを倒すこと!』と答えたんだ。でもそれを非難することはできない。結局のところ、誰もが言うように、チームメイトとの差で判断されることになるからね。彼も、自分の仕事をしなければいけない。その道中には、楽しいこともあるかもしれない。でも若いドライバーたちは、キャリアを進めていくに連れて、様々なことを経験していかなければいけない。初めての大きな事故も、その中にはあるだろう。しかし彼は確かに、優れた才能を持っている。それは間違いない」

「フランツ・トスト(チーム代表)は、彼のことをとても気に入っている。ドライバーに関して話すことについては、彼はよく理解しているんだ。そして、ユウキが仕事を成し遂げることができる能力を持っているということを、すぐに見抜くことができた。そしてマシンに乗る度、ポジティブな兆候を見て取ることができた」

Pierre Gasly and Yuki Tsunoda, Alpha Tauri

Pierre Gasly and Yuki Tsunoda, Alpha Tauri

Photo by: AlphaTauri

 今シーズンの開幕前のテストは、わずか3日のみに絞られている。つまり、ひとりのドライバーがニューマシンで走ることができるのは、開幕前にわずか1日半のみ。経験の少ないルーキーにとって、これは非常に厳しい状況だ。

 しかしアルファタウリは旧型のマシンを使い、角田の経験不足を補うためのプライベートテストを実施している。

 ただかつてアルファタウリがトロロッソと名乗っていた頃には、なかなかこういうテストはできなかった。というのも、トロロッソ時代には使うパワーユニット(PU)のメーカーが度々変更されており、契約上旧型のPUを手にすることができなかったのだ。ただ、2018年以降はホンダのPUを使い続けているため、このテストが実施できているのだ。

Yuki Tsunoda, Honda Formula Dream Project, tests the AlphaTauri

Yuki Tsunoda, Honda Formula Dream Project, tests the AlphaTauri

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

「そのことは、我々にとってとてもうまく機能した。サーキットを走るということしかできないが、それでもユウキをマシンに乗せるチャンスを与えてくれたんだ」

「ユウキを成功させたいのは明らかだ。彼はとてつもない才能を持っていると思う。彼はヨーロッパでの経験があまりないにもかかわらず、F3の時点で強さを見せ、昨年はF2で(ミック)シューマッハーや(ニキータ)マゼピン、そして他の強敵を相手に、自分の力を示した。だから、彼はF1というチャンスを手にするのに値するドライバーだと思う」

Yuki Tsunoda, Toro Rosso STR14

Yuki Tsunoda, Toro Rosso STR14

Photo by: Davide Cavazza

 アブダビGP終了直後に行なわれた若手ドライバーテストで角田は、当時最新型のアルファタウリF1マシン”AT01”をドライブ。年が明けてからは、イモラとミサノで旧型のマシンを走行させた。そしてワトソン曰く、角田は走る度に変化していっているという。

「アブダビでは、彼は良い仕事をした。しかしその後も、マシンをドライブする度に、期待していた通りどんどん成熟し、F1に対する理解が深まっている。彼はまだ若干20歳の若者だ。でも実際、彼はとても良い仕事をしてくれている。バーレーンでのテストの際には、おそらく最も多くの走行距離を積んだルーキーということになるだろう」

Yuki Tsunoda, AlphaTauri AT01

Yuki Tsunoda, AlphaTauri AT01

Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images

「このテストでは、エンジニアが無線で、スイッチを変更するように指示する。つまり、不必要な変更をたくさん行ない、それが必要になった時のためのトレーニングをしているんだ。それに対処する準備をしている」

「それに加えて、異なるスプリングやダンパーを使ったり、車高やダウンフォースのレベルもいくつか試している。彼はマシンの感触、そして本来あるべきではない感触をどう感じるべきか、そして感じられないのかということを実感することができたはずだ。旧型のクルマでそれを試すことができるのは、非常に贅沢なことだろう。シューマッハーのようなドライバーだって、それを初めて経験するのは最初のレースということになるはずだからね。彼は先日フェラーリのマシンを走らせたが、ユウキに比べれば、経験値という面ではかなり少ないだろう」

「それは、ユウキにとって大きなメリットだ。ただ、それは我々にとっても大きなメリットになる。彼に良い経験を与え、彼が我々に対して話していることを信頼できるようになるからね。もちろん、我々が彼に対して言っていることについても同様だ」

Yuki Tsunoda, Honda Formula Dream Project, in his car

Yuki Tsunoda, Honda Formula Dream Project, in his car

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

 ルーキードライバーにとって最も難題となるのが、タイヤの特性を掴むということだ。旧型マシンを走らせることでは、最新のピレリF1タイヤを学ぶことはできないが、その一助にはなるはずだとワトソンは言う。

「若いドライバーがこのスポーツにデビューする時、最初の数周でタイヤを使い切ってしまい、交換することを求めて叫ぶということが多いように思う」

「テストで使ったタイヤはレース用ではない。でもピレリ製品であることに違いはなく、タイヤを使い切る方法と、タイヤを痛めずに最大限活用するための方法を理解する術を、彼に与えてくれたはずだ。そういう意味では、良い訓練の場だったと思う」

 ワトソン曰く、角田はF2時代にも、タイヤの使い方が非常に上手かったという。

「彼はおそらく、予選でタイヤをうまく使うことができた数少ないドライバーのひとりだったはずだ。彼の競争相手は、そんなことはできなかった」

「あと0.2秒引き出すことだって、できたんじゃないかと感じられる。私の考えは間違っているかもしれないけどね。ライバルたちの中で、そこまでできたドライバーはいなかった。そして、F1マシンでも同じ兆候を見ることができる。彼は、タイムを削るための”場所”を知っているんだ。これは良い兆候だよ」

Pierre Gasly and Yuki Tsunoda, Alpha Tauri

Pierre Gasly and Yuki Tsunoda, Alpha Tauri

Photo by: Scuderia Alpha Tauri

 彼はこの数週間、アルファタウリのファクトリーがあるイタリア・ファエンツァに滞在。チームとの仕事を密に行ない、新たなフィジオ(理学療法士)との関係も構築しているところだという。

「ファエンツァにはゴルフコースがあり、そこにはホテルも備わっている。ユウキはそこに滞在している」

 そうワトソンは言う。

「とても素敵なホテルだけど、彼はきっと退屈しているだろうね。それは間違いない!」

「彼のフィジオであるノエル・キャロルもそこにいる。ふたりは仕事を始めたばかりだけど、かなりうまくやっているようだ」

「ユウキはジムでのトレーニングがあまり好きじゃないみたいだね。それは私も知っている。彼は私に、直接そう言ったんだから。でも、残念ながらそれも彼の仕事の一部だ。だから対処しなきゃいけない」

「彼はホテルに滞在し、ファクトリーの中にあるジムで、1日3〜4時間汗を流しているんだ」

「長期的には、(レッドブルの本拠地であるイギリスの)ミルトンキーンズに住み、シミュレータを頻繁に使えるようにする必要があると思う。最近では、シミュレータ以外にファクトリーでやるべき仕事は、それほど多くないからね。だから、シミュレータがある施設の近くにいるのが理に適っている」

 急速にキャリアを積み、電光石火の勢いでF1デビューのチャンスを掴み取った角田裕毅。そしてその1年目のシーズンに向けて、着々と準備が整いつつある。その一挙手一投足には、日本のメディアだけでなく、海外からも注目が集まっている……開幕が近づくにつれ、その期待感は刻一刻と高まるのが感じられる。

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この記事について

シリーズ F1
ドライバー 角田 裕毅
チーム アルファタウリ・ホンダ
執筆者 Adam Cooper