F1
【分析】BYDのF1参入計画はホンモノか? しかし12番目の新チームとしてデビューするにはあまりに大きな障壁が
BYDがF1に参戦するという噂が挙がっている。それが実現する可能性はあるのだろうか? そしてクリスチャン・ホーナーが、F1復帰を目指して活発な動きを見せている。
Filip Cleeren Roberto Chinchero
公開日時: 2026/05/29 2:33
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Lewis Hamilton, Ferrari
写真:: Lintao Zhang / LAT Images via Getty Images
近年急速に人気が高まっているF1。それに参入しようとしているのが、中国のEVメーカーであるBYDである。しかし人気の上昇に伴って高騰するF1チームの評価額、そして参入する上での複雑さを考えると、実現はそう簡単なことではないかもしれない。
BYDのアメリカ、欧州、中東担当エクゼクティブ・バイスプレジデント兼CEOであるステラ・リー氏は、F1こそがBYDのブランドイメージを高める絶好の舞台であると考えていることを隠していない。
BYDがF1参入を目指す上での道は、現実的には3つある。
ひとつ目は、2027年からアルピーヌF1の命名権を取得したグッチのようなタイトルスポンサーシップ、あるいはアルファロメオがザウバーで数年間行なったような、チームのブランドアイデンティティを完全に掌握することである。ふたつ目は既存チームを買収すること、3つ目は12チーム目としてゼロから立ち上げることである。
今年の中国GPの前後には、F1とBYDは参入に向けて予備的な協議を行なったと言われている。motorsport.comが入手した情報によれば、リー氏が来週行なわれるモナコGPの会場を訪れ、週末を前にF1の幹部と会談する予定であるという。
しかしまだ初期の情報収集段階であり、BYDが今後どんな行動をとるかという決定には程遠い状況であるようだ。
Photo by: Red Bull Content Pool
しかしこの数週間、BYDのF1参戦計画には、元レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーが関与しているという情報もある。ホーナー元代表は、レッドブルを離れた後様々なチームと接触していると伝えられており、その最新の事例がBYDということだ。
しかもホーナー元代表は、カンヌ国際映画祭でリー氏といるところを写真に撮られた。これは綿密に計画されたPR戦略であるように見えた。BYDのF1参戦計画への関心を高めるため、あるいはホーナー元代表の存在感を示し、彼が関与している他のプロジェクトにプレッシャーをかけるためだったかもしれない。
ホーナー元代表は、オトロ・キャピタルが保有するアルピーヌF1株式24%の取得を目指すコンソーシアムにも参加している。なおメルセデスもこのオトロ・キャピタルが持つアルピーヌの株式取得を狙っているとされる。この他にも、BYDなどとF1参戦を争う他のブランドも、株式の取得を狙っているようだという情報もある。
いずれにしても、タイトルスポンサーシップという形でF1に参入するのは、前述した3つの選択肢の中では最も現実可能な路線であると言える。しかし最終的な支配権を持つことを目指すならば、既存チームを完全に買収するか、新チームを設立するしかない。しかしこのふたつの選択肢を実現するのは、厳しい道のりであると言える。
最近、複数の投資ファンドと大手の自動車グループが、20億ドル(約3200億円)を超える買収提案を、複数のチームに持ち掛けたという話がある。しかしこれはいずれも、丁重にお断りされてしまったようだ。
20億ドルという金額は、ほんの3〜4年前であれば、トップチームの評価額をはるかに上回る金額だった。しかし今では、その金額を提示されても、誰もが売却に踏み切ろうとしない。しかも今後数年の間に、チームの評価額はさらに上昇すると見込まれている。完璧な売却時期を焦って見誤り、数十億ドルにもなるであろう損失を被るリスクを、誰も冒したくはないのだ。
12番目の新チームを創設するという構想は、既存のチームを買収するよりもさらに複雑だ。F1は最近、ようやくキャデラックのF1参戦を承認したばかり。しかもその11番目の参戦チームが増えたことで、商業面や物流の面にどれほどの影響が及んだのかはまだ完全には把握されていない。しかも例えばモナコやモントリオールのような手狭なパドックの面積を増やすことなどできない。その上で、参入することで他チームが受ける可能性がある損失を埋めるための保証金は、かなり高額になると予想される。
Photo by: Guido De Bortoli / LAT Images via Getty Images
BYDには十分な資金力がある。しかしカナダGPのパドックでの関係者の話によれば、現在のF1は12チーム目を迎えるだけのガバナンス体制は整っているものの、まだそのための適切な時期ではないという考えの方が一般的であるようだ。
まもなく開催されるモナコGPは、今後の方向性を見極める手掛かりにはなるかもしれない。しかし現時点では、BYDが本格的にF1参入の計画を進めるという確固たる証拠はない。これは関係者全員に多大な宣伝効果をもたらした、入念に仕組まれた憶測に過ぎないように見える。
このことは、今のF1は完全な売り手市場だということを示した事例だと言える。しかし同時に、巨大な中国市場からの関心を集めていることの裏付けにもなった。
F1のステファノ・ドメニカリCEO、そしてFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長は、この中国市場を開拓したいと考えているのは間違いないだろう。BYDの参入が実現すれば、その強力な後押しになるはずだ。
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