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海外F1記者の視点|大きく躓いたアストンマーティン・ホンダ。しかし近い将来、ドライバーたちにとって魅力的な選択肢になる可能性

2026年のF1シーズン前半戦を総括する際、明確な敗者をひとつ挙げるとすれば、アストンマーティン・ホンダは間違いなくその候補と言えるだろう。

Ronald Vording

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編集: 2026/08/08 2:47

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Jak Crawford, Aston Martin, Test Pirelli all'Hungaroring

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 F1ハンガリーGPで今季初めてとなる大規模アップデートを投入する前、アストンマーティンのチーム代表であるエイドリアン・ニューウェイは、それまでのシーズンは悪夢だったと認め、ドライバーたちはまともにレースすることができなかったと認めた。当時、今季から新規参入したキャデラックにも、大きく後れを取る状況だったからだ。

 もちろん、望ましい状況とは言えない。しかも、そうする必要は一切なかったはずだ。

 フェルナンド・アロンソは昨年、今季のマシンのパフォーマンスが高ければ、大活躍して有終の美を飾り、もしそうならなければもう少し現役を続けると語った。そのアロンソの言葉からすれば、今季限りで引退するということは、到底できないだろう。

 とはいえアストンマーティン・ホンダは、成績以上に魅力的なチームだ。たしかにリザルトは惨憺たるモノだが、その背景は素晴らしい。そしてその背景こそが、このチームに対する期待を過剰に高めた。

 シルバーストンには最先端のファクトリーが完成し、最新の風洞もここに併設されている。天才的デザイナーのエイドリアン・ニューウェイも加わり、ホンダとのワークスパートナーシップも組んだ。これらが揃えば、新レギュレーション下ですぐに好成績を収められると、安易に考えてしまった。

 至極の要素は揃っているものの、それをうまく融合させるには、長い時間が必要だったのだ。

 ニューウェイは、アストンマーティンはF1で最高の設備を備えていると述べた。しかし、その設備を活用するには、長い時間がかかるとも強調した。

 ニューウェイによれば、それは彼自身の仕事にも影響を与えたという。そして彼の始動時期が制限されたこと、そして風洞の稼働も遅れたことから、常に後手に回らざるを得なかったのだ。

「ブラックリーの風洞で短期間テストして、自社の風洞が完成し次第移動するよりも、自社の風洞が稼働するまで、実験の開始を2週間延期するという決断を下した。それが正しかったかどうかは別として」

「そういう経緯だったのだ。準備にかなりの時間を要した。そういう意味では、全てが後手後手に回ってしまったと言える。でも、できることをやるしかない。とにかく前に進むしかないんだ」

■ホンダも予想以上の困難に直面

Honda won the F1 world title with Red Bull, will it do the same with Aston?

Honda won the F1 world title with Red Bull, will it do the same with Aston?

Photo by: Alastair Staley / LAT Images via Getty Images

 ホンダも、予想以上の困難に直面した。ニューウェイはオーストラリアGPの際、ホンダのF1プロジェクトの状況を、2025年の11月になって初めて知ったと語っていた。これほどの大規模プロジェクトにも関わらず、それが本当だとしたらまことに信じがたいものだ。

 他のF1のPUメーカーと比べると、ホンダは特殊な体制とも言える。F1参戦中のPUメーカーのほとんどは、専門の別会社のような組織を立ち上げ、そこでPU開発に専念する。しかしホンダの場合は、ホンダ・レーシング(HRC)というレース専門会社がPUの開発・製造を担っているものの、それを担当するスタッフは市販車開発や他の先進技術開発の経験もあり、逆にF1プロジェクトを離れて他のプロジェクトに異動することもある。いわゆるジョブローテーション方式だ。

「ホンダは非常に特殊な会社で、市販車のプロジェクトとF1プロジェクトの間で、スタッフが常に異動する形になっています」

 ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアの折原伸太郎は、最近のインタビューで語っている。

「昨年は、新しく採用した人材ではなく、市販車プロジェクトから多くの優秀な人材が加わり、レッドブルとのプロジェクト時代から残ったメンバーもいます」

「そしてこれまでと同様に、F1プロジェクトで人材を育成するということに注力しています。しかし、まだF1で成功するレベルには不十分であることにも気付きました」

 ホンダはプロジェクトの人材を拡充するなど、対策を施してきた。しかし状況を完全に克服するには時間がかかるものだ。

■ハンガリーGPでのアップデートが復活の兆し?

Aston brought what was essentially a 'B-spec' chassis to Hungary

Aston brought what was essentially a 'B-spec' chassis to Hungary

Photo by: Alastair Staley / LAT Images via Getty Images

 シーズン前半の結論として、あらゆる面で期待が高かったこと、そして成功への道のりは当初の想定よるもはるかに複雑であることが判明した。しかし、成功のために必要な要素は全て揃っている。新たなファクトリーはいずれ成果を挙げるだろうし、ホンダは2027年もしくは2028年のはじめには、F1で再びトップに戻れると確信している。ニューウェイも常に進歩の兆しを見せる。

 その成果はハンガリーGPで顕著に現れた。AMR26の最初の大規模アップデートが投入され、明らかな進歩を遂げた。もちろん、アストンマーティン・ホンダとして目指すレベルに到達できたわけではないが、それでもめざましい前進であった。

 イギリスGPではトップのマシンと比べて、レースペースが1周あたり5秒も遅れていたアストンマーティンAMR26。しかしハンガリーでは、この差が2秒にまで縮まったのだ。イギリスGPでは他のチームがアップデートを投入したからと言う側面もあるが、それ以外のグランプリでも1周につき3〜4秒遅れていたことを考えると、2秒遅れというのは大きな前進と言って差し支えないだろう。しかもキャデラックだけではなく、一気にウイリアムズやハースをも上回り、アルピーヌに僅差のところまで接近している。

 少なくともこの進歩は、トンネルの先に光明が見えていることを示唆している。

 アストンマーティンAMR26は実に過激なデザインのマシンだ。フロントサスペンションは、アッパーアームの後脚がありえないほど後方まで伸びているのももちろんであるが、ロワアームはウイッシュボーンとは名ばかりの、2本のアームが揃って後方を向く、今までには見たこともないようなレイアウトになっている。リヤサスペンションもリヤウイングのステーにアームが取り付けられるという革新的なモノになっているし、サイドポンツーンのアンダーカットも実にアグレッシブである。

 ハンガリーでそのパフォーマンスを一端は見えたものの、この目を見張るコンセプトを持つマシンには、さらなる改善の余地が残されているはずだ。ニューウェイが諦めずにこのマシンの改良を続けているということも、彼が選んだ道に、まだ秘められた可能性を見出していることを示唆している。

 夏休み明け初戦のオランダGPには、ホンダがADUO対象となったことで投入した、パフォーマンス向上を目指したアップデート版PUが投入される予定だ。これによって大きく前進を遂げることができれば、さらなる希望が湧いてくるだろう。そしてオーナーのローレンス・ストロールが辛抱強く待ち続け、噂されているようにジョナサン・ウィートリーのような有能なチーム代表を迎え入れることができれば、ニューウェイはさらにマシンを改良するための業務に専念できるはず。そうなれば、残りのピースもハマっていくことだろう。

■ドライバーたちにとって魅力的な選択肢に?

Aston will bring an upgraded engine to Zandvoort at the end of August

Aston will bring an upgraded engine to Zandvoort at the end of August

Photo by: Simon Galloway / LAT Images via Getty Images

 アストンマーティン・ホンダのプロジェクトは、確かに予想よりもかなり遅れている。しかし確かな可能性もある。

 アロンソはハンガリーGPの際、自信満々にこう語った。

「時間はかかるだろうが、エイドリアンが遅かれ早かれ、グリッド上で最高のマシンを作り上げることに、僕は何の疑いも抱いていない」

「パワーユニットについても、同様に確信している。ホンダが問題を解決するのは時間の問題だ。だって彼らは過去40年を見ても、レース常にそうしてきたからだ」

 45歳のアロンソが、その恩恵を享受できるまで現役でいられるかどうかは別問題だ。しかしもし彼がいなくなったとしても、多くのドライバーがアストンマーティンのプロジェクトに少なくとも興味を持つことになるだろう。かつてトップチームで活躍しながら、今は下位チームに留まっている、例えばカルロス・サインツJr.のようなドライバーや、トップ4チームの移籍市場が活発になった時に立場が不利になるドライバーにとっては、実に魅力的なはずだ。

 2025年の初頭には、マックス・フェルスタッペンでさえアストンマーティンとコンタクトしているのではないかと報じられた。今年の成績を見れば、それがいかに非現実的なモノだったのかと言えるが、近い将来にはそんなドライバーたちにとってさえ魅力的な選択肢となることもあるかもしれない。

 確かにスタートでは大きく躓き、悲惨なものとなった。しかし、忍耐は美徳である。そしてアストンマーティン・ホンダのプロジェクトは時を経て、その美徳を証明する事例となるかもしれない。

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