フェラーリにとって戦略は”弱点”ではない? ビノット代表がチームの戦略部門を擁護する理由

2022年シーズンのF1前半戦は、フェラーリの戦略決定が非難を浴びることもあったが、チーム代表のマッティア・ビノットはこの状況に対して決して悲観的になってはいないようだ。

フェラーリにとって戦略は”弱点”ではない? ビノット代表がチームの戦略部門を擁護する理由
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 2022年シーズンのフェラーリは、新レギュレーション導入に伴い大幅に戦力アップ。全チーム中最速とも言われるマシン『F1-75』を手にしたが、チャンピオンシップをリードする存在にはなれていない。

 その要因はいくつかあるが、信頼性の問題に加え、レース戦略でレッドブルに上回られている印象が強い。シャルル・ルクレールは、13レースでポールポジションを7回獲得していながら3勝止まり。対するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、ポールポジションは3回ながら8勝をマークしている。フェラーリが速さを結果に繋げることができていないのは明らかだ。

 しかしながらフェラーリのチーム代表であるマッティア・ビノットは、改善の余地は常にあるとしながらも、戦略部門を強く擁護。適切な人材を適切に配置していると強調した。

 これは今シーズン、フェラーリを激しく批判してきた一部のF1ファンにとっては、驚きのスタンスといえるかもしれない。

Charles Leclerc, Ferrari F1-75, Carlos Sainz, Ferrari F1-75

Charles Leclerc, Ferrari F1-75, Carlos Sainz, Ferrari F1-75

Photo by: Ferrari

 ウエットコンディションでスタートしたモナコGPでは、ルクレールがレースをリードしていたにも関わらず、路面コンディションを読みきれず。タイヤ交換のタイミングが早すぎたり、あるいは後手に回ってしまうなど、レッドブル勢にしてやられてしまった。結局このレースでフェラーリは、カルロス・サインツJr.の2位が精一杯。地元戦でもあったルクレールはフェルスタッペンの後塵を拝し、表彰台も獲得できなかった。

 イギリスGPでは、セーフティカー出動時にルクレールをピットインさせなかったことで、タイヤの面でアドバンテージがあるライバルたちに抜かれ4位。優勝するチャンスがありながら、またも表彰台を逃した。

 そしてハンガリーGPでは、ハードタイヤのパフォーマンスを引き出すのが難しいコンディションであることを読みきれず、予定外のピットインを行なったことでもポジションを下げ、6位に終わっている。

 チームメイトのサインツJr.に関しても、フランスGPのレース中無線で、戦略を二転三転させているような無線が放送された。これによってフェラーリのストラテジストが混乱している印象を与えたのも、批判の原因のひとつだろう。

 ビノットは、フェラーリはもっとうまくやれるはずだと語り、特にモナコGPでの失敗から、ピットウォールでもっとうまく情報を得られるようなシステムの変更案について、教訓を得たという。

 しかし、フェラーリの戦略に根本的な問題があると考えるのは早計だとビノットは話す。なぜなら、レース中のタイヤ戦略でライバルのレッドブルに勝ったこともあるからだ。

「フェラーリには常に自分たちを向上させる方法があると思う」

 ビノットは、motorsport.comの独占インタビューにそう答えている。

「完璧なんてことは決してない。だから、エアロ、シャシー、パワーユニット、戦略、その他何でも自分たちを改善する必要があるのは間違いない」

「でも、そうは言っても、戦略に関しては素晴らしいチームを持っていると思うし、それが弱点だとは思っていないよ」

Lewis Hamilton, Mercedes W13, battles Charles Leclerc, Ferrari F1-75 and Sergio Perez, Red Bull Racing RB18

Lewis Hamilton, Mercedes W13, battles Charles Leclerc, Ferrari F1-75 and Sergio Perez, Red Bull Racing RB18

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

■ハミルトンの”アブダビGP”との比較

 ビノット代表は、戦略が正しかったのかを適切に評価するためには、最終的に物事がどうなったかだけで判断しないことが重要であり、当時ピットウォールが入手できた情報を活かして、正しい判断を下すことができたかどうかを確かめる必要があると言う。

 F1では、後から考えた場合には判断ミスのように思えても、判断を下したその時には、間違いなく正しい決断だったという場合がよくある。例えば、ライバルチームが自分達の動きに対してどう反応するかを見極めるのは、実に難しいことである。

 前述の通り、今年のイギリスGPでセーフティカーが出動した際に、フェラーリはルクレールをステイアウトさせることを選択した。この判断は、昨年最終戦でメルセデスのルイス・ハミルトンが、セーフティカー中にピットインせず、リスタート後にフェルスタッペンに攻略され、優勝だけでなく同年のタイトルをも逃したという事例によく似ている。

 レースをリードしているドライバーにとって、すぐ後方に何台かのマシンがいる場合には、セーフティカー中であってもピットインするという決断を下すのは難しい。

 もし自分がピットインし、後方のマシンがステイアウトすることになれば、自分はコース上でのポジションを失うことになってしまうからだ。当然新しいタイヤを履くため、ペースは上がる。しかしながら先行されたマシンを抜くことができなければ、ただリードを無駄に犠牲にしたようにも見えてしまうからだ。

 一方でピットインしなければ、後方のライバルがピットインすることもある。そうなれば後方のマシンが新しいタイヤを履くことになり、オーバーテイクされてレースに負けてしまう。そうなれば、「タイヤを交換しなかったのは間違いだ」と叩かれてしまうことになるわけだ。

 今年のイギリスGPのルクレールと、昨年のアブダビGPのハミルトンは、いずれも後者の典型例だった。

 ビノット代表は、こうした2つの例でドライバーは勝利を失うことになったが、その時の判断は正しかったと主張する。

「外から見ていると、マックスがチャンピオンを獲得したわけだ。しかし、マックスの立場では、常にハミルトンと逆のことをしただろう。もしハミルトンがピットインしたら、マックスはステイアウトし、レースをリードする立場になっていたはずだ。そうなったら、どんな形でレースが終わることになっただろうか? それは誰にも分からない」

「それと同じように、シルバーストンでシャルルがピットインして、ルイスが変えたばかりのタイヤでステイアウトしていたら、レースはどんな形で終わっただろうか。それも誰にも分からない」

「だから、後から考えても、答えは分からないのだ。ちなみに当時(アブダビGPの時)、メルセデスの決断について議論した人は誰もいなかった」

「シルバーストンでの我々の決断に対しては、誰もが議論の余地があると信じているんだ」

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■フェラーリにとって戦略は”弱点”ではない

Ferrari mechanics cheer as Charles Leclerc, Ferrari F1-75, crosses the line

Ferrari mechanics cheer as Charles Leclerc, Ferrari F1-75, crosses the line

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

 ビノット代表はシーズン前半を振り返り、それぞれの決断についてレース後に分析したものの、失敗だったと結論付けられたことはなかったと語った、

「モナコ、シルバーストン、そしてポール・リカールを失敗とみなす向きもあるかもしれない。しかし、私はそれを問題だとは考えていない。我々は正しい決断を下したと思っている」

 そうビノット代表は説明する。

「今のところ、我々の決断が間違っていたと確信するところはない。我々の決断は正しかったと、今でも確信している。不運なこともあるが、間違ったことではない」

「そして我々の戦略チームと見ると、彼らは時に、他のチームよりも素晴らしい判断を下している」

「オーストリアでは正しい戦略を実行したが、他のチームはそうではなかった。フランスでは、シャルルがミスをする前にはおそらく最高の戦略を立てていたんだ」

「フランスでは、他のチームはミディアムタイヤに苦労していた。しかし我々は、2セットのミディアムタイヤを決勝で使えるという勇気があった。そのためには強いだけでなく、勇敢である必要もあるんだ」

「全体的に我々は、良いチームを持っている。戦略が弱点だとは思っていない」

 
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