キャデラック、”候補”とされていた若手やアメリカ人ドライバーが選ばれなかったのはなぜなのか?
キャデラックF1チームが発表したドライバーラインアップは、競争力のあるアメリカ人ドライバーがF1に参戦するためには課題があることを改めて示した。
Sergio Perez, Red Bull Racing, 3rd position, and Valtteri Bottas, Mercedes, 1st position, talk in Parc Ferme
写真:: Steve Etherington / Motorsport Images
キャデラックF1チームは、2026年からのF1参戦開始に向けて、バルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレスという、シートを失っていたものの経験豊富なベテランを起用することを決めた。
『ミック・シューマッハーが冷遇された』——これは、キャデラックのドライバーラインアップ決定のニュースに対する、やや突飛ながらも注目を集める見出しのひとつだ。
確かにミック・シューマッハーはフランコ・コラピント、周冠宇、フェリペ・ドルゴビッチ、ジャック・ドゥーハン、フレデリック・ヴェスティ、ジャック・クロフォードらと共にドライバー候補として検討されていたと見られている。
しかしチーム代表のグレアム・ロードンは繰り返し「リストなど存在しなかった」と述べており、彼らはさながら、ドライバー市場をウインドウショッピングしていたかのようにも捉えられている。
アメリカのユーモア作家PJ・オロークはかつて『年齢と狡猾さは若さと無邪気さとひどい髪型に勝る』という作品集を出版したが、ボッタスはこれには当てはまらないだろう。一方でペレスはと言うと、経験豊富な上に、(現時点では)ボッタスよりも落ち着いた髪型をしている。
ふたりの実力はすでによく知られている。一方で、ミック・シューマッハーがよくクラッシュを喫し、高額な修理費がかかる傾向にあるというのも、F1パドックの共通認識だろう。
Mick Schumacher, Haas VF-22 crash
Photo by: Steven Tee / Motorsport Images
ボッタスは、チームメイトと良好な関係を築き、信頼できるドライバーだと評価されている。ただ、ペレスとのペアリングには若干の疑問符が残る。2021年ハンガリーGPではスタートでミスをしたボッタスが、ペレス(と数名)を弾き飛ばしたことがあり、昨年アブダビでは、ふたりのF1最後の舞台となるはずだったレース中に接触している。
したがってキャデラックの決定は、保守的な判断と、収益性の高いラテンアメリカ市場におけるペレスの商業的価値の魅力に左右されたと結論づけるのは容易だろう。
だがCEOのダン・タウリスは、キャデラックが両者について十分な調査を行ったことを明確にした。ボッタスが依然として十分な速さを保っているか、そして劣悪なマシンがレッドブルでのペレスの悲惨なラスト数ヵ月にどれほど影響したかという疑問に対処したという。
「我々は過去の経験やザウバーにおける状況、そしてバルテリがそのマシンでどうパフォーマンスを発揮したかを長時間検討した」
タウリスは発表当日のメディア向け電話会議でそう述べた。
「加えて予選パフォーマンスとレースパフォーマンスの比較も行なったんだ。特に複雑なシナリオだったのはレッドブルだろう? これは興味深い物語として注目してきた。実質的にひとりのドライバーを中心に構築されたチームでありながら、ふたりのドライバーを抱えている。明らかに、そのセカンドシートでは他のドライバーは誰も良い結果を残せていない。そうした観点から、我々はレッドブルの関係者と多くの時間をかけ話し合い、情報とフィードバックを得たのだ」
これは少なくとも表向きには、彼らの持つ経験が”国境の南側”での可能性を上回るというメッセージだ。
「チェコとバルテリは、商業的観点、スポンサーシップの観点から、F1サーキットに長年在籍していることで非常に強い支持基盤を持っていると思う」とタウリスは付け加えた。
「しかし、それは実際には要因ではなかった。彼らの経験こそが決め手だった」
キャデラックは名目上アメリカ企業であるため、たとえF1事業が英国の「モータースポーツ・バレー」で運営されるとしても、熱狂的なファン層以外では、なぜアメリカ人ドライバーが起用されなかったのかという疑問が当然生じるだろう。ジャック・クロフォードの名前が”リストではないリスト”に載っていたと見られるが、彼は選ばれなかった。
現在F2のDAMSでレースを戦い、ランキングでレオナルド・フォルナローリに次ぐ2番手につけるクロフォードは、同カテゴリー3年目を迎えているため、2026年にはステップアップを目指す必要がある。
しかし彼はアストンマーティンのドライバー育成プログラムにも参加しており、シミュレーション作業を通じて同チームの2026年F1プロジェクトに深く関わっている。
Jak Crawford, Aston Martin F1 Team looks on during the F1 Grand Prix of Bahrain
Photo by: Bryn Lennon / Formula 1 / Getty Images
仮にクロフォードが今年F2チャンピオンを獲得したとしても、2022年F2王者フェリペ・ドルゴビッチと同じ運命を辿るリスクがある。ドルゴビッチはアストンマーティンでほぼ3シーズンにわたりベンチを温めるだけの状態が続いている。ご存知の通り、彼もキャデラックの”リストではないリスト”に名を連ねていた。
キャデラックがクロフォードを見送った理由のひとつは、ウイリアムズがローガン・サージェントで経験したような軌跡を辿ることを恐れたためと理解されている。つまり、扱いにくいマシンが自信に満ちた若者を瞬く間にダメにしてしまった事例だ。
経験がそれほど必須条件なら、アレックス・パロウやパトリシオ・オワードらにアプローチすべきでは? 彼らはアメリカ生まれではないが、米国で知名度が高くF1挑戦を熱望している実績あるインディカードライバーだ。
パロウは2022年にマクラーレンで旧型マシンのテスト走行を数回行ない、アメリカGPではFP1にも出場した。しかし同チームの彼への熱意は冷めている。マクラーレンとの巨額訴訟がネックとなっているようだ。それ以来、F1界隈で彼の姿はほとんど見られない。レッドブルとの噂が流れたものの、本人もそれを否定している。
Alex Palou, McLaren F1 testing at Barcelona
Photo by: Monaco Increase Management
オワードもマクラーレンをドライブした経験があり、直近では昨年母国メキシコGPのFP1に出場した。ただしこれはPR活動的な側面が強かった。新型空力パーツの評価が主な任務で、速度を出しすぎないよう明示的に警告されていたからだ。
F1チームがインディカーのドライバーに本格的な機会を与える覚悟がなければ(異なるマシン特性に順応するための十分なテストと時間が必要になるだろう)、アメリカを拠点とするトップレーサーがカテゴリーを移る見込みは薄いだろう。
これは生まれ持った資質というより、育ちの問題と言える。F1参戦を目指すアメリカ人ドライバーは、幼い頃から進路を選択し、アメリカではなくヨーロッパでレースキャリアを積む必要があるからだ。
将来的にどうなるかは別として、アメリカ人ドライバーがF1に参戦するのにはもう少し時間がかかりそうだ。
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