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コラム

F1にファステストラップポイントは不要? 現行システムがグランプリに生み出す“歪み”

F1では現在、レース中のファステストラップに対してボーナスポイントが付与されるシステムが導入されているが、英国Autosportの編集長はこれに異議を唱えている。

Valtteri Bottas, Mercedes W12

Valtteri Bottas, Mercedes W12

Glenn Dunbar / Motorsport Images

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 F1では2019年より、レース中のファステストラップを記録したドライバーに1ポイントを与えるシステムが導入されている(トップ10フィニッシュのドライバーのみ対象)。これはかつてのF1でも導入されていたものだが、日を追うごとにこれが悪しきアイデアであり、取りやめるべきものであることを示す証拠が出てきている。

 レース中にファステストラップを記録することは、無意味とまでは言わないが、その統計を見る上では注意が必要だ。例えば、1980年代〜1990年代にかけてのライバル、アイルトン・セナとアラン・プロストのポールポジション獲得回数が65対33であるのに対して、ファステストラップの獲得回数が19対41なのは、ひとえにふたりのレースウィークに対するアプローチが異なるからである。

 また、現アルファロメオのキミ・ライコネンは歴代3位となる46回のファステストラップを記録している。これは確かに2000年代前半のマクラーレンの速さのおかげでもあるが、その半分近くがフェラーリ時代に優勝争いとは全く関係のないところで記録されたものだ。

 以上のように、ファステストラップはそのドライバーやマシンの純粋な速さ、強さとはあまり関係のない指標に見えるが、なぜ2019年からファステストラップポイントを約60年ぶりに復活させることになったのだろうか。

 このシステムの導入が決まった時、F1の競技面を取り仕切るロス・ブラウンは次のように語っていた。

「我々はFIAと共に、スポーツとしての整合性を保ちながらもショー的要素を向上できるアイデアや解決策について検討してきた」

「我々は世界中の数多くのファンを対象にした調査の結果に応える形で、この解決策を何ヵ月も前から検討していた」

「ドライバーが無線で、今誰がファステストラップを記録しているのか尋ねる場面を、これまで聞いたことがあるだろうか? これから(ファステストラップ)は単なる記録や名声だけでなく、レース終盤をさらに面白くさせるためのモチベーションになるだろう」

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Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 このアイデアの実現によって、チームとドライバーの戦い方が変わることは避けられなかった。その顕著な例だったのが先日行なわれた第3戦ポルトガルGPで、優勝を争う3人のうち、ふたりが終盤にボーナスポイント狙いのピットストップをして、ソフトタイヤに交換したのだ。

 そのレースではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が最終ラップに一旦は最速ラップを記録したが、トラックリミット違反のためにそのタイムが抹消された結果、バルテリ・ボッタス(メルセデス)がボーナス1ポイントをゲットした。一方首位を走るルイス・ハミルトン(メルセデス)はタイヤ交換のリスクを回避し、そのまま独走状態でチェッカーを受けた。こういったシチュエーションは第4戦スペインGPでも起きていた。

 ファステストラップポイントが復活して以降の43レースの内、その3分の1以上にあたる17レースで、レース終盤に追加のピットストップをしてフレッシュタイヤに交換したドライバーがボーナスポイントを手にしている。そういった作戦を採るチームやドライバーを批判したい訳ではない。後方とのギャップが十分にある場合、1ポイントでも多く持ち帰るためにピットに入るのは当然のことだ。

 しかし、F1は常に実力主義であることが理想だ。現行のルールでは、ファステストラップがそれにふさわしいドライバーに与えられないケースも多い。

 余談にはなるが、優勝回数、ポールポジション回数でミハエル・シューマッハーの記録を破り、チャンピオン回数でもシューマッハーを超えようとしているハミルトンは、ファステストラップのみ彼の記録に追い付けていない。2021年モナコGP終了時点でシューマッハー77回、ハミルトン55回と、未だ大きな差がついている。

 2019年に当時レッドブルのピエール・ガスリー(現アルファタウリ)が獲得した2度のファステストラップポイントも、先述の“実力主義”からはかけ離れたものであった。ガスリーはチームメイトらをはじめとする先頭集団についていけず、前にも後ろにも大きなギャップができた結果、いわゆる“フリーストップ”が可能となりファステストラップ獲得に繋がった。言い換えれば、ガスリーは良い仕事ができなかったことで追加のポイントを手にするチャンスを得たのだ。

 こういったシステムはシンプルに“ゲーム”の一部になっていると言えばそれまでだが、本来ファステストラップを獲得できるはずのドライバーの妨げになっているのではないだろうか。これはチャンピオンシップ争いにおいても公平とは言えず、ブラウンの言うような「スポーツとしての整合性」を担保できていないように思える。

Sergio Perez, Red Bull Racing RB16B, makes a pit stop

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Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 先にも述べた通り、ファステストラップポイントが適用されるのはトップ10でフィニッシュしたドライバーに限られる。これはポイント圏外のドライバーがノーリスクでファステストラップ狙いのピットストップをしてくるのを阻止するための措置だと思われるが、真の“最速男”を否定するような事態にもなりかねない。

 例えば、2019年のブラジルGPでボッタスはファステストラップを記録したものの、トラブルによってリタイアに終わったことでポイントは獲得できなかった。また、同年のバーレーンGPで首位走行中にトラブルに見舞われたシャルル・ルクレール(フェラーリ)のマシンが完全にストップしてしまっていたら、彼のファステストラップへの対価はゼロとなっていた。他の誰よりも価値あるパフォーマンスを見せていたにも関わらずだ。

 もしファステストラップ狙いのピットストップをしたドライバーがタイヤ交換でトラブルなどに見舞われてレースを失うことになれば、それは確かにドラマチックだが、そうなってくるといよいよ”F1のあるべき姿とは何なのか?”という話になってくる。最終ラップに首位のハミルトンがまさかのパンクに見舞われた昨年のイギリスGPでは、2番手を走るフェルスタッペンがファステストラップ狙いの追加ピットストップをしていなければ、優勝できていたかもしれない。

 確かにそれも“ゲーム”の一部だと捉えることもできるが、こういったケースが場合によってはチャンピオンシップの行方を左右する可能性もある。2014年の“最終戦ダブルポイント制”ほど酷いものではないが、実際にファステストラップポイントが王座争いに影響した前例がある。

 1958年シーズンのF1では、フェラーリのマイク・ホーソーンとクーパーのスターリング・モスが激しいタイトル争いを演じていたが、モスはポルトガルGPでサインボードを読み間違えた結果、トップを独走していたにも関わらず、ホーソーンのファステストラップ更新に反応できず、ライバルに1ポイントを献上してしまった。

 この年、ホーソーンはモスを1ポイント差で下してチャンピオンを獲得した。つまりタラレバにはなるが、もしポルトガルGPのファステストラップポイントがモスの手に渡っていれば、モスが今も『無冠の帝王』と呼ばれることはなかったことになる。熱狂的なホーソーンファン以外は、これをF1史に残る不公平だと考えている。

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Photo by: Motorsport Images

 予選では純粋なスピードが求められるため、最速のマシンに乗った最速のドライバーがポールポジション回数を積み重ねることができる。一方、決勝レースではさらに複雑な要素が絡んでくるため、いわゆる“レース巧者”が勝利を勝ち取っていくことになる。しかし、ファステストラップはそのどちらでもない。最速のマシンを持つものが有利という特性がありながらも、レースの展開にも左右されてしまうため、記録に一貫性が出ないのだ。

 ファステストラップを獲得したマシンにポイントを与えるというのは、確かに面白い試みだった。しかし、これではレース終盤に茶番のようなシーンが生まれた結果、報われるべき人が報われず、ただでさえ評価の難しい記録にさらに歪みが生じてしまう。そろそろ終わりにするべきではないだろうか。

 

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