2022年のF1では、ドライバーたちの”腕”がこれまで以上に重要になる?
2022年のF1は、グラウンドエフェクトカーを導入することにより、オーバーテイクや接近戦が増加することが期待されている。この新マシンは、ドライバーのテクニックに頼る部分も多くなると言われているが、それは一体なぜなのか?
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
2022年のF1はテクニカルレギュレーションが大きく変更され、これに応じて各チームのマシンも大きく変わることになる。これによって前を行くマシンにより接近することができるようになり、オーバーテイクの回数も増えることが期待されている。
この新レギュレーションのマシンでは、ドライバーのテクニックがより活きるような形にもなると言われている。それは一体なぜなのだろうか?
新レギュレーションにより、F1はフロントウイングとリヤウイングで多くのダウンフォースを発生していた形から脱却。これまで以上に、マシンのフロア下で発生するダウンフォースを重視しなければならない。これにより、前のマシンが生み出す乱流の影響を受けにくくなり、マシンのスライドやタイヤのオーバーヒートが抑えられることになるはずだと考えられている。
この新レギュレーション下で生み出されるマシンは、ダウンフォースの総量が削減されるため、ラップタイムは遅くなると見られている。当初の話では、1周につき5秒遅くなるのではないかという試算も出された。しかし最新の情報では、各チームは既に新レギュレーションの理解を深めているため、0.5秒遅れ程度で済むのではないかという意見もある。
ただラップタイムに大きな変化はなくとも、ドライバーのフィーリングには違いがあるようだ。シミュレータで新マシンを経験した複数人のドライバーは、失ったダウンフォースよりも、マシンが落ち着いていないように感じると語る。
マクラーレンのランド・ノリスは、次のように語った。
「ある意味では、ドライブするのが快適なマシンではないと思う。プッシュする時など、制限はもう少し増えるだろうね。ある意味では、F2に少し似ているかもしれない。マシンと対峙する割合が、もっと増えるかもしれない」
こういうコメントを聞くと、当初目指されていた、前を走るマシンに近づいた時に挙動を安定させるという目的に対して、何かがうまくいっていないことを示唆しているようにも思える。
しかしFIAのシングルシーター委員会の責任者であるニコラス・トンバジスは、ドライバーたちが訴えているいわば“違和感”は、マシンの空力面がよりシンプルになったことの結果であると語る。
2021年まで各チームは、マシンに様々な空力デバイスを取り付け、車体を包む気流をコントロールしていた。しかし2022年レギュレーションでは、昨年までのような処理は不可能になる。
「ドライバビリティの面では、かなりの課題がある」
そうトンバジスは語る。
「チームは、ドライバビリティと安定性の観点から、コーナーを通過する時のパフォーマンスを改善してきた。そのために、彼らはシミュレータで多くの仕事をしてきたんだ」
「彼らはまた、ドライバーたちが不安に思うようなコーナリング中のマシンの挙動の急激な変化が起こらないことを確実にするために、空力面について多くの仕事を行なってきた」
「私の理解では、新しいレギュレーションでは、それをすることが少し難しくなる。つまり、新しいマシンはドライブするのが少し難しくなるだろう。ただ、それは良いことでもあると思う」
トンバジスは、これまで各チームが注力してきたフロントウイングやバージボード付近からフロア下への空気の流れなどの開発が、新レギュレーションでは難しくなったと語る。
「これまでは、フロントウイングやバージボードによって様々な渦を注意深く“操作”することで、気流がどう移動していくのかということをコントロールしていた」
そうトンバジスは言う。
「何が可能かということについては、現在はより多く制限されている」
その結果、ドライバーの才能にもっと重きが置かれるはずだと、トンバジスは語る。
「マシンの挙動が予測しにくいということは、ドライバーのスキルにとっては素晴らしいことだ」
「いくつかの部分での特性がそれほど洗練されていない可能性があるため、ドライビングがより難しくなる可能性があると思う」
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