F1

F1の雨対策パーツの開発が困難な理由。プロトタイプ”スプレーガード”は大きな成果を得られず

F1は、ウエットコンディションでの視界悪化を改善すべく、テストを実施してその対策を模索しているが一筋縄ではいかないようだ。

Adam Cooper

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編集: 2023/07/29 15:29

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Wet weather package

 F1はウエットコンディションでのレース中断をなくし視界悪化を改善するため、F1イギリスGP後にシルバーストンで”雨用パッケージ”のテストを実施した。

 残念ながら、FIAが有力視しているデバイスである後付ホイールアーチのプロトタイプ(一部では非公式にスプレーガードとも呼ばれている)の最初のサーキットテストは成功とはいかなかった。

 しかしながら最初の一歩として、またデータ収集とシミュレーションとの相関関係を確認する上では有益な動きであり、少なくともFIAは問題に取り組むための出発点を得ることができた。

 FIAシングルシーターディレクターのニコラス・トンバジスは「もちろん、すべてが完璧で、10月くらいの時期に適用できる解決策がすでにあれば完璧だっただろう」と語った。

「しかしそうはならなかった。我々はそれを実現するために全力を尽くしている。遅かれ早かれ、レースが中止になるか、それによってレースができるようになるかという違いを生み出すと感じているからだ」

 巻き上げられた水しぶきによって視界が悪化し、全くレースができるようなコンディションにならなかった2021年のベルギーGPを受けて、ウエットコンディションでの対策を求める声が大きくなった。

 シルバーストンのテストで使われたプロトタイプは、各ホイールの上部を覆うようなフェアリングと、各タイヤ後方の地面に近いところに横向きのバージボードのようなパーツの、ふたつの部分から構成されている。これらのパーツはアップライトに取り付けられ、ホイールと一緒に動く。

 テストにはメルセデスも協力し、ミック・シューマッハーが改造したW14に乗り、人工的にウエットコンディションにされたシルバーストンを走らせた。マクラーレンのオスカー・ピアストリは通常のマシンをドライブし、どの程度の水しぶきを上げるのか比較しながら、メルセデスを追いかけ視界への影響をフィードバックした。

 この日の主な目的は、マシンによって巻き上げられた水の挙動に関するデータを収集し、FIAの空力チームが実走行データと研究を関連づけるのを助けることだった。

 FIAの空力責任者であるジェイソン・サマーヴィルと彼の同僚たちは、水滴のモデリングが容易ではないという壁に直面した。

「昨年末にこのプロジェクトを開始し、CFDシミュレーションをかなり行なったが、ただ何かを装着すれば完了というような単純なものではないことはすぐに理解できた」と彼は言う。

「CFDシミュレーションは非常に厄介で、水の粒子もシミュレーションしなければならないからだ。水滴がある場合、計算がかなり複雑になる」

「さらに、地面から吸い上げられた水の量や、タイヤからの排水量など、完全な知識を持っているわけではないので、相関関係のデータも必要だ」

「それに、たとえば小さな液滴の直径がどれくらいなのかも正確には分からない。だからシミュレーションは複雑になるし、相関関係のデータが必要だったんだ」

Wet weather package

Wet weather package

Photo by: FIA

 トンバジスは、シルバーストンでテストしたプロトタイプが、巻き上げられる水煙に大きな影響を与えなかったことを認めた。

「実際に使用されたデバイスは比較的小さく、ホイールのほんの一部しかカバーしていなかった。個人的には、うまくいく自信はあまりなかった」

「カバーは十分な大きさだろうか? 十分な効果があるのだろうか? そう考えていたんだ」

「結果的に、目に見えるような変化はなかった。しかし、多くの相関データを得ることができた。だから、最初のテストとしては有益だったと思う」

「協力してくれたチームにはとても感謝している。また、サーキットでのセットアップがうまく機能していたことも証明できた。計測は簡単ではないが、妥当な評価方法があることが分かったんだ」

「またトライしてみる必要がある。エンジニアリングのプロジェクトで、1回目で完璧にうまくいくものはあまりない。だから、もう少し頑張る必要があるんだ」

 空力への影響を最小限に抑えつつも、高速で走行するF1マシンに安全に取り付けられるようなデバイスを開発することが、かなり難易度の高い挑戦になるのは想像に難くない。

「クルマのパフォーマンスをあまり失いたくなかったし、エアロダイナミクスをあまり混乱させたくなかった」とトンバジスは言う。

「避けられない部分もあるけれどね。大きなマッドガードにかかる実際の空力的な負荷は、もし完全なカバーにするならかなり大きなモノになる。したがって、時速300kmで飛ばないようにするためには、アップライトのサポートはかなり頑丈でなければならない」

 ディフューザーが巻き上げる水の量についても、評価はこれから。また仮に目に見える形で水煙を減らすことができたとしても、それを技術規則で定義し、実際にどうやってレース前やレース中に装着の指示を出すのか、競技規則を整備する必要もある。

 またFIAはこの分野で各チームに開発をさせるつもりはなく、誰がパーツを製造するのかも決めなければならない。

 課題は山積しているが、各F1チームはこうした動きを歓迎している。メルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクターのアンドリュー・ショブリンは次のように語った。

「まだやるべきことは多いが、解決策があれば役に立つ。コンディションが難しすぎてレースができないのは、チームにとっても、ファンにとっても嫌なことだからだ」

「現時点では、生産とレギュレーション調整に移行する準備ができていない。だから、やるべきことがあるのは確かだ。タイヤから噴射される水しぶきは改善されるけれど、ディフューザーから噴射され、リヤウイングが撒き散らす水しぶきはまだ多いんだ」

「しかし興味深い最初の一歩であり、我々はその開発のためにマシンといくつかの部品を提供している。次のステップや将来的なことを決めるのはFIAのプロジェクトだ」

「空力的なロスが誰にとっても同じなら、その大きさはあまり重要ではない。お金を払ってサーキットに来てくれたファンに、観戦する価値のあるレースを提供するという目標は間違いなくある。そして、スポーツが大きな問題に対する解決策を見出そうとするこうした取り組みがあるのは良いことだと思う」

 

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