違法だったはずでは? フェラーリSF-23のフロントウイングに『メルセデスのアイデア』が搭載されているワケ
フェラーリが発表した新車『SF-23』のフロントウイングには、昨年にメルセデスが実戦投入を断念したアイデアが採用されている。
フェラーリは、2023年シーズンを戦うニューマシン『SF-23』を、多くのファンを招いてフィオラノで計5周走行するという、ど派手な形で発表した。
フェラーリが今季にかける意気込みが現れているようなイベントだったが、細かいところを見ても、貪欲な開発姿勢が見えてくる。フロントウイングに装着された、スロットギャップセパレーターもそのひとつだ。
SF-23のフロントウイングを見ると、そのフラップにつけられたスロットギャップセパレーターが明らかに気流制御を目的とした形状になっていることに気づくだろう。本来、フラップ間のギャップが離れ過ぎないようにするために使用を許可されているパーツだが、気流をマシンのアウト側に導くようにデザインされているのだ。
実は、同様のパーツはすでに昨年登場している。メルセデスがアメリカGPに持ち込み、ピットレーンに並べられていたフロントウイングに、近いデザインのセパレーターがつけられていたのだ。
Mercedes W13 front wing detail
Photo by: Giorgio Piola
しかしフロントウイングの付属部品について定めたF1技術規則第3.9.8条には、『主に機械的、構造的または計測的な理由で』装着することができると定められていた。
メルセデスは当時、空力的な影響は二次的なものであり、そのデザインはルールに則っていると考えていたが、ライバルチームからは不満が出た。そのデザインを承認していたはずのFIAも改めてそのデザインに注目する動きを見せたため、メルセデスは最終的にこのセパレーターを取り外してウイングを使用することにした。
メルセデスのテクニカルディレクターのマイク・エリオットは、セパレーターを取り外す前、次のように語っていた。
「レギュレーションでは、主な用途は機械的または測定目的であると書かれているので、騒がれているのだと思う。そして言うまでもなく、空力的なデザインという副次的なメリットもそこにあるのだ」
「アレについて我々が主張するかどうかは我々が決めることだ。実は大した価値はないんだ。ディティールは面白そうだが、フロントウイングの大きな特徴ではないんだ」
当時のメルセデスを取り巻く状況を踏まえれば、フェラーリがSF-23にこうしたパーツを搭載するのは不思議に思える。
だがレギュレーションを調べてみると、フェラーリがこのデザインを推し進めた理由が見えてきた。
12月上旬に発表された2023年の技術規則改訂の一環として、FIAは第3.9.8条から『主に機械的、構造的または計測的な理由で』という記述を削除したのだ。
つまり、スロットギャップセパレーターがレギュレーションの厳しい要件に準拠している限り、それがどれだけ空力的な恩恵をもたらしていたとしても、完全に合法となったということだ。
レギュレーション変更を追い風に、フェラーリがメルセデスのアイデアを採用した形だが、果たしてメルセデスは一度諦めたこのデザインを復活させるのか。2月15日にシルバーストンで公開される予定のメルセデスの新車『W14』のフロントウイングにも注目だ。
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