2022年F1新レギュレーション導入で、最も激しい開発競争の舞台となったフロア……2023年はどうなる?
レギュレーションが大きく変更されたのを受け、各F1チームは2022年シーズン開幕に向け、マシンのコンセプト変更を強いられた。フロア下でダウンフォースの大部分を発生する、グラウンドエフェクトカーの時代が到来したのだった。
2021年までのF1は、前後のウイングでダウンフォースの大部分を稼ぎ出すのが一般的だった。つまりマシンの上面でダウンフォースを得ていたのだ。しかしこの方式では、マシンの後方に乱流を生み出してしまい、接近戦がしにくくなるという弊害があった。
この乱流を減らすため、2022年からF1のレギュレーションが大変更。マシンの下面でダウンフォースの大部分を発生する形に、マシンのコンセプトを一変させる必要性に迫られたのだ。グラウンド・エフェクトカーの復活である。
しかしこのコンセプト変更に、多くのチームが苦労することになった。
2021年までのレギュレーションでは、フロア下面は平面にする必要があり、リヤエンドのディフューザーのエリアでフロアを跳ね上げることができるようになっていた。しかし2022年からの新しいレギュレーションでは、フロア下の形状に多くのバリエーションが許されていたため、各チームのデザイナーたちは、フロアの形状をより自由かつ複雑に設計することができた。
Red Bull Racing RB18 floor
Photo by: Giorgio Piola
2022年のチャンピオンマシン、レッドブルRB18のフロア下は、おそらく最も極端な事例であり、ほぼ全ての表面が何らかの形で湾曲していた。これにより最大限のボリュームを確保するだけではなく、ベンチュリトンネルの内部を通る空気の流れと、その途中で生じる圧力分布の制御が複雑な形状となっている理由だ。
またこのデザインは、車高の変化によるフロア下の圧力変化に対応するのにも役立っていた可能性がある。
マシンの前方、矢印の1と2で示された部分は、フロアフェンス(フロアの最も外側)の形状に合わせるように段差がつけられるなど、形が整えられている。また”3”で示した部分には段差が設けられており、ディフューザーに向けて徐々にトンネル内の空間が広げられている。
”4”で指し示した部分は、”アイススケート・ソリューション”が採用されている。これは、車体の姿勢が変化した際、必要以上に車高が下がらないよう路面に接触させるもの。それを、物理的に実現させるため、強度のある金属製のパーツになっている。またそれと同時に、その部分に流れ込む気流を整える、空力的なサポートとしての役割も併せ持っていたはずだ。
他のチームも、このレッドブルのデザインに注目。それぞれのマシンに踏襲した。
フェラーリとマクラーレンは、いずれもリヤに段差を取り入れ、それぞれ独自のアイススケート・ソリューションを採用した。フェラーリはシーズンの比較的早い段階でアイススケートを採用。マクラーレンはシーズン後半になってようやく投入したのだった。
また2022年からは、それ以前に存在していたバージボードが消えることになった。しかしフロア下にフェンスを立てることができたため、バージボードと同じような役割を果たした。
このフェンスは、フロアの前端よりも前から始まり、フロア下に向かう気流の整流に活かされた。そしてチームによってこの部分のデザインには、様々な選択肢がみられた。
ここでも、最も斬新な解釈をしたのはレッドブルだった。最も外側のフェンスと、内側のフェンスのひとつを組み合わせることで、フロント部分の外に向かう気流、そしてフロア下に向かう気流の両方を整えようとしたのだ。
ただフランスGPでは、開発の一環として外側のフェンスを切り離したため、より一般的なレイアウトに戻すことになった。
一方フェラーリは、フロアの高さに変更を加えたため、最も外側のフェンスの高さを引き上げた。イラストの○の中、黄色の点線部分は、本来のフェンスの形状を示したものだ。
フロアの端、エッジの部分の開発も、各チームがかなりのリソースを費やした領域だ。
各チームによって、エッジの形状、そしてエッジウイングのサイズの違いなど、大きな違いが生じた。この部分は、フロア下を流れる気流に、外部の気流が悪影響を及ぼさないようにしたり、あるいは圧力が高まりすぎた際に気流を逃したりと、非常に重要な役割を果たす部分である。
これに応じて各チームは、切り欠きや形状を工夫して最適解を浴び出していくことになり、様々なバリエーションが生み出されることになった。
さて、これから各チームの2023年マシンが続々と発表されていくことになる。発表会で最終的なデザインのフロアを取り付けてくるとは思えないが、今シーズンもまた、最も熾烈な開発競争が、このフロアで行なわれることになるだろう。
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