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【分析】最強マクラーレンに対峙し、フェルスタッペンが今季3回もポールポジションを獲得できた理由……”速いマシン”とは一体何か?

マクラーレンが圧倒的な強さを見せる中、レッドブルのマックス・フェルスタッペンは『予選では』彼らに渡り合っている。その理由は何なのか? そして”速いF1マシン”とは、一体どんなモノなのか?

Max Verstappen, Red Bull Racing

Max Verstappen, Red Bull Racing

写真:: Red Bull Content Pool

 マクラーレンは、F1マイアミGPで1-2フィニッシュを果たした。最終的に3位フィニッシュとなったメルセデスのジョージ・ラッセルに30秒以上の差をつける大差での完勝……現時点での最強マシンがマクラーレンMCL39であることに、もはや疑いの余地はない。

 しかし予選になると少し様相が異なる。ここまでの6戦中3戦で、レッドブルのマックス・フェルスタッペンがポールポジションを獲得している。なぜフェルスタッペンは、予選”では”マクラーレンに太刀打ちすることができるのだろうか?

 開幕戦オーストラリアGPでは、ランド・ノリスが勝利。しかし第2戦中国GP、そしてバーレーンから3戦連続でオスカー・ピアストリが勝利し、ドライバーズランキング首位に立っている。マクラーレンはここまで6戦中5勝。まさに圧倒的な強さである。

 先日行なわれたマイアミGPでは、マクラーレンの2台が1-2フィニッシュし、3位ラッセルは37秒、4位フェルスタッペンは40秒もピアストリから遅れてチェッカーを受けた。これは、摩耗やオーバーヒートによりリヤタイヤのデグラデーションが深刻な問題となると、マクラーレンが本領を発揮し、簡単にライバルを引き離すことができてしまうという傾向を裏づけている。

 今季のマクラーレンに唯一土がついたのが鈴鹿サーキットでの日本GPだったのは、偶然ではない。この日本GPは”簡単な”1ストップレースであり、オーバーテイクも難しいコース……フェルスタッペンはそんな中、ポールポジションからスタートして首位を守り切り、対するマクラーレンは数少なくはあったものの確実に存在していた戦略的な選択肢を活かすことができなかった。

 マクラーレンはレースでは他を圧倒することができるものの、予選では同じような強さを見せられていない。フェルスタッペンが6戦中3回で最多のポールポジションを獲得。この他ピアストリが2回、ノリスが1回と続く。スプリント予選も入れれば、中国ではフェラーリのルイス・ハミルトンが最速となり、マイアミではメルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリが首位に立った。

 フェルスタッペンの鈴鹿でのポールポジションは、今季最も印象的な予選結果であると語られている。マイアミでのパフォーマンスも、それに劣らず印象的であった。彼は走行距離を重ねたホンダのPUを使うことを選んだため、ストレート区間での加速で、ライバルに遅れをとっていたにもかかわらず……である。

Max Verstappen, Red Bull Racing

Max Verstappen, Red Bull Racing

Photo by: Clive Mason/Getty Images

 フェルスタッペンの奮闘により、マクラーレンのパフォーマンスが一体どれだけ優れているのかという議論が煽られ、ドライバーたちの役割をめぐって両チーム間での心理戦が誘発した。

 フェルスタッペンの今季3度目のポールポジション獲得を受け、チーム代表のクリスチャン・ホーナー代表は、その持ち前の実力について言及した。

「偉大なスポーツ選手なら誰でもそうだと思うが、プレッシャーがかかる瞬間こそが重要なんだ。つまり予選最後の1セットのタイヤで、もっともプレッシャーがかかる瞬間に、いかに実力を発揮できるかだ」

 ホーナー代表は予選後、スカイ・スポーツの取材にそう語った。

「彼は何度も結果を出してきた。そして今回も、予想に反して6戦中3回目のポールポジション獲得となった」

「Q2では、マクラーレンが我々を圧倒しているように見えた。でも重要なのは、周回を重ねることだ。マックスはその点では達人だと言える。彼は全力を尽くさねばならない状況だった。我々はマクラーレンよりも、コンマ1〜2秒遅れているんだからね」

Max Verstappen, Red Bull Racing, Christian Horner, Red Bull Racing

Max Verstappen, Red Bull Racing, Christian Horner, Red Bull Racing

Photo by: Philip Fong - AFP - Getty Images

 つまりホーナー代表は、マシンの面で劣勢に立たされてるにもかかわらず、フェルスタッペンの「大きなプレッシャー」に対処する能力を賞賛することで、ライバルたちよりも能力の面では優位に立っているということを印象付けようとしていたと見られる。

 これについては、多くの人たちも同意することであろう。しかしマクラーレンのチーム代表であるアンドレア・ステラは、異なる見解を持っているようだ。

 確かにマクラーレンMCL39のパフォーマンスは優れている。アタックラップでの速さも素晴らしい。しかしふたりのドライバーは、そのマシンの能力を引き出すのに苦労しているようにも見える。実際ノリスは、マシンとの相性に問題を抱えていると訴えている。

 MCL39は、昨年型マシンMCL38と比べて、かなり大きな変更が加えられている。ノリスはMCL38をうまく乗りこなしていたが、今季マシンMCL39には、ピアストリの方がうまく適応しているようだ。そんなピアストリでも、鈴鹿やマイアミではミスを犯し、ポールポジション獲得のチャンスを手放してしまっている。

 マクラーレンMCL39はほとんどの状況で他を圧倒する速さを見せるものの、フロントアクスルには”鈍感さ”があり、限界ギリギリまで攻めた時にドライバーたちに必要な情報を伝えられていないとも言われる。ノリスやピアストリは、マシンの挙動やフロントタイヤがロックしそうかどうかを予測できず、それにより最高のパフォーマンスを発揮するのに苦労しているようにも見える。

「今では、予選仕様での新品タイヤを履いての1アタックよりも、レースシミュレーションでの走行の方がマシンの攻略が容易であることを裏付ける、十分な統計データがある」

 そうステラ代表は説明する。

「今のところ完璧なラップはない。ベストなラップは、バーレーンでのピアストリが走ったモノだろう。しかし特にフロントエンドのロックとブレーキングを考えれば、100%プッシュする1周アタックではなく、連続周回を走った方がマシンの真価を発揮できる」

「しっかりとしたエンジニアリングに基づき、限界走行時のグリップの状態に関して、より予測しやすく、より豊富な情報をもたらすマシンを彼らに提供できるよう、理解と調整を進めている」

Lando Norris, McLaren

Lando Norris, McLaren

Photo by: James Sutton / Motorsport Images

 ステラ代表はこう語り、予選でポールポジションを獲得できていないのは、ドライバーの能力が不足しているわけではなく、技術的な側面の方が大きいと主張しているわけだ。そして、ホーナー代表の”フェルスタッペンの能力が違いを生んでいる”という論法に苛立ちを見せる。

 motorsport.comが、前述のホーナー代表のコメント……つまりフェルスタッペンの「プレッシャーがかかる瞬間にパフォーマンスを発揮できる能力」が、予選結果での差を生んでいるとの主張を伝えると、ステラ代表はこう反応した。

「レッドブルは速いマシンを作るのが非常に上手く、速いマシンを走らせるのも並外れて上手い。そして、自分たちに有利になるような物語を作り出すのも非常に上手だ」

 ステラ代表はそう語った。

「彼らは競争に残るために、あらゆる機会を利用する。その機会の中には、『我々は度々奇跡を起こしている。他のチームは、全ての予選、決勝で勝つはずなのに』といった物語を作り出すことも含まれる」

「これは一部のライバルが作り上げた物語だ。我々は時折それを読み、そしてページをめくり、自分たちのことに集中する。事実を見つめ、何を改善すべきかを考える。改善すべき点はたくさんあるんだ」

Oscar Piastri, McLaren

Oscar Piastri, McLaren

Photo by: Sam Bloxham / Motorsport Images

 より哲学的な疑問が生じる。それは、ドライバーがそのポテンシャルを確実に引き出せないマシンは、本当に速いと言えるのだろうか?

 ステラ代表は次のように語る。

「どのマシンがより良いのか、区別するのは難しいと思う。より良いマシンというのは、マシンが発揮できるパフォーマンスのことであり、絶対的なポテンシャルではない。時折、本当に素晴らしい走りを見せることができるが、ドライバーはそれを再現するのは難しいということもある。オスカーは(マイアミGP予選の)Q2を走った後、『ターン1は本当に良かった。どうやってそんなことができたのかは正確には分からないし、マシンからその時の状況がどうなっているのか、良い感触が得られなかったから、あれを再現できるかどうか分からない』とコメントしていたんだ」

「このマシンは、我々が使う専門用語で言うと、あまりキューイングしてくれないマシンだ。つまり、個々のラップで見られるような素晴らしいパフォーマンスを、ドライバーが再現するのは容易ではないということだ」

「では、良いマシンとは一体何だろうか? 潜在能力は高いかもしれないが、それを活用するのが難しいマシンだろうか? それとも、ピーク時のポテンシャルは多少劣るかもしれないが、そのポテンシャルをしっかり活用できるマシンだろうか?」

 真実は、その中間にあるのかもしれない。

 2025年のF1は、いよいよ欧州ラウンドを迎える。そこで予選での争いがどんな展開となるのか、非常に興味深い。レッドブルとマクラーレンは共にアップデートを準備しており、FIAはスペインGPからフロントウイングの変形検査を厳格化させる予定である。

 マクラーレンは限界ギリギリのところでのドライビングが容易になるようマシンを開発することができるのか、それともライバルの一部が考えているように、フロントウイングの変形量が変わることによって、その実力が制限されることになるのだろうか?

Additional reporting by Ronald Vording

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