ライバルも認める”レッドブル最速”の評価。その理由は、アタックやロングランのラップタイムだけではない……
F1チームの発言が揃うことはまずない。しかし、バーレーンでのプレシーズンテストが終わった段階では、ほとんどのチームが「レッドブルが最強である」という意見で一致した。そして彼らがそう評価する理由は、ラップタイムだけではなかった。
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
バーレーンで行なわれた2023年のF1プレシーズンテスト。その最終日午後、レッドブルのセルジオ・ペレスは、燃料搭載量を減らし、C4という柔らかいコンパウンドのタイヤを履いて、1分30秒305というタイムを記録した。このタイムは、3日間のテストを通じて最速のタイムであった。
レッドブルは実際、3日間続けて速さを見せた。唯一レッドブルを上回ったのは、テスト2日目にアルファロメオの周冠宇が、C5タイヤを履いてその日のトップタイムを記録した時のみ。当日のレッドブルは、C3タイヤより柔らかいタイヤは使っておらず、それでもマックス・フェルスタッペンは周から0.04秒差の2番手タイムを記録している。
レッドブルは、最速タイムに注力していたわけではない。彼らはロングランを中心にテストのプログラムを立て、徹底的に連続走行を繰り返した。これこそ、各チームが最も注意を払っていること。そしてレッドブルは、全ての状況をコントロールできているように見えた。
信頼性の面でも、2日目に小さな問題が発覚したことを除けば、問題ないように思える。そしてロングランペースという面では、フェルスタッペンとペレスを脅かすように見えるライバルは見当たらない。
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコは、テスト終了後に次のように語った。
「最速タイムは、ご存知のようにテストでは相対的なモノでしかない。ライバルたちがどのくらい燃料を積んでいるかということは、我々には分からない。もしかしたら、我々よりも重いかもしれない。つまり、最速タイムは相対的なモノでしかないのだ。しかし我々のマシンは信頼性が高く、速いことも証明されている」
「何よりも、ペレスとマックの両方のロングランは、少なくともライバルよりも明らかに速かった。そのことに、我々は非常に楽観視している」
もちろんテストで最速だったとしても、シーズンが始まった後もその立ち位置を持続できるということを保証するモノではない。しかしレッドブルのテストをもう少し細かく見ていくと、他のチームが脅威と感じるに値する要素が多々見られる。
楽にペースアップできるマシン”RB19”
F1マシンは、限界でドライブするのが実に難しいという場合がある。そして最大のパフォーマンスを引き出すことができるのは、ほんの一握りのドライバーだけ……ということも珍しくない。しかしレッドブルの今季マシンRB19は、バーレーンで走り出すとすぐ、限界まで攻めることができるマシンに仕上がっていたようだ。
ライバルチームは、自分達のニューマシンの最適なバランスを見つけるために、特にテスト序盤には苦労していた。一方でフェルスタッペンは、そんな苦境に陥っていないことをコメントで示唆していた。
「マシンに乗るとすぐに快適に感じて、すぐ攻めることができたんだ」
それはテスト初日のことだ。フェルスタッペンはセッションがスタートすると、数回にわたってインスタレーションラップを行なうと、その日の残りは5〜7周の連続走行を繰り返した。そのペースは驚くほど一貫しており、中には1分35秒台を連発するという連続走行もあった。この1分35秒台というペースとその安定性は、昨年のバーレーンGPを制したシャルル・ルクレール(フェラーリ)のレース最終盤のペースすら凌ぐモノだった。
このラップタイムの一貫性は、彼とマシンのマッチングが適しており、全てをコントロールできていたということを示すモノだろう。新車のテストとしては、かなり迫力のあるモノだった。
フェルスタッペンは、マシンのスイートスポットをすぐに見極めることができたため、マシンを理解する上で非常に有利なスタートを切れたとも語っている。
「テストの期間全体が、僕らにとって非常にポジティブなモノだったと思う」
そうフェルスタッペンは語った。
「マシンのバランスはすぐに良くなった。その結果、セットアップで多くのことも試すこともできたんだ。例えば極端に右に寄せたり、逆に左に寄せたりしたんだ。それは、マシンについて多くのことを学ぶための良い形だった」
”フェルスタッペン向き”のピレリの新タイヤ
フェルスタッペンは2022年シーズンに15勝を上げ、圧倒的な強さでチャンピオンに輝いた。しかし開幕当初、同年のマシンRB18は彼が好むドライビングスタイルとはかけ離れたマシンだった。フェラーリとの接戦が続いたのには、それも影響していたかもしれない。しかしその後マシンが改善され、フェルスタッペンの強さに繋がった。
2022年のRB18は当初、ターンイン時の挙動が機敏ではない……つまりアンダーステア傾向のマシンだったのだ。こういう特性のマシンは、フェルスタッペンの好みとは真逆。故に苦労したわけだ。
しかし2023年は、ピレリがタイヤの性能を微調整した。フロントタイヤのグリップが引き上げられることになったため、アンダーステアの傾向が減衰……フェルスタッペンの好みに近づいたわけだ。
フェルスタッペンはテストを終え、タイヤの印象について次のように語った。
「アンダーステアが出にくくなったね。でもそれは、リヤタイヤが昨年ほど良くないからだと思う」
そうフェルスタッペンは言う。
「フロントタイヤは全く同じだ。しかし全体的に、今年のクルマは去年よりも少しバランスが良いと思う」
信頼性と重量は、もはや問題ではない??
結果的にRB18は、2022年最強のマシンであるということが証明された。しかしチームとしては、最高の形で1年をスタートできたわけではなかった。
バーレーンとオーストラリアの各グランプリではマシントラブルに見舞われ、フェルスタッペンはリタイアに追い込まれた(バーレーンGPは19位完走扱い)。信頼性の面で、タイトル争いの候補から早々に脱落したように見えたのだ。
ただレッドブルは、この点についてすぐに問題を解決。その後は高い信頼性を誇った。この高い信頼性は2023年にも引き継がれ、3日間のプレシーズン中には問題らしい問題はまったくなかった。
レッドブルは、もうひとつの悩まされていた難題も解決したようだ。RB18は重量が重く、特にシーズン前半の苦労に繋がった。しかしRB19はしっかりと軽量化も施されており、目標としていた重量を達成することができたようだ。
つまり重量面でセットアップを妥協する必要はなく、ラップタイムを縮めるためのはるかに優れたツールを自由に使うことができるようになるわけだ。
フェルスタッペンは、1年前よりも大幅に改善された状況で、新シーズンを迎えることができると考えているという。
「昨年と比べると、同じようなマシンだけど、一歩前進している」
「でも、それは当然のことだ。だって去年のマシンは重すぎたからね」
「全く新しいテクニカルレギュレーション下で生まれた、全く新しいマシンの最初の年だった。その1年を通じて、多くのことを学べた。その結果、今年は少し楽にシーズンをスタートできると思う」
「もちろん、僕らはまだまだ良い一歩を踏み出さなきゃいけない。ただ僕らはそれを成し遂げることができたと思う」
バーレーンでのテストを、現地で目撃した人で、レッドブルとフェルスタッペンが最有力だということに同意しないひとは、ほとんどいないだろう……。
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