ブレーキに苦しんだ天才ルクレール……新しいパッケージになり、イギリスGPで勝利を掴んだ後に目指すべきモノは?
今シーズン序盤、フェラーリのシャルル・ルクレールは、ブレーキのフィーリングに苦しんでいた。しかしパッケージを変更したことで調子は上向き……イギリスではついに勝利を掴んだ。
シャルル・ルクレールがフェラーリとの契約を延長した直後から、彼の苦悩ははじまった。
ルクレールの母国レースであるモナコGPは、今年のフェラーリのマシン特性から、優勝候補としてルクレールの名前が取り沙汰されていた。しかしその週末は期待外れではじまり、惨敗という結果に終わった。ルクレールは、幼少期から過ごしてきた街の中の走るコースを、以前のような勢いで攻めることができなかった。
壁スレスレのところを走る彼の姿は、どことなくぎこちないように見え、精彩を欠いていた。
レースの最終盤には、最終コーナー”アントニー・ノゲス”を曲がりきれず、バリアに激突。赤旗中断となった。多くの人はこのクラッシュを、路面のアスファルトが剥がれかけていたことが原因であると考えた。しかし実際には、ブレーキング時のフィーリングが、著しく悪かったことが原因だった。予選までの低調な走りも、このブレーキング時のフィーリングが大きく影響していた。
フェラーリは長年にわたって、ブレーキメーカーのブレンボと良好な関係を築いてきた。2026年シーズンに向けてブレンボは、新型マシンの要求に応えるべく、新たなパッケージを開発した。今季シーズンから導入されたレギュレーションに応じて生み出されたマシンは、パワーユニット(PU)が新しくなり、ホイールのサイズも変更されたことで、従来とは異なるブレーキシステムが必要だったのだ。
ルクレールのチームメイトであるルイス・ハミルトンは、自身のドライビングスタイルに合うように、別のブレーキディスクを試したいと考えていた。ブレンボ製のブレーキディスクでは、それが実現できなかったからだ。そこで3月下旬に行なわれた日本GPでは、カーボン・インダストリー社製のディスクをテストすることが合意された。
ハミルトンはメルセデス時代からカーボン・インダストリーのディスクを使い、慣れ親しんできた。その性能を最大限に引き出す方法も熟知していたのだ。ルクレールもこれを試したが、結局鈴鹿ではブレンボ製のパッケージを使うことに決めた。
しかし今年のフェラーリのマシンでブレンボ製のブレーキパッケージを使うと、前後および左右のブレーキ温度差を制御しにくいことが明らかになった。この温度差によってブレーキング時のフィーリングが不安定になる……その結果、ルクレールはブレーキのフィーリングが特に重要なモナコで自信を失い、予選では低調な結果に終わった。レースでも左右の温度差が大きく、片側のブレーキしか適切に作動しておらず、クラッシュにつながってしまった。
Long-time Ferrari partner Brembo was quick to respond to Leclerc’s post-race criticism
Photo by: Jayce Illman / Getty Images
クラッシュした後、ルクレールは無線で不満を露わにした。その後行なわれたメディアセッションでもその不満は止まらず、次戦バルセロナ-カタルニアGP以降はハミルトンと同様のセッティングを採用すると語った。
ただ当初ルクレールの発言は、それほど大きな意味を持つものではないと考えられていた。システム上の何らかの部分を調整することで、最大の制動力を発揮できるようにすることを、チームに求めているのだろうと、そう思われた。
しかしブレンボがルクレールの発言に対して反応し、「衝撃を受けた」と公に発信してしまったことで、ルクレールが不満を抱いていたのはブレーキの使い方ではなく、ブレーキそのものであったことが明らかになった。そしてその後、ハミルトンがカーボン・インダストリーのブレーキを使っていたことが明らかになり、この話は一気に広がった。
しかしルクレールの苦悩はそれでは終わらなかった。バルセロナではブレーキが変わったにも関わらず、またしても苦戦を強いられた。予選Q3でクラッシュし、決勝では挽回を狙ったものの、残り数周というところでパワーステアリングが故障……まさに今季のルクレールの不運を象徴するようなレース展開となった。
この間にハミルトンは絶好調。バルセロナではフェラーリ加入後初となる勝利を手にし、ルクレールは40ポイントもの遅れをとることになった。そしてオーストリアGPでも差を広げられ、イギリスGPを迎えた。
そのイギリスGPではルクレールが勝利。彼にとっても、およそ2年ぶりという待望の勝利となった。
ルクレールは、F1現役ドライバーの中でも、特に予選の速さに秀でたドライバーであり、その才能と評価は非常に高い。今季開幕前には、メルセデス勢に真っ向から立ち向かう急先鋒であると多くの人が予想していた。しかしその期待に答えられるかどうか、それを判断するにはまだまだ時間がある。ブレーキの変更により、マシンのフィーリングは良くなったとルクレールは感じているものの、自ら積極的に攻めていく必要があるのは明らかだ。
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