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インタビュー

フランツ・トスト独占インタビュー|F1世界王者を輩出……今季限りで引退するアルファタウリF1代表、最大の実績は通算”2勝”にあらず

2023年限りでスクーデリア・アルファタウリのチーム代表から退任するフランツ・トスト。彼はF1キャリア最大のハイライトとして、イタリアGPでの2勝というコース上での成績を挙げていない。

Franz Tost, Team Principal, Scuderia AlphaTauri

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

 レッドブル・レーシングの姉妹チームであるトロロッソと、その後身のアルファタウリで18年に渡り手腕を振るったフランツ・トストが、2023年シーズン終了後にチーム代表の座を退くこととなった。

 現職のチーム代表の在任期間としては、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーに次いで2番目に長い。イタリアのファエンツァに拠点を構えるトロロッソ/アルファタウリの成績は、レッドブルに遠く及ぶモノではないが、チームの存続意義に問題はない。

 チームは一貫して、若いF1ドライバーを育成することを目的としていた。だからこそ、レッドブルへセバスチャン・ベッテルやマックス・フェルスタッペンという世界タイトルを獲得できる逸材を送り出すことができた。そして、トロロッソやアルファタウリを経たその他のドライバーも、多くはF1で活躍したり、フォーミュラEや世界耐久選手権といった別カテゴリーでも成功を収めたりしている。

 チームがコース上で残した成績という点では、2008年にベッテル、2020年に現アルピーヌのピエール・ガスリーが残したイタリアGPでの2勝が際立っている。しかし、トスト自身はコース上での結果よりも全体を捉えることを好む。そして、その姿勢がかつてミナルディと呼ばれたチームを強力な育成組織として変革することに寄与したのだ。

「(レッドブル共同創設者の)ディートリッヒ・マテシッツから電話がかかってきて、今からイタリアへ行けと伝えられた」とトストはチーム代表就任当時を振り返る。

「(ファクトリーに)到着して様子を見てみたら、F1チームのインフラだとは信じられないモノだった。そこからチームを作り上げていったんだ」

「ハイライトはひとつじゃない。スクーデリア・アルファタウリ、そして最初の頃はトロロッソというチームを共に作り上げるという素晴らしい時間を過ごした。そしてイタリア、特にエミリア・ロマーニャ州とファエンツァは、素晴らしい地域だった」

「本当に素晴らしい人々がいて、熱狂的な人々だ。F1への情熱があり、働くことが好きな人々だ。彼らと共に全てを作り上げることができたのは、本当に光栄なことだった」

「ハイライトがひとつじゃないという点では、もちろんモンツァでの2勝が良かったと言う人もいるだろう。ただし、そうではない。基本的に全てがハイライトで、チームが上手く機能したということも重要なんだ」

Franz Tost, Team Principal, Toro Rosso, and Max Verstappen, Toro Rosso

Franz Tost, Team Principal, Toro Rosso, and Max Verstappen, Toro Rosso

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

「マテシッツは、若いドライバーを教育する必要があると言った。そしてベッテルがレースで勝ち、チャンピオンとなった。フェルスタッペンも同様で、ダニエル(リカルド)もレースウィナーになった。(カルロス)サインツJr.やガスリーも同じだ」

「それは良いことだ。今はユウキ(角田裕毅)の成長ぶりを見ることができているし、(ニック)デ・フリーズも成長していけるだろう。チームにとってはいい感じだ」

 ベッテルやフェルスタッペン、そして今後の可能性を秘める角田など若手ドライバーのキャリアに深く関わってきたことを誇りに思っているか? そうトストに尋ねると、彼はこう答えた。

「誇りという言葉は好きじゃない」

「誇れる理由なんて何もないからね。誇りに思うなら、それはチームだ。若いドライバーを育成するのは、みんなが思っているよりもずっと複雑で、仕事量も多いからね」

「我々のエンジニア、特にデータエンジニアとレースエンジニアは、若いドライバーと共に多くの時間を過ごし、じっくりとレースを分析して、予選とフリー走行も分析する」

「それは大変な仕事だし、チームとエンジニアの仕事ぶりに感謝しなければならない」

 アルファタウリの人事に関する噂が立ち始めたのは、4月末に行なわれた第4戦アゼルバイジャンGPの直前だった。スクーデリア・フェラーリでスポーティングディレクターを担当していたローレン・メキーズがファエンツァのチームへ戻ると囁かれたのだ。メキーズはかつて、トロロッソ時代に同チームに所属していたことがある。

 しかし論理的に考えてみれば、フェラーリの首脳クラスの人物がアルファタウリに戻るということは、チーム代表の座と考えるのが妥当……それはトストが離脱することを意味していた。

 トストの引退が近いということは、マテシッツが亡くなる前にも両者で話し合いが行なわれていたことで、彼も70歳までには身を引くと公言していた。

 そしてトストの離脱とメキーズの後任就任は、アゼルバイジャンGPを前にチームのプレスリリースを通じて正式に発表された。シーズンの早い段階で発表された理由は、代表交代の噂が持ち上がっていたことが原因だった。

 67歳のトストは2023年シーズン終了後に代表から身を引き、後任のメキーズは新CEOに就任する元FIAのペーター・バイエルと共にチームを率いることとなる。

 ただメキーズらは、ふたつの課題を受け継ぐことになる。チーム最大の支援者であったマテシッツ亡き後、アルファタウリは組織改革の必要性に迫られており、レッドブル側にその存在価値を証明する必要があるのだ。レッドブルのホーナー代表は、レッドブル系2チームのシナジー効果を高めるために、この2本立ての新たな指針を支持している。

「私が決めたことなんだ」

 引退という決断について、トストはそう説明する。

「2年前から考えられていたことで、当時ディートリッヒ・マテシッツとも話し合っていた。私はもう67歳だからね」

2008 Italian Grand Prix - Sunday Race

2008 Italian Grand Prix - Sunday Race

「若い頃、常に私が言っていたのは『もし自分が指導者的な立場にいるのなら、その席に固執してはいけない。もっと若い人、もっと賢い人、クリエイティブな人、やる気のある人にその立場を譲るべきだ」ということだ」

「そして今、私は70歳が近く、サヨナラを告げる時が来たのだ」

「私はF1が大好きだ。しかし、これは終わりがある物語なのだ。特に今、ピーター・バイエルがCEOに、ローレン・メキーズが代表に就任し、私の後任としてふたりの素晴らしい人材が合流した。私がF1を去るのにベストなタイミングだと思う」

 トストは取り決めの一環として、退任後もコンサルタントとしてチームをサポートする。ただ、新しい代表陣に干渉することはないと語っている。

「今だから言えるが、私はピーターやローレンが何をするのか、彼らの動向を見守るような人間じゃない」

「彼らはとても優秀だ。そして何をすべきか分かっている。彼らが合流する最初の段階、1ヶ月ほどはサポートするつもりだが、その後は100%身を引くつもりだ。私は誰かにアドバイスしたり、指図したりするような人間ではないし、彼らもそれを分かっている」

「また、これは私の個人的な願望ではあるが、チームがステップアップし、新たなレベルに到達することが重要だ。私は現時点で18年間チームにいる。新しい人や新しいアイデアを取り入れることは、常に私の意図するところだった」

「F1は非常に速いスピードで発展していて、彼らにも異なる視点があるだろう。それを実行すべきなんだ」

「彼らが私よりもずっと上手くやれると私は確信している。だから私は口をつぐんだ方が良いんだ」

 最近のF1チームの傾向として、高い能力を持つエンジニアがチーム代表を務め、組織のビジネス周りや政治を俯瞰する役目としてCEOを置き、二人三脚でチームを運営するケースが増えている。もはや明確なリーダーがひとり立てられている訳ではない。アルファタウリもそのトレンドに乗った形となる。

 チームの組織改革について、トストは次のように説明する。

「これは良い配置だと思う」

「技術面に専念する人と、組織やマーケティング、将来的な戦略などといったこと全てを考える人がいる」

「全てをチーム代表ひとりでやろうとすると、膨大な仕事量になる。だから、この組み合わせは将来的に良い可能性を残すモノだと思う」

「F1カレンダーが24戦になった今、やるべきことは沢山ある。私は24時間働くけど、彼らは12時間ずつ分担して働けるからね!」

Franz Tost, Team Principal, AlphaTauri, with Laurent Mekies, Sporting Director, Ferrari

Franz Tost, Team Principal, AlphaTauri, with Laurent Mekies, Sporting Director, Ferrari

Photo by: Sam Bloxham / Motorsport Images

「実際、CEOとチーム代表がいるのはいい形なんだ。将来のための枠組みを作ることができるからね。レースというのは集中力のいる仕事だから、ふたりで分担したほうが良いんだ」

 また、トストが担当した若手ドライバーたちは、トロロッソやアルファタウリで必ずしも楽な日々を過ごしてきた訳ではない。レッドブルの育成プログラムを率いるヘルムート・マルコと同様に、トストもまた、自分の考えをハッキリと口にする人物だからだ。しかし、ドライバーたちは”ボス”としてのトストには好意的な意見を持ってる。

 2度の世界チャンピオンにまで成長したフェルスタッペンは、トストについて次のように語る。

「フランツとは1年ちょっとの間、一緒に過ごしたよ」

「時に、キャリア初期にフランツのような人物がそばにいるのは良いことだと思う。彼も最初の頃は沢山助けてくれたし、アドバイスを共有して、経験を共にできたと思う」

「F1に昇格すると、誰もが短期間で多くのことを成し遂げようとすると思いがちだが、時には全てを落ち着かせることも大切なんだ。彼とおしゃべりするだけでも、かなりの助けになったんだ」

「彼はトロロッソとアルファタウリをこれだけ長く牽引してきた。そして多くの才能あるドライバーが親チームへ進むのを彼は見てきた。素晴らしいキャリアだ」

「そしてもちろん、彼が去ることは悲しいが、F1でこれだけの何月を過ごしてきたのだから、どこかしらのタイミングで、もう少し家族との時間も持つべきだと思う」

 トロロッソやレッドブルを経て、現在はウイリアムズで走るアレクサンダー・アルボンは、トストについて次のように語っている。

「僕はフランツのことが、人としてとても好きなんだ」

「彼は本当の意味でのレーサーだった。彼のアプローチはとても技術的で、多くのルーキーを受け入れていたから、何が必要なのかを理解していたように思う」

「僕は6ヵ月ほどチームで過ごした。彼は僕に、F1ドライバーになるために何が必要なのかを教えてくれて、そのための準備を手伝ってくれた。FIA F2から昇格したドライバーにとっては、自分がどんな状況に置かれているかを理解することができないからね」

「でも、彼は多くの人々、多くのドライバーとそういった経験を積んでいたんだ」

 現在はフェラーリドライバーとしてF1を走るサインツJr.は「フランツのことを尊敬している」として、次のように続けた。

「彼は長い間チームに携わり、トロロッソから今はアルファタウリに所属していた多くの若手ドライバーたちは、彼のおかげで良いドライバー、より良いプロ、より良い人間に成長することができた」

Franz Tost, Team Principal, Scuderia AlphaTauri, in the team principals Press Conference

Franz Tost, Team Principal, Scuderia AlphaTauri, in the team principals Press Conference

Photo by: FIA Pool

 トストは引退後の計画として、モータースポーツ人生を歩む前から好きだったというスキーに時間を割くつもりだと語っている。

「若い頃は、いつもスキーレースに参加していたんだ」と彼は言う。

「でもここ20〜30年はスキーに行く時間がなくて、ここ3年は1日も行けていない。なぜかって? F1カレンダーを見れば分かるはずだ」

「我々は11月末から12月初頭にかけてF1から離れるけど、12月は雪が無いことが多いんだ。スキーのベストシーズンは2月と3月……でもそこでF1テストが行なわれるんだ」

「そしてバーレーン、今年はサウジアラビア、メルボルンへ行くから、スキーの時期は終わってしまう。時間が無いんだよ……」

 
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