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今や欠かせない? レーシングドライバー/ライダーが、自転車でトレーニングをする理由

新しい生活スタイルが求められるようになった現在において、多くの人が運動や通勤に自転車を採り入れている。この自転車は、レーシングドライバー/ライダーたちが、以前からトレーニングの一環として活用してきた。その理由に迫る。

Ukyo Katayama

Ukyo Katayama

Katayama Planning

 多くのレーシングドライバーやライダーが、トレーニングに自転車を取り入れている。逆に自転車でのトレーニングを行なっていない存在の方が珍しい……今やそんな状況だ。その結果、ドライバーやライダーのSNSを見ると、彼らが自転車でトレーニングしている画像に出くわす頻度が多い。

 では自転車でのトレーニングは、どのようにモータースポーツを戦う上で活きるのだろうか?

■心肺機能やスタミナを鍛えるには、絶好のスポーツ:佐藤琢磨

 現在インディカー・シリーズを戦う佐藤琢磨は、「心肺機能を鍛える」と語る。佐藤はモータースポーツを始める前、自転車競技に勤しんでいた。高校ではインターハイで優勝し、大学でも全日本学生選手権を優勝するなど、実績を残している人物である。

Takuma Sato

Takuma Sato

Photo by: SPORTS BIZ

「基本的には心肺機能を鍛えるんです。そして何よりも楽しくトレーニングできる」

 そう佐藤は語る。

「シューズひとつあればできるという意味では、ランニングは素晴らしいと思います。でも、スピードが出ないから移動範囲は限られるので、景色も大きくは変わらないですし、下りでも休めないから、長時間やるのは相当な負荷になります。2時間ジョギングを続けるというのは、メンタル的にもかなりきついです」

「でも自転車なら、2時間ってあっという間なんですよ。景色も変わりますし、スピード感もあるので楽しい。登り、下り、平地と、まったく異なる力の使い方にもなります」

「長時間運動を続けるという意味では、自転車は素晴らしいんです。ターゲットにしている心拍数に応じて、ロングスローディスタンス(LSD/長い距離をゆっくり走ること)やることもできるし、有酸素から無酸素に変わるところを”AT値(無酸素性作業閾値)”と言いますけど、その付近でインターバルを組むこともできます。狙った領域での身体の作り方を組むことができるというのも、自転車の魅力です」

「エネルギーを完全に使い切るということもできます。ランニングだと、使い切った瞬間に転んでしまいますが、自転車の場合は思い切り全部使い切ることができます。しかも惰性で進んでいきますから、転ぶこともないです。そういう意味では、究極まで追い込むこともできるんです」

「首だとか強化しなきゃいけないところはジムで作っていきます。でも、ベースとなる心肺機能やスタミナを作るには、自転車は絶好のスポーツです。そしてレース好きで機械好きの僕らにとっては、すごく良いアイテムですよ」

■自転車なら、ものすごく効率的に追い込める:片山右京

 東京オリンピック・パラリンピックの自転車競技のスポーツマネージャーを務める元F1ドライバーの片山右京は、「僕は琢磨みたいな本物の自転車乗りじゃないけど……」と前置きしながら、自転車でのトレーニングがモータースポーツに活きる理由について次のように語った。

Ukyo Katayama

Ukyo Katayama

写真:: Katayama Planning

Ukyo Katayama

Ukyo Katayama

写真:: Katayama Planning

Ukyo Katayama

Ukyo Katayama

写真:: Katayama Planning

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「自転車で心拍数を引き上げようとしたり、体重を落とそうとするなら、100kmも150kmも走らなきゃいけないように感じるかもしれない。でも傾度6〜7%のゆるい坂を200mか300mくらいダッシュするというインターバルを5本もやれば、すごく負荷をかけられます」

 そう片山は語る。

「心肺機能を高めるためには、自転車で上り坂を走る方が、ランニングよりもずっといい。もちろん、初心者がすぐにそれをやっちゃいけないけど、そういう負荷をかけられるスポーツは他にないです。単純に強くなろうと思ったら、それをやればいいと思います」

「自転車で走れば景色も変わるから、気分も紛れます。峠に行って、気分が良い時に追い込んでみたら……ものすごく効率的に追い込めます。そこから休む時間を多く取ってリカバーして自分の限界を超えると、短い間で強くなれる。そうして心臓が強くなれば横Gに耐えられて、脳もしっかりと冷静でいられるようになります」

 今では自転車競技で要職に就く片山だが、実際に自身が現役だった頃には、自転車を使ったトレーニングはあまり取り入れていなかったという。

「僕も現役の時に自転車やっておけばよかったな。トレーナーにやらされたけど、遅かったんです」

「自転車は、病院のリハビリでも使われるような道具なんで、すごく身体に優しい。歳を重ねても、スピードを出さずに安全に気をつけて乗れば、老若男女問わず楽しめる。生涯楽しむスポーツとしては、とても良いと思います」

■絶対的なスピード感覚も鍛えられる?:笹原右京

 今季はスーパーGTに参戦、スーパーフォーミュラでも初めて表彰台に登壇した笹原右京は、最近自転車でのトレーニングを始めたひとり。その笹原は、心肺機能強化はもちろんのこと、違う部分にも役立てられるのではないかと語る。

Ukyo Sasahara

Ukyo Sasahara

写真:: Motorsport.com / Japan

Ukyo Sasahara

Ukyo Sasahara

写真:: Motorsport.com / Japan

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「よく言われるのが心肺機能だったり、筋肉の強化に繋がるということですが、自転車はスピードが出るモノなので、それを使って絶対的なスピードの感覚を養ったり、そのズレをできるだけなくしていきたいと思っています」

 そう笹原は語る。

「僕は常にそれを養っておきたいと思っています。速度域も目線も、レーシングカーとは違います。でも絶対的な感覚は何においても似ている気がしてて、どういうスピードで走っているのかという精度がどのくらい自分の中にあるかは、必要なモノだと思っているんです」

「自転車は自分の力……スピードを出すのも緩めるのも自分自身です。スピード感覚を養いつつ、体を鍛えるということにも繋がれば、合理的なトレーニングになるんじゃないかと思います」

 そう語る笹原は、心肺機能を強化することの重要性について、次のように加えている。

「予選の方が、決勝よりも心拍数が高くなることが多いです。予選一発に向けて集中し、速いスピードで1周を走らなきゃいけないから、それについていける心拍数でなければいけません。でも決勝では、どんな状況になっても、常に心拍数を安定させて冷静な判断ができるようにしていなきゃいけない。それが上下してしまうと、ラップタイムや集中力に影響を及ぼしてしまいます」

「日頃から、どう安定させればいいか、そして予選ではどう上げられるようにすればいいかというのを考えています。それを鍛えられるのが自転車だと思います」

 そう話す笹原をサポートしているのが、自転車メーカーのスペシャライズドである。スペシャライズドはロードバイクのトップメーカーであり、ツール・ド・フランスに参戦するチームにもフレームを供給するなどしている。

 そのスペシャライズドは昨年から笹原にロードバイクを提供しトレーニングをサポートしてきたが、同社の板垣響氏は、自転車でのトレーニングの意味について次のように語った。

「自転車はどんな乗り方もできます。ロングライドという方法で心拍数や肺活量を引き上げることもできますし、スプリントをやれば無酸素運動もできます」

 そう板垣氏は語る。

「長い距離をゆったり走るLSDというトレーニングをする方もいる。LSDは運動量はあまり多くないですが、一定の心拍数で走り続けると基礎的な体力はつきますし、平常時の心拍数は下がってきます」

「心拍数の上限を引き上げたいなら、スプリントやヒルクライムをやって、強度が高いところでずっと続けるということもできます。最大心拍数ギリギリのところで頑張れば、底上げできます」

「メンタル的な部分でも、自転車乗っている時にはゾーンに入りやすい。そういう意味では、メンタルも鍛えやすいのかもしれません。モータースポーツをやっている方にも、とても効果はあるのかなと思います」

 また同社の松岡直紀氏は、バランス感覚を養う上でも、自転車は活きるはずだと語る。

「モータースポーツってバランス感覚が必要じゃないですか。それを感じる力を養えると思います。自転車は二輪ですし、グリップ力もそんなに高くない。そういう意味ではグリップを感じながら操るという感覚が研ぎ澄まされていくと思うんですよ。普通に走るだけならそんな感覚は必要ないかもしれませんが、攻めた時のバランス感覚、流れるか流れないかという部分の感覚は研ぎ澄まされると思います」

■サイクリングを楽しむドライバー/ライダーたち

バルテリ・ボッタス

バルテリ・ボッタス

写真:: Sutton Images

ロバート・クビサ

ロバート・クビサ

写真:: Simon Galloway / Motorsport Images

Robert Kubica, Alfa Romeo walks the track on a bike

Robert Kubica, Alfa Romeo walks the track on a bike

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

ミック・シューマッハー

ミック・シューマッハー

写真:: Zak Mauger / Motorsport Images

アレクサンダー・アルボン

アレクサンダー・アルボン

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

セバスチャン・ベッテル

セバスチャン・ベッテル

写真:: Steven Tee / Motorsport Images

シャルル・ルクレール

シャルル・ルクレール

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

ランド・ノリス

ランド・ノリス

写真:: Steven Tee / Motorsport Images

ピエール・ガスリー

ピエール・ガスリー

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

セバスチャン・ベッテル

セバスチャン・ベッテル

写真:: Jerry Andre / Motorsport Images

セルジオ・ペレスとエステバン・オコン

セルジオ・ペレスとエステバン・オコン

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

ブラッドリー・スミス

ブラッドリー・スミス

写真:: Gold and Goose / Motorsport Images

ホルヘ・ロレンソ

ホルヘ・ロレンソ

ジェンソン・バトン

ジェンソン・バトン

写真:: Steven Tee / Motorsport Images

バルテリ・ボッタス

バルテリ・ボッタス

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

ジョニー・ハーバート

ジョニー・ハーバート

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

ランド・ノリス

ランド・ノリス

写真:: Andy Hone / Motorsport Images

ケビン・マグヌッセン

ケビン・マグヌッセン

写真:: Andy Hone / Motorsport Images

バルテリ・ボッタス

バルテリ・ボッタス

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

トム・クリステンセンやアラン・マクニッシュなど

トム・クリステンセンやアラン・マクニッシュなど

写真:: Audi Communications Motorsport

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 今や自転車は、モータースポーツにおいても欠かせない存在になっている。冒頭に登場した佐藤琢磨は、自転車の”楽しさ”についても、次のように語ってくれた。

「子供の行動範囲が広がるのは、自転車に乗れるようになった時。そしてとても身近なもので、機械であって、それを触ることができる。だから素晴らしい乗り物だと思うんですよね」

 そう佐藤は語る。

「乗り物に乗る楽しさを感じられるモノです。ブレーキングがあってコーナリングがあるという意味では、とても共通点があります」

「自転車もすごい世界ですよ。道具を使う競技でもあるし、テクノロジーという意味で共通点もあるし、すごく面白い世界ですね。自転車乗りはクルマ好きだし、クルマ乗りも自転車に興味がある。そういう意味では行ったり来たりですね。共通項は多いと思います」

 

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