2024年後半戦に大苦戦、ダブルタイトル獲得を逃したレッドブルF1。でもその苦悩は将来に向けて重要だった?
2024年シーズン開幕直後は圧倒的なパフォーマンスを見せながら、後半には失速してしまったレッドブル。テクニカルディレクターのピエール・ワシェは、将来に向けて重要な学びになったと語った。
Max Verstappen, Red Bull Racing RB20, Lando Norris, McLaren MCL38
写真:: Red Bull Content Pool
レッドブル・レーシングのテクニカルディレクターであるピエール・ワシェは、風洞実験の結果と実車の走行データの相関関係が100%取れているとは、まだ確信できていないようだ。
近年のF1は、チーム間の差が非常に小さくなっている。そのため、ほんの僅かなことで、勢力図がガラリと変わってしまうことが少なくない。2024年のレッドブルがまさにその好例であろう。シーズン序盤は圧倒的な成績を誇ったのに、後半に向けては大きくポジションを落としてしまったからだ。
そんなレッドブルは、2025年に向けて完全復活を目指している。しかし、まだ危機を脱していないことを認識しているようだ。
レッドブルの2024年コンストラクターズタイトル獲得を阻んだマシンのバランスの問題は、風洞実験などのデータと実車の走行データとの相関関係が原因。チームは両方のデータを一致させるのに苦労し、それが失速につながった。
レッドブルがその問題を認識できたのは、9月のイタリアGPでのことだった。ここでセットアップの実験を行なって初めて、チームはようやく何が起きているのか、どうやってそれを修正すればいいのかの手がかりを見つけはじめ、アメリカGPでその対策となるアップデートを投入。ドライバーたちにとってようやく一体感を感じられるマシンにすることができた。
レッドブルの不振は、現在使っている古い風洞を含む、手元にある開発ツールには完全に頼れないことを如実に示した。今使われている風洞は70年以上前に作られた古いものであり、新型風洞を2026年に稼働させる予定である。
「相関関係に問題があった場合、確かに少し迷ってしまうことになる」
そうワシェは語った。
「ツールを信頼できなくなってしまうからだ。ツールを信頼できなくなったら、ツールを修正して、相関関係を再び見つける方法を見つけなければならない。すると、自分が行なっていること全てに疑問を抱くという点で迷ってしまう。迷うのではなく、ツールがもたらす結果に疑問を抱いてしまうんだ」
ただワシェは、現実世界と仮想世界の間でデータを100%一致させることは不可能であるため、相関関係の問題が「完全に解決することはない」とも言う。
ただ、現在のレギュレーションが最終年に突入し、開発の余地が小さくなってきていることが、レッドブルの置かれている状況を複雑にしている。そんな中でパフォーマンスを発揮する上では、高い精度が求められる。コンマ1秒でも稼がなければいけない状況では、相関関係の問題が大きな影響を及ぼす可能性がある。
「一定期間同じ種類のレギュレーションが続くと、得られるパフォーマンスは非常に小さくなり、精度に対する要求はさらに厳しくなる」
そうワシェは語った。
「非常に小さなモノを探すんだ。エアロ面でも、サスペンションの面でも同じだが、フロアや車体などで、2〜3のダウンフォースポイントを探す。これはマシンの残りの部分や、CFDでテストできないという理由だけで風洞でテストしなかった領域にも影響することになる。この段階で危険になり始める」
「探そうとするパフォーマンスの向上域は小さく、次にいくつかの物理的な部分を再現できないため、相関の問題があるのだ」
Pierre Wache, Race Engineer, Red Bull Racing, Helmut Marko, Consultant, Red Bull Racing, in the garage
Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images
レッドブルが投入した新技術のいくつかは、より多くのダウンフォースを生み出すはずだった。しかし実際には、望ましくない副作用が伴い、マシンのバランスにも影響を及ぼしてしまうことになった。
「定義上、(風洞内は)現実とは異なり、より小さなモデルで作業することになる。正直に言って、他の全てのチームも同じ問題を抱えているはずだ」
そうワシェは語った。確かにレッドブルだけが2024年シーズン中に、アップデートに失敗したわけではない。フェラーリやアストンマーティン、レーシングブルズ(昨年はRB)なども、アップデートが功を奏さないばかりか、逆にパフォーマンスを落としてしまうようなシーンもあった。
一方でこういう落とし穴を避けられたチームのひとつがマクラーレンで、アップデートを施す度にパフォーマンスを上げることになった。
「昨年はそうだった」
ワシェはそう認めた。
「しかし分からない。シーズンのはじめ頃、彼らはどこにもいなかった。その前の年もどこにもいなかった。2022年もそうだ。マクラーレンはマイアミGP以降急激に良いクルマを作ったが、その前の2年半は印象的なモノではなかった」
「彼らが今どこにいるのかは分からないが、何よりもなぜ彼らはそれ以前にパフォーマンスを見つけられなかったのかは分からない。それが相関関係によるモノなのか、それとも何か他の原因によるモノなのかも分からない。私は彼らのチームにいるわけではないからね。しかし我々にとっては今、追加のパフォーマンスを見つけるのがより難しくなっているという結果に繋がった。我々が使えるツールであればそれはなおさらだ」
Lando Norris, McLaren MCL38, leads Max Verstappen, Red Bull Racing RB20
Photo by: Alexander Trienitz
そんな中でレッドブルは相関関係をどの程度改善できたのだろうか?
「我々が理解している分野では改善されたはずだ」とワシェは言う。
「しかしF1では、常に別の問題に翻弄されることがある。それが現実であり、我々がここにいるのは、これから起こる問題を予測しようとしているからだ。システムを盲目的に信頼するのは危険だ。全てそうする必要はないとは言わないが、全てを視野に入れて、テストしたものをそのままコースに持ち込まないようにする必要もある」
一方で健全な懐疑心を持つことは、建設的な考え方の一部でもあるかもしれない。
「チームを良い状態に保つことができるのは、疑念を抱き、自分に自信が持てない時だけだ。自分に自信があれば、自分が失敗者だというのは明確だ」とワシェは続けた。
「正直に言うと、我々がこの1年の間に直面したことは、エンジニアとして非常に前向きなことだ」
「勝っている時は、コース上で問題を抱えている時と同じレベルで問題や詳細を調べるようなことはない。最速ではなくなったら、調べて学ぶものだ。そして学べば学ぶほど、将来への投資になる」
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