F1 ラスベガスGP

スタンディングウェーブにグレイニング……F1ラスベガスGPがタイヤに過酷なのはなぜか?

初開催となるF1ラスベガスGP。サーキットレイアウトからすれば、長いストレートがあり、高速コーナーがないため、タイヤが暖まらない。加えて気温が低いことが予想されるため、様々な困難が待ち構えている。

編集: 2023/11/14 18:35

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Las Vegas GP rendering

 今週末に開催されるF1ラスベガスは、11月中旬という開催時期、そしてナイトレースということもあり、全てのセッションで気温が10度以下になるとの予報がある。そうなると、タイヤを扱うのが著しく難しくなる可能性がある。

 F1ラズベガスGPの舞台であるアメリカ・ネバダ州ラスベガスは、砂漠地帯に存在するカジノ都市だ。砂漠地帯にあるということは、日中と夜間の気温差が大きい。そんな場所で11月中旬という冬に近い時期での開催、さらにセッションがいずれも夜間に開催されるということで、通常とは異なる課題に晒される可能性がある。

 週末の間に、最も暖かくなると考えられるのは、現地20:30から開催されるフリー走行1回目と3回目。決勝は22時スタート、フリー走行2回目と予選は、日付が変わった24時にセッションが始まる。夜が深まるに連れ、当然気温も路面温度も下がってくる。

 F1はこれまでにも、寒いコンディションで走ったことがある。2020年にニュルブルクリンクで行なわれたアイフェルGPは、気温9度の中レースが開催された。またカタルニア・サーキットを舞台に行なわれたプレシーズンテストでは雪が降ったこともあり、各チームはビーニーを被り、ダウンコートを着込むのが常だ。

 しかしラスベガスが異なるのは、路面がニュルブルクリンクやカタルニアとは異なりスムーズなアスファルトになっているということ。しかも長いストレートが存在し、逆に高速コーナーがないため、タイヤが冷えてしまうはずだ。冷えてしまったタイヤを温める場所はほとんどない。

 そのためピレリは、FIAやF1、そしてチームからのデータを活用し、タイヤのグレイニングや振動に悩まされないように取り組んでいる。

 ピレリのモータースポーツ責任者であるマリオ・イゾラは、次のように説明する。

「バルセロナでも、同じような気温でプレシーズンテストを行なったことがある。しかしバルセロナは、タイヤにより多くの入力があるサーキットだ」

「また当時のアスファルトは、非常に攻撃的だったことを覚えている。再舗装される前だったからね。したがってラスベガスは、過去のデータと比較すると、かなり特殊な状況になると思う」

■タイヤに悪影響がある場所は?

 ラスベガス市街地コースは、富士スピードウェイのメインストレートよりも長いストレートがあるため、タイヤにほとんど入力がない時間が長くなる。ブレーキングゾーンで横方向に力がかかることもない。そのため、タイヤはどんどん冷えていく。

 コースレイアウトという面では、アゼルバイジャンの市街地コースが近いと言えるだろう。アゼルバイジャンのメインストレートを含む長い全開区間では、タイヤの表面温度が30度以上冷えることもある。ただ300km/h以上で走るため、タイヤの内部温度は高くなるはずだ。

 タイヤの表面が冷えてしまうと、コーナーでマシンはオーバーステアやアンダーステアになることがある。またブレーキングポイントが手前になり、ロックアップが起きやすくもなる。

「タイヤの温度を保つことができるだろうか?」

 そうイゾラは語る。

「こういう要因により、グレイニング(ささくれ摩耗)が発生する可能性がある」

「サーキットの厳しさを理解するために、通常シミュレータで行なうよりも事前に作業を進めた。またこのサーキットは高速であるが、シルバーストンなどのように入力が大きい高速コーナーがないため、コーナリング中の厳しさが小さいことも確認された」

「舗装は完全に公道用の舗装というわけではないが、粗さのレベルはかなり低いはずだ。舗装がスムーズであること、レイアウト、気温が低いという複合的な要因で、タイヤが発熱しにくいということを意味する。そして長いストレートで、タイヤを冷やすことになる」

 セーフティカーが出動すると、その問題はより顕著になるだろう。そして他にも問題があるとイゾラは指摘する。

「ストレートでは、スタンディングウェーブが発生する。この高速域におけるスタンディングウェーブから、タイヤを保護する必要がある」

 スタンディングウェーブとは、タイヤのサイドウォールが波打つように変形する現象のことだ。

 タイヤは通常は横から見ると円形だが、路面との接地面のみが平らに潰れている。この潰れた部分が路面から離れると、弧を描く形状に戻ろうとする。この時の速度が速くなればなるほど変形の頻度が高まり、サイドウォールが波打つような格好になってしまうのだ。

 なお2005年のアメリカGPでミシュランタイヤ勢が決勝レースを事実上棄権したのは、このスタンディングウェーブにより、タイヤが壊れる可能性が生じたからだった。

Las Vegas GP rendering

Photo by: Las Vegas GP

Las Vegas GP rendering

■トラブルの事前対策はできているのか?

 ラスベガスGPに向けてピレリは、FIAやF1、そして各チームに透明性を求めた。シミュレーションを終えたチームは、タイヤサプライヤーのピレリに情報をフィードバック。そして、その情報をピレリが他の関係者に共有した。

 ラスベガスGPへの期待の大きさを考えれば、このような”問題点”を放置しておくことは、誰にとっても得策ではない。

 ラスベガスGPに持ち込まれるタイヤは、最もやわらかい組み合わせであるC3~C5コンパウンドとなっている。このやわらかく粘りがあるタイヤが、熱を逃さないというチームの要求にも応えるはずだ。

 タイヤの内圧を高く保つことも義務付けられる。これによりサイドウォールの剛性が増し、スタンディングウェーブのようなタイヤの変形が起こりにくくなる。

 一方で、評価されつつも実際には変更されなかった点のひとつが、タイヤウォーマーの運用方法だ。

 タイヤウォーマーによる加熱温度を現在の最高温度である70度よりも引き上げることで、走り出しのタイヤ温度をより高温に保つことができるはずだ。また、一晩中ウォーマーをつけたままタイヤを温めておく案も検討された。そうすればタイヤがより長く熱を保つことができるはずだ。

 しかしイゾラは、ウォーマーの使用方法に関しては変更する必要がないと判断した理由について、次のように説明した。

「3つの最もソフトなコンパウンドを選択することにした。理由はシンプルに気温が非常に低くなることが予想されるためだ」

「我々は(タイヤウォーマーについて)話し合ったが、彼らが普段とは違うことをする必要はないと思う」

「我々にはウォーマーがある。70度というのは、グリップレベルの高いタイヤで走ることができる温度だ」

 

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