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名門ウイリアムズがついに身売りを検討。今が“売り時”と判断したのは何故なのか?

ウイリアムズがチームの一部または完全売却を検討しているというニュースは驚きをもって伝えられたが、同社の厳しい財政状況を考えると、悲しいことにそれは驚くべきことではないのかもしれない。

George Russell, Williams FW43

写真:: Mark Sutton / Motorsport Images

 5月29日、ウイリアムズグループがF1チームの株式売却を検討していることが明らかになった。現時点で様々なオプションを検討しているものの、場合によってはチームを完全に売却する可能性も視野に入れているようだ。

 ウイリアムズF1チームは、ここ数年間パフォーマンスの低下に悩まされてきた。2014年、2015年はそれぞれフェラーリ、レッドブルを上回りコンストラクターズランキング3位に入るなど“復活”を見せていたが、そこから獲得ポイントは減少の一途をたどり、2018年、2019年は2年連続でランキング最下位となってしまった。

 各F1チームは絶えず増加する支出と収入を釣り合わせる必要があるが、それが極めて難しいことであるのもまた事実。チームの成績が上向かないと分配金の額も下がり、パフォーマンス向上の為の資金が得られない悪循環に陥っていくのだ。

 チーム代表のフランク・ウイリアムズはパトリック・ヘッドと共にこのチームを立ち上げ、以来チームを売却することに抵抗し続けてきた。ここ数年も投資や買収のオファーがなかった訳ではないが、フランクは“家業”とも言えるこのビジネスを手放すつもりはなかった。しかしながら、最終的にヘッドが今が売り時だと判断したのだ。

 2009年にはトト・ウルフが株式を取得したが、彼がメルセデスに注目を移した後にそれはアメリカ人実業家のブラッド・ホリンガーによって購入された。ホリンガーは今もウイリアムズの重要な株主のひとりであり、17%の株式を保有している。

 そして2011年にウイリアムズは、フランクフルト証券取引所に上場するためのプロセスを開始した。これによりフランク・ウイリアムズが所有する一部の株式を利用して、20%の株式が取引可能となった。

 その後2019年12月には大規模な事業再編があった。成功を収めていたウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングが売却され、現金が流入。現在ウイリアムズグループは少数の株主によって維持されている。

 ウイリアムズは新たな投資、または新たなオーナーを募集することになるが、上場企業である以上、法的責任や財務上の透明性が求められる。彼らが発表した声明には次のように記されている。

「検討しているオプションとしては、新たな資本の調達、ウイリアムズ・グランプリ・ホールディングス(WGPH)の少数株主持分の売却、または会社全体の売却を含む、WGPHの多数株主持分の売却がある」

「最適な結果を求めて、決定はまだ下されていないが、関係者との議論を容易にするために、”正式な売却プロセス”の開始を発表する」

「そのプロセスに参加する全ての利害関係者は、WGPH理事会にとって納得のいく条件でWGPHとの機密保持契約を締結する必要がある」

「その後、そのような利害関係者にビジネスに関する特定の情報を提供する。そしてその利害関係者は、それぞれの提案を提出するように要求される」

 今回のウイリアムズに関するニュースは、彼らの2019年度決算と時を同じくして流れた。特にF1チームの収益減は顕著で、1億3070万ポンド(約173億円)から9540万ポンド(約127億円)に減少している。これは非常に大幅な減少と言える。100を超えるウイリアムズのF1マシンが担保としてリストアップされたという事実が、彼らの直面している厳しい現実を象徴している。

■2023年まで契約を結んでいたROKiTとの別れ

Mechanics wheel Nicholas Latifi, Williams FW43 back into the garage

Mechanics wheel Nicholas Latifi, Williams FW43 back into the garage

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 ただ、おそらく最も驚きべきことは、ウイリアムズCEOのマイク・オドリスコルがタイトルスポンサーのROKiTとのタイトルスポンサー契約終了を発表したことである。

 昨年2月に発表されたROKiTとの契約は、まさに理想的な組み合わせと言えた。2018年後半にウイリアムズはリッチエナジーとの契約をギリギリのところでハースにかっさらわれ、その後にどこからともなくROKiTが現れたのだ。

 ROKiTのオーナー、ジョナサン・ケンドリック(元グッドイヤーのタイヤマンで、1978年にはウイリアムズと共に仕事をした)も、理想的なパートナーに思えた。彼は名門チームの短期的な不振を心配しておらず、2023年までウイリアムズとの契約を延長しており、全てが順調に見えた。ただ、計画は思うように進んでいかなかった。

 もちろん、このような状況は一夜にして起こったわけではない。新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい始め、レースが開催されないことでチームの収入に大きな影響が出始めた。チームもタイトルスポンサーを失う可能性が高いことを理解していたはずだ。それは完全な災難だったと言える。

■ニコラス・ラティフィの父が“融資”の可能性。しかし“投資”には至らない?

Nicholas Latifi, Williams Racing

Nicholas Latifi, Williams Racing

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 ウイリアムズはこの嵐を乗り越えるために先月、レギュラードライバー、ニコラス・ラティフィの父であるマイケル・ラティフィと融資に関する交渉をした。彼は協力的なパートナーであり、何よりウイリアムズの組織としての健全さを維持するための十分な理由がある。

 フランクの娘であり、チームの副代表を務めるクレア・ウイリアムズは、「その融資のパッケージは、チームが前進するのに必要なリソースを提供する」と語った。

 そんな中で、ひとつ興味深いのが過去5年間の年次決算の報告日だ。ウイリアムズは過去5年間で4月27日、11日、5日、20日、5日に報告している。つまり、今年度の決算は例年よりも遅いタイミングで公開されたのだ。彼らはROKiTとの状況を明確にし、ラティフィからの融資を最終決定するための時間的な猶予を確保したのだ。

 また、チームは今後数ヵ月以内に新しいコンコルド協定にサインし、5年間このスポーツで競技することに同意する必要があった。そのため、それまでに今後に向けての全ての選択肢を評価することは当然のことと言える。

 さらにCEOのオドリスコルが、2021年以降の規則変更について正式に認めたことも重要だ。彼は声明の中で「リバティメディア(F1オーナー)の長期的なビジョンと計画は、2021年以降に全てのチームがより公平に競い合えると確信している」と述べた。

 ウイリアムズ売却においてのマイナス面を挙げるとするならば、今はコロナ禍によって何かを売却するのに適したタイミングではないということだ。F1チームの所有に興味を持つような億万長者も、数ヵ月前ほど裕福ではないかもしれないし、ウイリアムズと同じく不確実性に直面しているかもしれない。また、グリッドの後方にいるウイリアムズへの出資を真っ先に考える投資家がいるかどうかも懸念材料と言える。

 しかし、歴史ある名門チームが初めて売りに出されているという事実は魅力的であり、設備の整った施設には経験豊富な人材も多い。そして誰もが知るように、2021年からのルール変更によって資金不足のチームが上位チームとのギャップを縮めるチャンスが生まれた。ウイリアムズは適切な支援さえあれば、再浮上する可能性があるのだ。そのため、既に熱意のある投資家と真剣な話し合いが行なわれている可能性もある。

 ラティフィの父はその候補のひとりであることは間違いない。しかし“融資”と“投資”は全くの別物だ。彼はマクラーレンの株式を10%購入した際にかなりの資金を投じており、ウイリアムズに投資をするだけの資金力が残っているかどうかは分からない。

 確かにウイリアムズは難しい状況にあるが、今回の売却プロセスは決して「在庫処分の閉店セール」ではないことを付け加えておく。クレア・ウイリアムズは今シーズンの予算に関しては問題ないと語っているように、これは今後の選択肢を確認するための試みであり、時間通りに進行しているものなのだ。

「絶望的な状況だとは思いません」と彼女は語った。

「それは正しいことであり、賢明なことだと思います。そしてウイリアムズ家は常に我々F1チームのことを優先してきました」

「そしてこの時期に投資を求めるということは、私たちチームの将来を守り、ここで働く人たちを守るという哲学と完全に一致していると感じています」

 

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Photo by: Motorsport Images

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