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セナのアタックラップはなぜ速く見える? それを紐解き、現代に活かすF1映像チーム

サーキットを駆けるアイルトン・セナのマクラーレンは、ラップタイム的には現代のマシンよりもかなり遅いにも関わらず、むしろ速く見える。F1の映像チームはその謎を紐解き、F1ファンにより迫力のある映像を届けようと奮闘している。

Ayrton Senna, McLaren

写真:: LAT Images

 先日、マクラーレンのカルロス・サインツJr.がTwitterに投稿したコメントが話題となった。彼は1991年イギリスGPでのアイルトン・セナの予選アタック映像を引用し、驚異的なスピードを誇る現代のマシンよりも速く見えるとツイートしたのだ。

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 サインツJr.が言うように、2020年のF1マシンは洗練された車体と強力なパワーユニットを備えており、史上最速のマシンと言える。しかしながら、最新鋭のハイビジョン映像と、プロのカメラマンやオペレーターによるカメラワークが、マシンの“生々しさ”を奪ってしまうこともある。

 マクラーレンのテクニカル・ディレクターを務めるジェームス・キーは、シルバーストンで開催されたF1 70周年記念GPの際、セナの予選ラップのような印象的な映像は、現在にはないものを映し出していると語った。

「セナの予選ラップを振り返ってみると、いつも見応えがあっただろう? 若き日の私にインスピレーションを与えてくれた昔のレースを見返すのが好きなんだ」

 そうキーは語った。

「テレビでは(現代の)マシンの速さが十分に映し出せていないと思う」

「撮るのが難しいというのは理解している。マシンが縁石を通過する際に低い位置から撮った映像では、スピード感を感じることができるが、ストレートを遠目から撮った映像では順位は分かりやすい一方で速さは伝わらない。このマシンがどれほど速いかを見せる方法があれば、それは素晴らしいことだ」

「F1マシンがコプスを初めて全開で通過した時を覚えている。かつてはフリー走行の時、コプスのイン側でマシンが通過するのを見ていたが、それは間違いなく壮観だった。今ではもっと速くなっている」

「それはここのターン1も同じで、テレビで見ていてもあの感覚は全く味わえない。もし、我々が実際に見ているものをそのまま伝えるやり方があれば、セナの映像のように見せられるのではないかと思う」

■映像技術の進歩が迫力を失わせることがある

Carlos Sainz Jr., McLaren MCL35

Carlos Sainz Jr., McLaren MCL35

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

 スクリーン上でF1マシンの迫力を伝えるのは簡単なことではない。ストレートを驚異的な速さで通過していくマシンの生々しさを、ソファに腰掛けたファンが見ている平坦なスクリーンに100%再現することは不可能に近い。

 しかし、それを限りなく100%に近付けようと努力しているのが、F1の放送・メディアディレクターであるディーン・ロックである。彼はセナのラップがなぜあそこまで速く見えるのかについて、単純に説明することはできないという。

 1991年のF1マシンと現在のF1マシンのパフォーマンス差は極めて大きい。1991年当時とコースレイアウトが変わらないルフィールド(現在のターン7)の出口からクラブ(現在の最終コーナー)の出口までを比較すると、セナは高速S字コーナーであるチャペルを出た時点で4秒遅れており、クラブを通過した時点では9秒も遅い。

 しかしながら、1991年のマシンは激しい動きによってスピード不足を補っており、より壮観に見えるというのも事実だ。バンプで跳ねるマシンを見ると、ドライバーがコーナリング中にマシンと格闘している様がよく伝わる。

 ロックは次のように語る。

「(1991年の)マシンは乱暴で、あらゆる場所で動いて、跳ねて、ドリフトしている。今のマシンはスムーズな乗り心地になっていて、コース自体もスムーズになっている」

「またオンボードを見た時に、ドライバーの動きが少なくなっている。彼らは同じようにマシンをドライブしているのにだ。動きが少ないと、マシンの中でドライバーが何をしているのかがあまり分からない」

 また、映像にまつわる技術の進歩も要因に挙げられる。現在のF1の映像は16:9のワイドスクリーンで映し出されているが、当時の比率は4:3であり、視野が狭かった。これは映像のスピード感にも影響を与える。そしてカメラマンの撮影位置も安全上の理由から変わっており、現代では当時のようにウォールのすぐ側で撮影することができない。

 それに、当時は現代のようなHD画質でなかったことも関係しているかもしれない。映像の乱れやブレが一般的だった1990年代と比べ、現代の映像が鮮明で滑らかなことも、視聴者に伝わる迫力に影響している可能性もある。

■F1映像チームの試行錯誤

An FOM television cameraman at work

An FOM television cameraman at work

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 スピードに関して、もうひとつ重要な要素がある。それは音だ。F1のマシンの速さを感じるのは視覚的なものに限ったことではなく、その音にも感情を揺さぶられる。その点でセナの映像の迫力には、マシン後部に搭載されたホンダの自然吸気V型12気筒エンジンが一役買っていると言える。

「あの映像の中で私の心に飛び込んできたものは、音だと思う」とロックは続ける。

「音は大きな役割を果たしていると思う。我々のトラックディレクターが“ユーロファイター”という戦闘機の話をしていた。その音を聞くととても印象的で、より速く感じた。かなり荒々しい音だった」

「その映像はとても興味深いと思ったので、我々の映像チームにも見せようと思った。我々もこの感覚に近づけられるように、音響の改善をしていきたい。我々は150本のマイクを用意して、より耳に残るようなサウンドにしようとしているんだ」

 F1では、空中に設置された高速のケーブルカメラなど、マシンのスピードをより印象的に感じてもらうために技術やテクニックを駆使している。ロックは、ただマシンにズームインするだけではこの問題を解決できないことを十分に認識しており、視覚的な見応えを向上するために巧妙なカメラワークを採用するなどしている。

「バクーやロシアなど、いくつかの場所では、ある意味ズルのようなことをしている」とロックは言う。

「カメラマンはあえて(最初は)マシンをフレームに入れないようにする。そして我々が『今だ、行け!』と言うと彼らはサッと動く(マシンをフレームに入れる)ので、スピードがよく伝わる。スパや他の場所でもそうしている」

「カメラマンがマシンをズームしたまま追いかけていないか、厳しく見ている。それだとスピード感が失われてしまうからね」

 ロックはカメラの配置にも気を遣っている。視聴者がストレートを走るマシンの全体的なスピードを把握するのは難しいが、彼はブレーキングポイントにカメラを配置することで、速度の変化を強調することができると考えている。

「スパでは、丘を下った先に配置して成功を収めた」とロック。

「我々はここ数年間、縁石カメラやレンズ固定式カメラを使って多くのテストを行なってきた。我々はどうすればいいのか、それについて良いコンセプトがあるのだ」

「今は高性能なハイスピードカメラがいくつか出てきているが、これは我々が話していることとは正反対のものだ。それはF1マシンがどういう動きをしているのかを見せるものだ」

 このように映像の“見せ方”次第で改善できることは多いかもしれないが、現代のF1マシンがハイブリッドである以上、音の問題はどうしようもないように思われる。しかしながらロックは、音の面でもできることがあると言う。

「音響は常に良くなってきていると思う。我々には5.1chサラウンドの音響システムがあり、マシンには複数のマイクが取り付けられている」

「正直あの(セナの)映像のようなエンジン音は少し羨ましく思うが、我々はいろんなことをやっている。マシンからは様々な音を聴くことができるし、ベルギーで展開する予定の特別なカメラにはとてもワクワクしている」

 新型コロナウイルスのパンデミックにより、ファンはF1マシンを間近で見ることができない。だからこそ、ファンはテレビクルーの働きに頼るしかないのだ。幸いなことに、F1の映像チームは常に全力を尽くし、進化を続けているようだ。

 

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