F1

ウイリアムズはなぜローガン・サージェントとの契約を1年延長したのか? 背景から考えるふたつの理由

ウイリアムズがローガン・サージェントにF1で2年目を戦う権利を与えたことについて、賛否両論飛び交っている。しかしチーム代表のジェームス・ボウルズがサージェントを信頼したのには、いくつか理由があるようだ。

Filip Cleeren

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編集: 2024/02/20 8:11

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Logan Sargeant, Williams FW45

 ウイリアムズは、来季のアレクサンダー・アルボンのチームメイトとして、ローガン・サージェントとの契約を延長することを選んだ。チーム代表のジェームス・ボウルズがこの決断を下したのには、いくつかの理由があるようだ。

 今季F1デビューを果たしたサージェントは、チームメイトのアルボンと比較して厳しいシーズンを過ごすことになった。予選では22戦全敗。獲得ポイントでも、アルボンが27ポイントを手にしたのに対し、サージェントは僅か1。完敗と言える内容だった。

 リザルトがF1の全てである。そのため、ウイリアムズが今季限りでサージェントとの契約を終わらせ、来季は別のドライバーを起用するだろうというのが、大方の見方だったはずだ。

 しかしウイリアムズは最終的にサージェントに、2年目のシーズンに挑むチャンスを与えることを選んだ。この決断を下した背景には、サージェントがアルボンの潜在能力にかなり近いことを示唆するデータの存在があったようだ。

 ラスベガスGPの予選で、サージェントは6番手アルボンに次ぐ7番手となった。このことは、状況さえ整えば、色々と達成できることがあるということを示している。またスプリントフォーマットで行なわれたカタールGPでも、アルボンまで僅差に迫った。

 しかしこれらは単純には評価されず、予選順位が下がったり、クラッシュしたりしたことで、シートを失なうプレッシャーが増した。シーズン最終戦アブダビGPでも、Q1での2回のアタックはいずれもトラックリミット違反によりタイム抹消。ルーキーシーズン最後の一戦も、予選から躓くことになった。

 こういう古い格言がある。それは、遅く安定したドライバーを速くするよりも、速く不安定なドライバーを安定させる方が簡単だということだ。つまりウイリアムズは、”速くも不安定な”サージェントが、2023年に培った経験を武器に、2024年シーズンを戦い抜くことを期待している。アルボンという速いチームメイトに追いつくためにオーバードライブしてしまうのではなく、リスクをコントロールできるようになることを求められているのだ。

「最悪なことは、攻めすぎてオーバードライブしてしまうことだ。今は、限界がどこにあるかも分からないし、どこに戻ればいいのかも分からないんだ」

 ボウルズ代表はサージェントについて、ラスベガスGPの予選終了後にそう語っていた。

「彼は信じられないような仕事をしている。彼がどれほど良い仕事をしているのか、そしてその成長度合いを世界に説明するのは、おそらく難しいことだ。しかしルーキーとしてこのスポーツに参加し、数百kmテストで走っただけで自分とマシンの限界がどこにあるのかを見つけるのは本当に難しい。そこに到達するのに、1年かかったんだ」

「しかし今はその結果が表れてきており、それが報われつつある。ここ数レースで彼は本当に成長した」

 今季限りでアルファタウリのチーム代表を退くことになっているフランツ・トストも、ルーキードライバーが適切なグランプリドライバーになるには3年が必要だと常々言っていた。

 ルーキーシーズンながら、いきなり表彰台を獲得するなど大活躍したマクラーレンのオスカー・ピアストリは例外と言うこともできるが、彼の場合は特にシーズン後半優れたマシンに後押しされたという側面もある。実際、チームメイトであるランド・ノリスには、ダブルスコア以上の差をつけられているわけだ。そしてそのピアストリがFIA F3でチャンピオンを獲った時、彼と同じチームに所属して4ポイント差のランキング3位だったのが、サージェントだったのである。来季その才能を発揮することを、ウイリアムズは期待しているのだ。

■ルーキーの後任をルーキーにするわけにはいかない?

Alex Albon, Williams FW45, Logan Sargeant, Williams FW45

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

Alex Albon, Williams FW45, Logan Sargeant, Williams FW45

 もう一方で現実的な側面もある。ウイリアムズがサージェントとの契約を延長しなかったとしたら、一体誰が後任となったのだろうか?

 ウイリアムズの育成ドライバーであるザク・オサリバンは、今季FIA F3でランキング2位になったばかり。F1デビューするのはまだ準備が整ったとは言えない。また、もうひとりのウイリアムズ育成であるルーク・ブロウニングは、マカオGPを制したもののF3ではランキング15位。スーパーライセンスを手にする基準を満たしていない。

 以上のことを考えると、他のドライバーを招聘するしかない。そうなると候補に挙がるのはフェリペ・ドルゴビッチ、テオ・プルシェール、リアム・ローソンという面々になってくる。いずれも、2022年のFIA F2をサージェントよりも上位のランキングで終えたドライバーたちだ。しかしドルゴビッチはアストンマーチン、プルシェールはザウバー、ローソンはレッドブルの育成ドライバーであり、ウイリアムズ入りするのはそう簡単ではない。

 特にレッドブルが、今季代役参戦し、実績を残したローソンを手放すとは考えにくい。一方で別のF1チームの育成ドライバーながら、F2王者に輝きつつもF1チームのシートを手にできなかったドルゴビッチやプルシェールにとっては、チャンスだったかもしれない。

 しかしルーキードライバーを別のルーキードライバーに換えることにはリスクがある。学習プロセスと、ルーキーならではのミスを、一からやり直すことになるからだ。ウイリアムズとしては、来季こそより多くのポイントを確保したいため、そんな回り道をする余裕はない。

 しかも、前述のような他のF1チームの育成ドライバーに、経験を積むチャンスを与えてしまうことは、チームとしては将来的な利益には繋がりにくい。かつてウイリアムズに所属していたジョージ・ラッセルもメルセデスの育成ドライバーだったが、この時は3年間のレンタル契約であったため、より長期的な計画を立てることができた。そして3年目にはしっかりとポイントを獲得……ウイリアムズとしても恩恵を受けることができた。

 F1ドライバーの多くは、2024年限りで契約が満了することになっており、2025年以降については、より魅力的な選択肢が広がる可能性がある。そのことを考えると、このタイミングで新たにルーキードライバーを起用することは、あまり意味がないだろう。

 サージェントはそれらの状況もあって、1年間F1での運命を”延命”することができたと言えるかもしれない。その先も彼がF1に残り続けることができるかどうか……それは彼自身にかかっている。

 

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