メルセデスの辞書に盛者必衰の理はナシ。「F1に敗北はない。ただ学ぶだけだ」とチーム代表は来季の再起に目を向ける
2022年シーズンのトピックのひとつとして挙げられるのが、王者メルセデスの苦戦だ。しかし苦境の中で得られるモノは多いとして、チーム代表のトト・ウルフは2023年に向けた再起に焦点を移している。
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
メルセデスのトト・ウルフ代表は、チームは今季の苦戦から得られた糧は大きいと語った。
2014年にF1が現行のV6ターボ・ハイブリッド規定を導入して以降、常にメルセデスは常勝軍団としてF1のトップに君臨し続けてきた。2022年はレッドブルと死闘を繰り広げた末に、マックス・フェルスタッペンのドライバーズタイトル獲得を許したが、コンストラクターズタイトル8連覇は達成している。
今季からF1は新たな技術規定を導入したが、メルセデスは大いに苦戦。ハンガリーGPではジョージ・ラッセルが驚きのポールポジションを獲得するなど、シーズン中盤は盛り返したものの、直近のベルギーGPでは予選でトップのフェルスタッペンから2秒近く遅れるなど、復活は一筋縄ではいかない様子だ。
今季、メルセデスは14戦を終えて未勝利。今季のタイトル獲得のチャンスは既に彼方へ消え去っている。
F1の歴史を紐解くと、F1チームは負けて強くなることもある(無論、敗者としてシリーズを去るチームも多いが……)。メルセデスもこれまで、敗北から得られるメリットの多さを強調してきたが、喜怒哀楽の激しいシーズンを送ると「現実を受け入れることがとても難しくなる」とウルフは吐露している。ただこの半年で得た収穫は多いようだ。
「現在、我々は間違い続けている」
そうウルフは言う。
「色々なところで相関関係にズレが生じている。それが我々のパフォーマンスが低下させているんだ」
「おそらく、たったひとつのことが全てを覆い隠していて、そのためにマシン本来パーツに関する課題をクリアできていないのだ」
「タイヤを根本的に理解できていないだけで、他の部分は全て問題ないのか? それとも空力がダメなのか? それともメカニカルバランス? 解析するのはとても難しいことだと思う」
「F1でよく言われるように、負けることはない。ただ学ぶだけだ」
「しかし、それはかなり大変だと言える。いい感じのインスタグラムの投稿や、我々がここ8年で行なってきたことについて話したこと全てでは伝えきれない」
「ダンジョンに辿り着いた時、自分の信念と価値観にこだわり続けること、精神を強く保つこと、そして改善のために本当に執念深くあり続けること……この8年間について書かれた書物よりも、今年について書かれた書物の方が多いだろうね」
Fernando Alonso, Alpine A522, Lewis Hamilton, Mercedes W13, make contact on the opening lap
Photo by: Motorsport Images
メルセデスは現在、再起に向けて2023年シーズン用のマシンの開発に焦点を移している。ただその中でも、ウルフは今シーズンの残りを犠牲にしたくはないようだ。
「今年のレースで勝つという”野望”はまだある」と彼は言う。
「ハンガリーGPでそう言っていたとしたら、『まあ、それはかなり可能性があるね』と言ってもらえたと思う。今そんなことを言ったら、私はバカみたいだ」
「でも、今よりもずっと我々のマシンに適したサーキットはまだ残っている。予選で上手くいけば良いんだけどね。それが我々の目標であり、同時に来季に向けた大きな焦点でもある」
「それは明白なことだ。順位は今のまま……少なくともトップ3チームはそのままだ。ランキング2位でも3位でも、私にとっては負けていることに変わりはない」
ルイス・ハミルトンは来季マシンの到来を心待ちにしていると公言しているが、ウルフも今季の『W13』がメルセデスの歴史に名を残す”名車”にはなり得ないと明かしている。
「シュツットガルトのメルセデス・ベンツ・ミュージアムの一番高いところに置かれるとは思わない」
そうウルフは続ける。
「もしかしたら、倉庫の少し奥に入れられるかもしれないね」
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