周冠宇、F1デビュー決定後のSNSでの暴言に傷ついたと明かす「その多さにかなり驚いた」

　今シーズン、初めての中国人ドライバーとしてアルファロメオからF1デビューを果たした周冠宇は、F1参戦が決まったときからオンライン上でかなり暴言を浴びせられたという。これについて周は、当時非常に驚き、そしてかなり傷ついたことを明かした。

　周は昨年限りでFIA F2を卒業する形となり、今季からアルファロメオでバルテリ・ボッタスと組むことになった。彼は初の中国人F1ドライバーということになり、中国でのF1人気を引き上げるための起爆剤にもなれるとの期待が高まった。

　しかし周は、F1デビュー前はオンライン上で批判の対象となってしまった。周のそれまでの実績は、F1に適しているのかという点について疑問視され、持ち込み資金によってシートを確保した”ペイドライバーである”と揶揄されたのだ。周にシートを奪われる形になったアントニオ・ジョビナッツィも、「お金が支配する時、それは冷酷になる場合がある」と、周との持ち込み資金の”対決”で敗れたことを暗に示唆した。

　しかし周はデビュー戦となったバーレーンGPでは堅実な戦いぶりを披露し、いきなり10位入賞し1ポイントを獲得。第9戦カナダGPでも8位に入り、2度目の入賞を果たした。そうしたこともあり、周に対する評価は確実に高まっている。

「僕は自分の力を証明することができて、周りの人たちの見方を変えることができた。その点でとても満足している」

　周はサマーブレイクに入る前のインタビューで、motorsport.comに対してそう語った。

「かなり傷ついたんだ。僕はF2でトップ3に入り、スーパーライセンスポイントを満たして、夢にたどり着いた。でも色々な人が僕のこれまでの経歴を知らずに話す時には、僕としては少し傷つくことになる」

　周は、インターネット上に溢れる罵詈雑言が、彼を傷つけたモノの正体であると明かす。

「最近はみなさんが、インターネットやソーシャルメディアをたくさん使う」

「今回のことが起きた時、人種差別的だったり、それに近いコメントを投げかける人々の数に、とても驚いたんだ」

「F1には数多くのファンがいるけど、彼らの多くはF2やジュニアシリーズを追いかけているわけじゃない。彼らはF1しか見ていないんだ。だから僕が中国からやってきたということだけを見て、そこには何らかの理由があったはずだと言うんだ」

「それはちょっと辛いことだ。夢を持っていて、ついにそれを達成した時には、みんなが祝福してくれることを期待しているものなんだ。こういうメッセージを送られ、打ちのめされるためにここを目指しているわけじゃない」

「でも、こういうコメントを見たり、人々が僕に対して悪い言葉を投げかけても、僕が気分を害することはない。僕にできる最善のことは、コース上で全てを発揮するということだ。僕らはそれを証明することができたと思うから、今はとても満足している」

　周曰く、最近では受け取るメッセージの質が変わってきたという。中には、デビュー前に暴言を吐いたことについて、SNS上で実際に謝罪してきた人もいるとうだ。

「ソーシャルメディアは素晴らしいものだ。本来なら親しくなるチャンスのない人たちに、自分の個性を示すチャンスを与えてくれるんだからね」

　そう周は言う。

「でもその一方で、理由もなく暴言や悪いことを、理由もなく誰かに投げつけるというマイナス面もある」

「それは、契約にサインした時に想像していたモノとは違う。F2にいる時には、誰もがF1のシートを手にすることを望んでいる。2021年には誰もが、僕がアルピーヌのシートを手にすることを望んでいたんだ」

　周はまだ来季のシートを確保できていないが、アルファロメオに残ることを目指していると見られる。交渉は、サマーブレイク明けのベルギーGPの際にもスタートするようだ。