登録

Sign up for free

  • Get quick access to your favorite articles

  • Manage alerts on breaking news and favorite drivers

  • Make your voice heard with article commenting.

Motorsport prime

Discover premium content
登録

エディション

日本
分析

規制が進む”トリックステアリング”とは!? ゲイリー・アンダーソン解説

ジョーダンやジャガーでテクニカルディレクターを務めたゲイリー・アンダーソンが、規制が強化される”トリックステアリングシステム”について解説

Kimi Raikkonen, Ferrari SF70H, Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W08, Max Verstappen, Red Bull Racing RB13 and Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W08

写真:: Andrew Hone / Motorsport Images

 先週、FIAはステアリング操作に応じて車高が変化する”トリックステアリングシステム”の取り締まりを厳格化することを通達した。かつてジョーダンやジャガーといったF1チームでテクニカルディレクターを務めたゲイリー・アンダーソンが、このシステムを解説した。

※※※※※※※※※※

 いくつかのF1チームはステアリングの舵角に応じてF1マシンのフロントの車高を変化させることで、空力的なアドバンテージを得ている。FIAがこれを規制するため、何が空力的なアドバンテージを生み出しているかについて、見解を明確化したのは興味深いことだ。

 FIAはステアリングを回しきった状態で車高が変化すること自体は正常だと認めている。一方で新たに、合法とみなされる車高変化の基準を5mmまでとしているが、これを監視するのは困難だろう。

 マシンの下に薄いブロックを滑り込ませ、ステアリングを切り、マシンがそれに触れるかどうかといった方法で車高変化をチェックすること自体はできるはずだが、あくまでそれは静止状態での変化だ。

 しかしそもそも、なぜチームがこういったシステムを使用し、それが合法であると主張するのかには大きな疑問が生じる。

 F1マシンは、中低速のコーナーでアンダーステアとなる傾向がある。スピードが上がると同時に空力の影響が支配的となり、アンダーステア傾向は薄れていく。また、車速が上がれば上がるほど、フロントウイングの迎角がマシンのバランスに与える影響が大きくなっていく。

 ドライバーは通常、高速コーナーで弱アンダーステア傾向のマシンを好む。マシンがどこに向かおうとしているか分かるので自信が持てるし、マシンがスナップオーバーの状態になってしまう前に、ちょっとしたクッションを置くことができるからだ。

 マシンがそういう状態にセットアップされている場合、低速コーナーになればなるほどマシンのアンダーステア傾向は強くなる。

 F1マシンのフロント車高は非常に重要だ。通常、静止状態での車高は20mmから25mmほどあるが、0.5mmの違いがマシン全体のダウンフォース量とバランスの両方に大きな違いをもたらす可能性がある。

 もし、ステアリングを切っている状態でフロントの車高を十分落とすことができれば、各ウイングの迎角が増し、コーナーでマシン全体のダウンフォースを増加させることができる。また圧力中心(マシン全体にかかるすべてのダウンフォースの中心点)が前方に移動することになる。さらにフロントの車高が下がれば、フロントタイヤのグリップ増加にもつながる。ステアリングを固定する場面が増える中低速のコーナーでは、特にそれが有用だ。

 高速コーナーでは圧力中心が安定している必要があるため、ストレートの時と車高は変わらないように設定されている。さらにステアリングを切っていくと圧力中心が移動しはじめ、最大で1.5%ほどの変化があると考えられている。

 これによって、車速が落ちるに従って強くなっていくアンダーステア傾向の緩和と、コーナー出口でステアリングを戻した際リヤのグリップが増加し、トラクションが良くなる効果が期待出来る。

 以前、フロントサスペンションのプッシュロッドは、下側のウィッシュボーンに取り付けられていた。そのため、ステアリングの舵角による車高の変化は少なかった。

 一方、現代のF1ではプッシュロッドがアップライトに接続されている。その取り付け位置を調整することにより、ステアリングの舵角による車高の変化をコントロールすることが可能となったのだ。

 以下の図は、レッドブルのフロントアップライトを描いたものだ。図中の矢印の位置がプッシュロッドとの接続箇所であり、どれほど内側に移動したかが分かるだろう。 

Red Bull RB13 push rod suspension
Red Bull RB13 push rod suspension

Photo by: Giorgio Piola

 ステアリングを切りアップライトが動くと、それに伴いプッシュロッドとの接続位置も弧を描くように動く。そのため、ドライバーはステアリングの舵角を利用してプッシュロッドを押し引きし、プッシュロッド長を実質的に変更することができる。

 その結果、必要に応じてプッシュロッドとの接続位置を調整することで、ステアリングを切った時に左右の車高や、サスペンションにかかる負荷をコントロールすることができるようになった。これがトリックステアリングのシステムだ。

 このシステムの唯一の弊害は、実際にステアリングを握っている際にドライバーが感じるフィーリングが、ステアリングの舵角によって変化するということだ。キミ・ライコネンのように、ステアリングの重さをマシンバランスの判断に利用するようなドライバーにはこのシステムは合わないだろう。

 このシステムは、おそらくFIAが禁止するべきものではないのかもしれない。しかし、いくつかのチームは反則だと主張するだろうし、たとえ全チームが同じ条件となっても反対するチームは出るだろう。

 車高の変化が機械的に達成される限り、私はこのシステムが完全に合法だと信じている。確かに、空力性能の変化をもたらすことになるが、車高の変化は起きるものだ。

 それに圧力中心の移動を制限するには、許容されている5mmの車高変化では大きすぎる。視聴者にとっては、コメンテーターが話すつまらない話題のひとつに過ぎないし、混乱の種にしかならないだろう。

Be part of Motorsport community

Join the conversation
前の記事 レッドブル+アストンマーチンの提携が意味するモノとは!?
次の記事 フェラーリが”疑惑”のリヤ開口部を設けた秘密とは!?

Top Comments

コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?

Sign up for free

  • Get quick access to your favorite articles

  • Manage alerts on breaking news and favorite drivers

  • Make your voice heard with article commenting.

Motorsport prime

Discover premium content
登録

エディション

日本