”幻のマカオウイナー”ハプスブルクの、飾らない横顔
今年のマカオF3で最終ラップの最終コーナーでクラッシュ、劇的な結末を演出したハプスブルクの素顔を紹介する。

11月16〜19日に中華人民共和国マカオ特別行政区の市街地を一時的に封鎖した公道コース、1周6.120kmのギア・サーキットで開催された第64回マカオGP・FIA-F3ワールド・カップ。そのF3決勝レースは劇的な結末を迎えた。最終ラップの最終コーナーでフェルディナンド・ハプスブルク(カーリン)がクラッシュし、その横をすり抜けたダン・ティクタム(モトパーク)が優勝を果たしたのだ。
そこで今回は、悲劇のヒーローとして一躍有名になったハプスブルクの横顔を紹介したい。
20歳のオーストリア人が10世紀から続くとされるドイツ系の貴族ハプスブルク家の末裔というのはすでに良く知られた話。もっとも、本人はそうした立場を気にするわけでも鼻にかけるわけでもなく、気さくなひとりの若い青年にすぎない。3月のユーロF3ハンガロリンク・テストでハンド・テニスに興じる彼を見ていたら「やるかい?」と声を掛けてきた。彼の母国レースとなった9月のユーロF3第9大会(オーストリア・レッドブルリンク)ではヘルメットのデザインを新調。「カッコ良いね。シンプルで好きだよ」と伝えると、「ありがとう、ありがとう」と大げさなくらいに喜んでいた。
彼のフォーミュラカー・レースの主な経歴は次のとおり。14年フォーミュラ・ルノー1.6 NECはランキング4位、15年フォーミュラ・ルノー2.0 NECは同18位、16年ユーロフォーミュラ・オープンは同2位。特に目立った戦績ではないが、ヨーロッパのレース・シーズンがオフとなると、ニュージーランドで開催されるトヨタ・レーシング・シリーズへ毎年のように参戦して経験値と勝負勘を養った。
マカオGP参戦は今年で2回目。昨年は予選23番手、予選レース17位、決勝レースは序盤にリタイアと冴えなかった。初めて参戦した今季のユーロF3では優勝1回、2位1回、3位2回でランキング7位。シーズン中から攻撃的な走りを時折見せていたとはいえ、ダークホースとも思えない、ましてやマカオGPで優勝争いを演じるとは思えない存在だった。しかし……。
8月のユーロF3第7大会(オランダ・ザントフールト)では、「ユーロF3は楽しい。来年はチャンピオンシップ・タイトルの候補になるよ」と早くも2年目のユーロF3挑戦を口にしていた。そして今年のマカオGPでリタイアした後にはツイッターで、“I love Macau and I am coming back(僕はマカオが大好きだ。必ず戻ってくるよ)”とつぶやいた。
劇的な結末を演出したハプスブルク。2018年の第65回マカオGP・FIA-F3ワールド・カップで、もはや優勝候補のひとりに挙げないわけにはいかない。
取材・執筆/石井功次郎
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