”HRSプリンシパル”佐藤琢磨、”卒業生”岩佐歩夢を語る「しっかりと物事を考えられる。それが歩夢の強み」

現役ドライバーであり、ホンダ・レーシングスクール・鈴鹿のプリンシパルを務める佐藤琢磨。彼がプリンシパルに就任した1年目の卒業生が、今季FIA F2を戦う岩佐歩夢である。その岩佐の今季ここまでの活躍について、佐藤プリンシパルに訊いた。

Takuma Sato, HRS

 2023年も10月が終わろうとしており、シーズン終了の足音が日に日に大きくなってきている。

 FIA F2で2年目のシーズンを戦う岩佐歩夢(DAMS)は、現在ドライバーズランキング3番手。最終アブダビラウンドに、チャンピオン獲得を目指して挑むことになる。

 岩佐は鈴鹿サーキット・レーシングスクール(現ホンダ・レーシングスクール・鈴鹿)出身のドライバーである。この岩佐の成長について、2019年から同スクールのプリンシパルを務める佐藤琢磨はどう見ているのだろうか?

 岩佐は佐藤がプリンシパルを務めたスクールの、初代の卒業生である。

佐藤琢磨Principalとスカラシップを獲得した岩佐歩夢(2019)

Photo by: Suzuka Circuit

佐藤琢磨Principalとスカラシップを獲得した岩佐歩夢(2019)

「歩夢の成長に関しては、今シーズンに限らず、スクールの時から印象的でした」

 そう佐藤プリンシパルは語る。

「スキルがあるのは当然ですが、センスもありますし、取り組み方もいいです。(渡欧)初年度のフランスF4は、パンデミックの難しい時期でしたがチャンピオンを獲得して、確実に成長してきました。僕らもすごく楽しみに見ていたんです」

「今年のチーム体制は、必ずしもベストではなかったと思います。(昨年から)チームメイトも変わりましたしね。でもそんな中で、彼はDAMSをしっかりと自分のチームにした。求心力も強いですし、歩夢中心のチームづくりができたということは、彼の強みだと思います」

「それができたからこそ、こういう環境の中でもリザルトを残せたんだと思います。当然彼はチャンピオンを獲りたいと思っているはずです。現況は厳しい(ドライバーズランキング首位のテオ・プルシェール/ARTグランプリとは39ポイント差。1ラウンドで獲得できる最大ポイントは39)ですが、選手権2位に終わっても3位に終わっても、ベストは尽くしてくれるでしょう。非常に頼もしい活躍をしてくれていると思います」

 motorsport.com日本版では、昨シーズンから岩佐に定期的にインタビューを実施してきた。その中で彼は日々変わってきているように感じられる。例えば話の内容も実に理論的になり、ある意味話す口調も速くなっているように思える。ある意味、”佐藤琢磨化”しているようにも感じられるのだ。

Photo by: Formula Motorsport Ltd

 

 そう佐藤プリンシパルに告げると、彼は「本当ですか? 意識したことはなかったけど、手本になれたのかな(笑)」と語り、次のように続けた。

「歩夢は、自分の置かれている環境や立場が分かっています。海外生活を長く続けてきたことで、文化の違いも学び、自然と自身の考えを表現できている。だからみんなに好かれ、しっかりとコミュニケーションが取れているんだと思います」

「そのことが彼の自信になり、成長に繋がったんじゃないでしょうか。18歳でスクールにいた時から、大人びたドライバーでした。しっかりと物事を考えられるんです。それが、彼の強みですね」

 岩佐も当然F1を目指しているが、その環境は不透明なところもある。

 現在ホンダは、ドライバー育成の分野でもレッドブルと協力体制を築いている。そのため岩佐は、ホンダ・フォーミュラドリーム・プロジェクトの一員として、そしてレッドブル・ジュニアの一員としてF1を目指しているところだ。

 しかしホンダは2026年からアストンマーチンをパートナーにF1復帰することを決めた。ホンダとレッドブルの関係が今後どうなるのか、まだ決まっておらず、そのことが岩佐の将来にも少なからず影響してくることになるだろう。そしてHRSから今後巣立っていく若いドライバーにとっても、影響があるはずだ。

 今後ホンダはアストンマーチンと、ドライバー育成の体制を築いていくことになるのか? そう佐藤プリンシパルに尋ねると、彼は次のように語った。

「個人的にはそれが自然な流れだと思います。この先レッドブルといつまでやっていくのかについては、これから協議していくことになるでしょう」

「少なくとも、来シーズンに関しては、これまで通りの協力関係が続きます」

 

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