見た目はややヘンテコ……でもF1もいずれこの形に? 新型FIA F2車両のリヤウイングに隠された意図とは
先日、2024年から使用される次世代F2車両がお披露目された。中でもそのリヤウイングの形状は話題となっている。
8月31日、イタリアのモンツァ・サーキットで2024年から使用されるFIA F2の新型車両が発表された。空力をはじめ様々な面が先代のマシンから改良されているが、注目の的となったのはリヤウイングだった。
ピラーの部分はフラミンゴやクジャクの首のような形状をしており、ウイング自体も現代F1マシンかそれ以上に大きく湾曲した、曲線的なデザインとなっている。また後ろから見ると、フラップの分厚さも非常に目をひく。このデザインは見た目を派手にすることが目的というよりも、レースを面白くするためのデザインなのだ。
F2 2024 Car rear wing
Photo by: Jon Noble
F2のシリーズ代表であるブルーノ・ミシェルは次のように説明する。
「リヤウイング自体は丸みを帯びた形状になっていて、現在のF1に近い」
「大きな違いは、フラップが巨大で重くなっているということだ。これにより、DRSの効率を極限まで高めることができる」
リヤウイングのフラップを可動させて水平にすることで空気抵抗を削減し最高速を稼ぐDRS。これをより効果的にする……つまりフラップが閉じている時と開いている時の速度差(DRSデルタ)を大きくすることで、追い抜きを促進しようというのだ。
これは、2026年から新規則に移行しようとしているF1にとっても興味深いことだ。
新規則のF1マシンは、パワーユニットのパワー低下を補うため、よりアクティブでドラッグ(空気抵抗)の少ないマシンとすることを目的としている。そのため、オーバーテイクがより難しくなるのではないかと心配されている。
全てのマシンのドラッグが少なくなれば、DRSデルタが小さくなって、ストレートでDRSを使って追い抜くのが難しくなる。ただF2のようにリヤウイングのフラップを大きくすることになれば、それは軽減されるかもしれない。
F1は、いわゆる“DRSトレイン”を無くそうと努力している。DRSデルタが小さく、前を行くマシンを追い抜けずにいると、後続のマシンも追いついてしまい、それぞれがDRSを起動することで、集団全体として追い抜きが見られず隊列が固定されてしまう。これがDRSトレインだ。
F1のチーフ・テクニカルオフィサーであるパット・シモンズは以前、motorsport.comに対して次のように語っていた。
F2 2024 Car rear wing
Photo by: Jon Noble
「2026年に向けて我々が目指していること、取り組んでいることのひとつに、DRSの廃止がある」
「現時点では、4段階の空力特性を持つマシンについて協議している。最終的に4段階になるとは思っていないが、2段階、3段階になるだろう。一部はテクニカルレギュレーションに沿ったものになり、一部はスポーティングレギュレーションに沿ったものになるはずだ」
2026年に向けたF1のシャシーレギュレーションの策定が進む中で、F2から得られた教訓は間違いなく取り入れられることになるだろう。F2ではこれまでも、18インチタイヤや持続可能燃料などをF1に先駆けて先行投入してきたが、ミシェルはこういった動きは今後も続くだろうと語った。
「F2はこれまで、F1のパイオニア的存在であった。そしてそれは今後も続くだろう」
ミシェルはそう語る。
「18インチタイヤもF1に先駆けて投入し、ピレリの開発に大いに貢献した。そしてF2は既にサステナブル燃料にも取り組んでいる。F2で出来ることはたくさんあるだろうし、それはF1にも活きるだろう」
FIAで競技部門の副会長を務めるロバート・リードも、F2で追求されるアイデアはF1を含むFIA管轄のあらゆるカテゴリーで役立つと述べた。
「これ(新型F2車両)はF1のスタンダードが取り入れられたマシンであり、このデータはひとつのポットに入れられる」
「FIAにはシングルシーター部門がある。F1チームがあるわけではない。つまりあらゆる競技がピラミッド内にある。技術面に関しても、ピラミッド全体で同じメンバーが働いているのだ」
「ステアリングの重さにしろ、調整可能なコックピットサイズにしろ、安全性にしろ、ピラミッド全体で一貫させることは重要なことなのだ」
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