”冷静と情熱”を併せ持つ……岩佐歩夢「F1ドライバーになるために」F2でスピードを掴む

FIA F2に参戦する岩佐歩夢。モナコ、そしてアゼルバイジャンと、相次いでクラッシュに見舞われているが、これは彼が成長している”証”とも言える。

”冷静と情熱”を併せ持つ……岩佐歩夢「F1ドライバーになるために」F2でスピードを掴む
Listen to this article

 2021年の4月のことだった。当時FIA F3へのデビューを控えていた岩佐歩夢は、motorsport.comのインタビューに、次のように語っていた。

「僕のこれまでのスタイルは、頭を使って相手に勝負を仕掛ける、マシンを走らせるというスタイルでした」

「振り返ってみるとプッシュしてアタックする部分が欠けているなと思いました」

Read Also:

 昨シーズン限りでFIA F3を卒業し、今季はDAMSのドライバーとしてFIA F2に挑んでいる岩佐。その岩佐の最近のレーススタイルを見ると、彼が1年前に語っていたモノとは大きく違うように見える。それが特に感じられたのが、モナコ・モンテカルロ市街地コースでのF2のレースだ。

 モナコは、言わずと知れた抜きにくいコース。それはF1のみならずF2でも同様であり、実際先日行なわれたモナコ戦の2レースも、ほとんどオーバーテイクが見られなかった。

 しかし岩佐は違った。

 岩佐は予選で3番手タイムを記録したものの、イエローフラッグが振られている中でタイムを更新したとして予選最速タイムは抹消。さらにスプリントレースでの10グリッド降格ペナルティを科された。

 これによりグリッド後方からの追い上げを強いられることになった岩佐は、スプリントレースの10周目、ラスカスで前を行くクレメント・ノバラク(MPモータースポーツ)のインに飛び込んだ。2台は交錯し、ノバラクはこれでストップ。岩佐はフロントウイングを破損してピットイン、加えて10秒のタイム加算ペナルティを受けた。

 またフィーチャーレースの終盤にも、岩佐はヘアピンでカラン・ウイリアムズ(トライデント)のインに飛び込んだが、2台は接触し両者ストップ。岩佐はウイリアムズを抜いていれば10位入賞を果たせたはずだが、結局無得点でモナコを去ることになった。

 これらふたつのオーバーテイクは、1年前に岩佐が言っていた「プッシュしてアタックする部分が欠けている」という動きとは、まるで正反対に思える。

Read Also:

 実はこのふたつのクラッシュは、岩佐の成長が現れているのかもしれない。

 岩佐にこのモナコでの動きについて尋ねると、次のように語った。

「昨年から、常に最大限プッシュする、予選でも最初からガンガン行くことを課題にしていました。そこは、昨年の終盤からかなり改善できていると感じています。でも、結果に繋がらないというのが昨年と違うところなんです」

 そう岩佐は言う。

「モナコのレース1とレース2の仕掛けについては、身体が勝手に動きました。それは、自分のスタイルを変えることができたと思います。それが悪いことかと思えば、絶対にそうではないと思います。後から考え直しても、行くべきところだったと思います。あそこでプッシュしなければ、何も起きませんから」

 バクー市街地サーキットで行なわれたアゼルバイジャンの予選でも、岩佐はクラッシュしてしまったが、これもモナコでの動きに通ずる部分があるという。

「バクーでも、最初からガンガンいくことに重点を置いていました。その結果最初のアタックで、2番手にコンマ6秒の差をつけるトップタイムを記録できました。そこから小さな詰めをしに行った結果……ブレーキトラブルもあったんですが、クラッシュしてしまいました」

「でもスタイルを変えて、速さを示すことができたのは、すごい収穫なんですよ。今苦戦しているのは、それをどう結果に繋げるかということです。それはドライビング云々というより、自分の中のリズムをどう作り、アプローチの仕方によって良い流れをどう作るのかが課題です」

「F1ドライバーになるために一番大事なスピードを掴むこと、自分のパフォーマンスをしっかり出すことをF2で出来ているので、そこに関してはすごく満足しています」

 その速さ、プッシュするという”反応”を鍛えるために、日常生活から全てを変えたと岩佐は明かす。

「基本的にはトレーニングにそういう要素を入れました。そして日常生活から全てを変えたイメージです」

 そう岩佐は語る。

「例えば家で料理していて、キッチンテーブルから卵が落ちた時、身体が勝手に動いて最後まで取りにいくようになりました。そこが変わったように感じていたんです。日常生活から、自分の考え方が変わって、それがレースに出ていると思います」

 とはいえ以前の持ち味である”考えて動く”という部分も、捨てたわけではないという。

「前のように、考えてから動くというところがなくなったわけではありません。モナコでも、前のドライバーの『動きはこうだから、ここで仕掛けられるな』ということを考えていた結果、行けるところで身体が反応して抜きに行っています。ノバラクを抜きに行った時も、隙間があったから飛び込めています。ウイリアムズへの仕掛けも、彼がブロックしなかったところに飛び込んでいます」

「僕はしっかりと考えて動けていると思います。分析もできていると思います。そこをしっかりと組み合わせて、レースウィーク全体の流れを良い方向に持っていくことができれば、改善できたことが結果に繋げられると思います」

 ただ、いずれも岩佐にペナルティが出されてしまった。これを厳しいと感じるかと尋ねると、岩佐は次のように語る。

「確かに際どいところだと思います。色々な角度の画像を見ましたけど、僕が完全に前に出たわけではありませんが、彼(ノバラク)が1車幅分開けてくれていれば、並走したままストレートに行くことができたと思います」

「正直、ペナルティは厳しいと思う部分もありますが、結果は結果です。あの位置にいた自分も悪いですし、もっと前にいれば際どい仕掛けをする必要もなかった。色々な要因があったと思っています」

 考えてから動くという冷静さを持っていた岩佐。そこに、瞬時に身体が動くという”熱さ”を身につけつつある……モナコやバクーで見せたのは、その一端だったのを確認することができた。

 ひと度流れに乗ることができれば、無類の強さを発揮し始めるのではないか……岩佐の活躍、そして成長から目が離せそうもない。

 
Read Also:

シェア
コメント
マクラーレン、予算制限の遵守は絶望的?「みんなにとって明確な解決策が必要だ」
前の記事

マクラーレン、予算制限の遵守は絶望的?「みんなにとって明確な解決策が必要だ」

次の記事

ピレリ、2023年に向けて”フロントタイヤ強化”を予定。予想外のアンダーステア解消を目指す

ピレリ、2023年に向けて”フロントタイヤ強化”を予定。予想外のアンダーステア解消を目指す