【コラム】急成長を遂げるフォーミュラE。継続発展に必要なことは?

急成長を遂げるフォーミュラE。多くの自動車メーカーからの注目が集まるが、それを継続するために必要なコトとは!?

 フォーミュラEの第3シーズン最終戦がモントリオールで開催されたのは去る7月29〜30日だった。

 アプト・シェフラー・アウディ・スポートのルーカス・ディ・グラッシとルノー・e.ダムスのセバスチャン・ブエミがタイトルを争い、ディ・グラッシが念願のシリーズ・チャンピオンに輝いた。ランキング首位で最終戦を迎え、有力視されていたブエミは練習走行でクラッシュ、急遽準備したクルマが第1レースで重量違反で失格になり、第2レースも冴えない展開でタイトルを落とした。

 ブエミの失速にはいくつか理由があるが、前戦ニューヨークePrixを欠席したことがそのひとつであることは明白だ。しかし、欠席によって単純にポイント獲得のチャンスを失ったという現実だけではなく、そのことがブエミに精神的負担を与えていたと見るべきだろう。

 ニューヨークePrixと同じ週末、WECニュルブルクリンク6時間レースに出場していたブエミは、彼にとって重要なふたつのレースの日程が重なっていることに大きな不満を抱き、関係者にその不満をぶちまけていた。「FIAは何を考えてカレンダーを制定しているんだ」と。

 ブエミはFEでルノーと契約しているが、それ以前からトヨタのWECドライバーとしても契約しており、その契約こそ何を置いても優先されることになっている。トヨタとの契約が始まったのは2012年からで、彼にすれば最もプライオリティが高い契約だ。

 2014年から始まったルノーと契約は、トヨタとの契約に支障をきたさないことが条件だった。しかしFEの存在感が高まり、ルノーがその活動に力を入れ始め、2シーズン目にドライバー、マニュファクチャラー両タイトルを獲得すると、ブエミにとってもFEは疎かに出来ないレースになった。ブエミが3シーズン目もタイトルを獲得することに執着したのは、FEが彼の中で重要なポジションを確立し始めたからだといえる。ドライバー・タイトルこそ落としたものの、マニュファクチャラー・タイトルを2年連続で獲得出来たのは、その成果だろう。

 ブエミの悔しさに対比するように、ディ・グラッシにとってタイトル獲得は至上の喜びだった。彼は2シーズン目にも最後までブエミとタイトル争いを展開し、最終戦で敗れてタイトルに手が届かなかった。その雪辱を3シーズン目に果たしたいという強い願望が、これまで彼を突き動かしてきた。2人の間には時に火花が散り、シーズン2の最終戦ではタイトルを獲得したブエミがディ・グラッシの行為に怒りをぶつけたこともあった。

 彼らに見るように、ドライバーたちにとってFEは非常に大きなに価値観を持つようになってきた。それは、FEが環境対応のレースであることを訴える主宰者FEHの戦略、あるいは自動車メーカーがEV技術開発やマーケティング戦略と捉える意味とは一線を画して、ドライバーにとって全力で挑むレースであることを意味している。つまり、FEはドライバーにとればF1やWEC、あるいはWTCCと同様の価値を持った選手権になったと言うことが出来る。誕生してたった3シーズンを経ただけのシリーズだが、初年度からFIAのお墨付きを得て、確実に成長を遂げてきた結果だ。

 その裏には地球環境悪化に対する世の中の動き、その動きの中心にある自動車産業の対応などがFEの存在価値を高めたことは明白な事実。その流れを見逃さなかったFEHのアレハンドロ・アガグ代表のビジネス感覚が勝利した結果と言えよう。彼はFIAに働きかけ、世界中の主要都市の自治体に働きかけ、環境対策を標榜する企業に働きかけ、彼らの賛同と支援を取り付けてFEをスタートさせ、短期間でポジションを確固たるものにした。こうしてビジネス面が確立されれば、継続が保証され、世間の注目を集め、レースとしての価値は高まる。それは、ドライバーにとって戦う価値のあるレースとなる。

 では、これから先のFEには何が求められるか? 多くの自動車メーカーの参入が確実視されてきた今、FEに求められるのはより分かり易いプラットフォームであり、ぶれないレギュレーションだろう。自動車メーカーは企業として価値のあるものにしか投資しない。FEへの参入が加速してきたのは、現時点で彼らがその価値を認めたからだが、それを継続させるためにはFE側の真摯な対応が必要だろう。

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シリーズ フォーミュラE
記事タイプ 速報ニュース