
東京駅付近の公道にて、ルーカス・ディ・グラッシが今季仕様のマシンでデモ走行を披露した。








11月23日、東京の丸の内仲通り/丸ビル屋外イベントスペースにて「エコロジー&モビリティ フェア in丸の内」が開催された。イベントではフォーミュラEシーズン3(2016−17)に参戦中のルーカス・ディ・グラッシ(アプト・シェフラー・アウディ・スポート)が丸の内仲通りの銀杏が舞い散る並木道を最新型のフォーミュラEマシン”アプト・シェフラーFE02”でドライブした。
今回のイベントには、テレビ朝日(CSテレ朝チャンネル)のフォーミュラE中継で解説を務める片山右京氏とモータージャーナリストの飯田裕子氏、またシェフラージャパン株式会社最高技術責任者であるトーマス・スタメナ氏も参加。多くのフォーミュラEのファンも会場に詰めかけた。
トークショーでは片山氏がフォーミュラEの魅力について語った。
「フォーミュラEがスタートした当初は『電気自動車がレースできるのか』、『そもそもゴールまで走りきれるのか』と言われていましたが、こうして激しいバトルを繰り広げ、今ではシーズン3を迎えています。この状況を世界中は無視できないですよね」
「レースをするためのドライビングセンスはもちろん、エネルギーを効率よく使うテクニックも必要です。現在レベルの高い戦いを繰り広げているアウディやルノー(ルノー・e.ダムス)、今季より参戦しているジャガー、またシーズン5より参戦を表明しているメルセデスなどのメーカー勢、また世界中のIT企業、パーツを作っているメーカーなど、フォーミュラEに参戦している企業がエネルギー効率性について考えている。つまり将来を見据えていると思います。またそういった企業はどんどん増えています。最近はパナソニックがジャガーの技術パートナーとして迎え入れられています」
「電気だから扱いやすいと言えるかもしれません。フォーミュラEのマシンは、コンピュータでスタートのタイミングをアシストしたり、アクセルはトルク配分したり、ブレーキも回生ブレーキでエネルギー効率を高めています。そういった最先端の技術を搭載したマシンを人間が操縦し、かつ滑りやすい市街地でレースしているフォーミュラEは、世界で最も激しいレースだと思います。毎回誰かがシナリオを書いているんじゃないかと思わせる激しいレースが繰り広げられています」
「フォーミュラEマシンが静かなんて嘘です。時にモーター音はジェット機のような音が出ます。それが風を切って走る姿は、近未来のレーシングカーの音がしますよ」
「シーズンが進むにつれて、EVテクノロジーがどんどん発展してきています。EVカーなんてマイルドな呼び名じゃ収まらないようなモンスターマシンが現れるのもすぐだと思います。それは少し恐怖を覚えますが、人類が宇宙を出て他の星に行くような、いわば人類の進化だとも思っています」
それに飯田氏は次のように付け足した。
「モータースポーツという観点からして、これまでは音や匂いが魅力的なガソリン車が台頭してきましたが、その一方、時代が次第に変わりつつあるのを感じます。その中でもモータースポーツが一歩二歩先に進歩しているように思います」
「アウディは世界耐久選手権(WEC)から撤退し、フォーミュラEにリソースを集中させますが、そもそもアウディはモータースポーツの技術を取り入れた量販車開発をしている会社です。おそらくですが、アウディはフォーミュラEで培った技術をEVテクノロジーとして蓄積し、量産車に活かしていくことを考えているのではないでしょうか」
「0(ゼロ)からスタートしているこの電気自動車のレースを目の当たりにできることは、モータースポーツ好きとして、ある意味この時代に生きていて良かったなと感じています」
また、アプト・シェフラー・アウディ・スポートの技術パートナーであるシェフラーについて、飯田氏は次のように語った。
「シェフラーはただのパートナーというわけではなく、技術パートナーでもあります。主にベアリングを作成しており、2000年にクラッチメーカーのデュークとボールベアリングメーカーのFAGなどがひとつになりシェフラーグループとなりました。現在多くの自動車メーカーがシェフラーのベアリングを採用しているのはもちろん、例えばイギリスにあるロンドン・アイという観覧車にもシェフラーの技術が使われています」
トークショーの後には、デモンストレーション走行が行われ、ディ・グラッシがその走りを披露した。走行後のディ・グラッシは、今回のイベントの感想を語った。
「今回の催しは、フォーミュラEが正しい方向に向かう小さな一歩だと思う。正しい方向性というのは”電動の未来”だ。今回はフォーミュラEはモータースポーツとしても非常にエキサイティングなものだと証明ができた。東京のような先端技術を用いた都市にはフォーミュラEがぴったりだと思っている。僕はレースのために日本へ戻ってこれることを楽しみにしている」
「僕は東京が大好きだ。食べ物だったら寿司が好きだけど、日本人のライフスタイルや規律も好きだ。東京はメトロポリスであり、かつこれだけの人口がある。その中で安全でありクリーンな都市を保っているのはすごいことだと思う。東京は世界の都市の模範になるんじゃないかな」
「またモータースポーツは自動車産業と緊密な関係にある。自動車産業はモータースポーツを介して、将来の技術に投資している。だからフォーミュラEが拡大していると思う。僕はレースすることも好きだけど、人々の生活を豊かにしているこの活動に関われていることが嬉しいよ」
【関連ニュース】
【フォーミュラE分析】将来のモータースポーツを担うのは、フォーミュラEなのか?
メルセデス、フォーミュラE参戦に条件付きで合意。ウルフ「FEは将来的に価値あるものになる」
この記事について
シリーズ | フォーミュラE |
イベント | 東京・丸の内デモラン |
執筆者 | 中村理紗 |